9 超一般市民問題
ミチルの「イケメンうほうほ力」はカミが与えた宿命を凌駕した!
その強固な「恋心」で、ミチルは自分の命も、曽祖父の命も、イケメン達の生きる意味も守ってみせた。
なんという精神力。
なんという愛の強さ。
もはやその身は「カミの愛」に一番近い存在となったのだ!!
「ああ、ミチル、本当に良かった(ぶっちゅっちゅ)」
「いやーん♡ ジェイったらぁ」
「ミチルゥ、大好きだよぉ(むっちゅっちゅ)」
「はあーん♡ アニーまでえ」
「ヒヤヒヤさせてんじゃねえぞ、ミチル!(ぺろぺろんちょ)」
「ああん♡ エリオットぉ」
「ああ、シウレン、お前こそが至高……!(すりすりもんもん)」
「ちょっとぉ、先生、だめえ♡」
「ミチル、ミチル! ああ、ミチルッ!(はむはむぺろん)」
「きゃあぁ、ルークぅ、もっとぉ♡」
「……ミチルよ、我は、真の愛がやっとわかった(ぐりぐりむいむい)」
「あ、あ、チルクサンダー、そこは×××……♡」
なんという愛の証明。
ここはペルスピコーズ大聖堂。カミが降臨せし聖なる場所。
そんなところで、前代未聞のアホプルケリマとバカ・シックス・カリシムスは存分に愛し合った!
団子になって組んず解れずである!
「いい加減にしろぉ、このバカドモがぁああ!!」
ドッカーン、バリバリ、ゴッシャーン! とエーデルワイスのお叱り台風が上陸した。
暴風で♡♡♡団子はバラバラに飛び散る。
「ふあっ! しまった、意識♡が飛びそうだった!」
揉みくちゃにされていたミチルは、なんか色々ぐちゃぐちゃのまま正気に戻る。
「むむう、いかん、我を忘れた」
「もうちょっとだったのに……」
「7♡の新たな可能性が……」
「はわあ……最高、でした」
「悪くねえ、悪くねえ……♡」
「これが、総受けハーレム……!!」
イケメン達も各所ぐちゃぐちゃにしつつ、意識を戻していた。
「まったく、バカドモが。聖なる拝殿をなんだと思っているのだ」
ミチルとの生命の経路が無くなったエーデルワイスは、すっかりいつもの調子を取り戻している。
お家芸のバリバリゴッシャンが出たので、ミチルは安心して嬉しくなってしまった。
「うふふう、ごめんね、えぇじいちゃん♡」
「何故、マゴが複数の男と絡み合う様を見なければならぬのだ……」
ブツブツ文句が漏れる法皇に、すかさずエリオットは反論する。
「あっ、聞き捨てならねえな。元々、おれ達とミチルに♡♡♡儀式を強要したくせに!」
「そうだそうだ、散々俺たちに♡♡♡してみろってセクハラして!」
アニーもまたその後ろから賑やかす。
「黙れ! 我がマゴであれば話は別だ!」
気持ちいいくらいのダブルスタンダード!
エーデルワイスはもはや溺愛オジジである事を隠そうとはしなくなっていた。
「ふう……その儀式だが、これでわからなくなってしまった」
「どういう事だ?」
気を取り直して、エーデルワイスがため息混じりに呟く。
耳のいいジンは「儀式」と聞いて即座に反応した。
「ミチルに返還してしまったので、ウィンクルムは無くなった。プルケリマとカリシムスの♡♡♡儀式はウィンクルムが無くてはならない。二人の♡♡♡による愛のパワーをウィンクルムがキャッチして世界に潤いを与えるのだから」
「ふむ……さすれば、ウィンクルムはアンテナのようなものだったのか。儀式から取り込んだ魔力を世界に配信するための」
さすが地球にいる時からミチルを見ていたチルクサンダー。例えがとても地球的だ。おかげでミチルもすぐに理解することが出来た。
「然り。ウィンクルムがない今、その代わりとなる何か……もしくは手段を構築しない事には、儀式をしても無駄だと言う事だ」
「な……なんだ、と?」
頷いたエーデルワイスの言葉に、ジンは真っ青になって後ずさる。まるでこの世の終わりを見たかのように。
「シ、シウレンと×××で×××な♡♡♡儀式が出来ない……だ、と!?」
そしてその嘆きは、他のイケメン達にも瞬く間に伝染した。
「な、なに……?」
「そんな、ウソ、です……」
「ミチルと永遠に♡♡♡出来るって言ったじゃねえか!」
「ヤダあああ! それを楽しみに生きてきたのにぃいい!」
阿鼻叫喚とはまさにこの事。
イケメン達は半狂乱。
「うむむ、我もカリシムスになったからには、それを密かに楽しみにしていたのだが……」
「シウレンと×××で×××な♡♡♡儀式を三日三晩と言ったではないくわあああ!!」
ついさっきまでの展開が真面目過ぎたために、本来おバカであるイケメン達の♡♡♡脳が大暴走!
ワーワーとミチルとの妄想を憚らず吐きまくる輩に、溺愛オジジがキレた。
「黙らんか! 我がマゴの純潔をキサマらの好きにさせてたまるかぁ!」
そこへエリオットとジンが憤慨して反論。
「ハアァ!? 言ってたことが全然ちげえぞ、クソチビ法皇!」
「その通り! 意見を違えるなぞ、ダサいぞぉお!」
他のイケメン達は打ちのめされて言葉が出なかった。
辛うじて口が達者な二人だけが法皇と舌戦を繰り広げる。
「我がマゴの言葉を使うなァ! 婿気取りは許さァアん!!」
「バーカ! んなのはもう遅いんだよぉ! おれ達はミチルに愛されてんだからなあ!」
「観念するのだ、祖父殿ぉおお♡」
「阿保婿が一気に六人になるワタシの気持ちも考えろぉおお!」
「もおお! エリオットも先生もじいちゃんもやめてよぉ!」
遅れてやってきた超一般市民問題!
結婚の申し込みは人生の一大事。後先になってしまったあるある状況が、今になってミチルの目の前に現れた。
果たしてイケメン達はミチルとの仲を許してもらえるのか!?
「ほ、法皇さまーーーーッ!!」
アットホームな喧騒を突然破ったのは、僧正の声だった。
真っ青になって慌てている。
「うん?」
部外者の乱入で、エーデルワイスもイケメン達も一瞬動きを止める。
「どうした」
乱れたイロイロを整え直して、エーデルワイスは部下に向き直る。
急いで威厳を出そうとしているが、成功したかどうか。
だが、僧正の方にもそれを察する余裕はなかった。
息を切らせて端的に絶望を口にする。
「あ、あ、アーテル帝国が、攻めて来ました……ッ!」
懲りない皇帝めええっ!




