17 自分の意思で
金髪ソフモヒ皇帝・シャントリエリがミチルの♡♡♡を襲う!
その手が触れようとした時、ミチルの股間が蒼く輝いた!
それはパンツの中なのに、欲情皇帝の目を潰し、その体を弾き飛ばしたのだった。
「な、ななな……っ!?」
ミチルは慌てて起き上がってパンツの中を確認した。
内部事情は言えないが……と言うより、ミチルでさえも良く見えないほど内部事情は蒼い輝きを放っている。
「もしかして……みんな?」
ミチルはその蒼い輝きの中に、大好きなイケメン五人の気配を感じていた。
「みんなが、守ってくれた……?」
蒼く輝くミチルの下半身。そこには、確かにイケメン五人の「痕」が付いている。
ミチルは[ 私 俺 おれ 儂 ぼく ]のもの。
誓い、執着、独占、所有、従順の証が、ミチルの下半身には込められていた。
ミチルに触ったら、コロす……ッ!!
それは、イケメン達の「愛情」である。
ラーウスでの革命前夜。
ミチルに記憶はなく、イケメン達も忘却してしまうほどの強い「願い」を込めた夜。
彼らは、ミチルに己の魂を分けたのだ。
自分以外の輩が、万が一ミチルの♡♡♡に侵入した時に。
その輩を容赦なく叩き潰せるような……
「怨念」を。
「う、う……」
吹っ飛ばされたシャントリエリは、ベッドの下で悶絶し続ける。
思考が完全にスケベに振られていたため、突然の衝撃に耐えられなかったようだ。
ああっ、今なら逃げられる!?
ミチルはそう思った瞬間、ベッドから降りようとして躓く。
脱がされたズボンが足に絡まって、ミチルの動きをもたつかせた。
ズボン履かなくっちゃ!
下半身が蒼く光ったままだが、そんなのは気にしていられない。
まだ震えている手で、ミチルはズボンを履き直そうとした。
「うう……おのれ、カリシムス……」
ベッドの下でシャントリエリが身じろぐ。
その声音は憎悪に満ちていて、ミチルの震える手を更に竦ませた。
「や、やはり、カリシムスは全て消さなければならない……」
蒼い抵抗の光がイケメン達の怨念である事を直感しているのか、シャントリエリはそんな事を呟いていた。
ミチルはその言葉に恐怖を抱く。
オレだけじゃなく、みんなまでコイツに狙われたら……
動け! すぐにズボンを履いて立ち上がるんだ!
頭ではそう思っていても、ミチルはつい先程まで貞操の危機寸前。
震えが止まらない指先、恐怖で冷えた体、そして蒼く光る股間。
そんな状態ではとてもここから逃げ出せそうにない。
「余は負けん……プルケリマをこの手に……ッ!」
かなり鍛えていると見えて、シャントリエリはもう起きあがろうとしていた。
そしてまずはその視線をグルリとミチルに向ける。
「ひっ……!」
まるで手負いの野獣。琥珀色の目が燃えるように輝いてミチルをロックオンしていた。
「こ、来ないで……!」
怒りに燃える欲情皇帝は今度こそミチルに襲いかかるだろう。
そうなったらどんな酷い仕打ちを受けるのか、ミチルは恐怖でますます動けなくなった。
せっかくみんなが守ってくれたのに。
なんてオレは情けないんだ……
ミチルがそう諦めかけた時、股間がいっそう蒼く輝いた。
「アァ……ッ!」
起き上がった皇帝は、その光にまた視界を奪われて苦悶する。
諦めるな!
「みんな……」
涙がミチルの頬を伝う。
会いたい。みんなに会いたい。
戻っておいで……
みんなの所に、帰りたい。
「ミチルーッ!!」
ズバッタァーン、と誰かがドアを破壊しつつ開けて入ってきた。
「……!」
それは、ミチルの想い描いたイケメン達ではなかった。
けれど、その黒い姿にもとてつもない安堵を感じる。
「チルクサンダー……ッ!」
「無事か、ミチル!」
「ふえ……」
チルクサンダーが来てくれた。
急に緊張が解けて、泣き出しそう。
そんな号泣しかけるミチルの様子に、チルクサンダーは目を見張る。
ミチル、泣いてる、ベッドの上。
下半身、脱がされてる、白い脚。
(股間が蒼く光っているのは、超常現象過ぎてチルクサンダーの脳裏に届いていない)
……その光景が導き出す答えは。
「こぉおの、クソ皇帝ガアァアァ!!」
ミチルをNTRされたと勘違いしたチルクサンダーの体から、憤怒の黒い炎が湧き上がる!!
「ぐぁ、ァア……ッ!」
その黒い炎は、シャントリエリを焼き尽くさんと彼の体を取り巻いた。
「キャアアア! これが修羅場ぁ!」
突然の猟奇的展開に、ミチルは涙が引っ込んで違う恐怖に慄く。
「コロしてヤル……ッ!」
「チルクサンダー! オレ、無事ぃい! ちょっと股間が蒼いだけぇえ!」
寝室はあっという間にどす黒い嫉妬の情念渦巻く地獄と化す。
怒りに我を忘れるチルクサンダーには、ミチルの叫びも聞こえない。
「陛下ァーッ!」
焦る叫び声とともに、シャントリエリを包む黒い炎がフッと消える。
「て、テン・イー!?」
チルクサンダーの後を追ってきたであろうその姿に、ミチルは更に驚いた。
しかしテン・イーはミチルにもチルクサンダーにも構わずに、己の主人の元へ駆け寄る。
「陛下、お気を確かに!」
チルクサンダーは二人にますます憎悪を向けた。弱体化されているために、テン・イーによって黒い炎を消されたからだ。
「フタリまとめて、コロシテやる……ッ!!」
チルクサンダーの右手に大きなエネルギーが集約された時──
「チルクサンダーァア!」
「!」
ミチルの声が、その動きを止める。
顔を上げて振り返れば、チルクサンダーの最愛が両手を伸ばしていた。
「ミチル……」
思わずチルクサンダーはそこに手を伸ばす。
愛しい。
触れたい。
そんな想いが、彼の憎悪をかき消していた。
「オレ、戻りたい……!」
その言葉をきっかけに、ミチルの周りに蒼い羽根が舞い始める。
「ミチルッ!」
異変を感じたチルクサンダーは、すぐさまミチルを掻き抱く。
蒼い羽根はなおも増え続けていた。
「オレ、帰りたい……っ!」
ミチルはチルクサンダーの腕の中で、ひとつの意思を示した。
「みんなの所に、還るんだ!」
「ミチル……」
チルクサンダーはその確固たる意思の力に圧倒される。
大いなるその御技に己を委ねるべく、頷いた。
「ハ、ハックション!」
ミチルの意思によるくしゃみで、蒼い羽根は煌々と輝く。
瞬く間に二人を包んで、羽根はそこから消えた。
黒い闇が蠢く帝国から。
ミチルとチルクサンダーもまたその姿を消した。
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