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14 金髪ソフモヒ皇帝

 ミチルが転移した先がベッドの上である確率は異常に高い。

 エリィの寝室、ジンの寝室……と来て、今回も誰かの寝室なのは明白。


 ふっかふかのベッドの上、ミチルは自分に迫る男の影に怯えていた。


「だだだ、誰だ、()()()は!?」


 薄暗い部屋、オシャンな間接照明はルークの所の寝室に雰囲気が似ていた。

 そしてベッド周りに漂うお香的な煙と香りも、セクハラ執事(カカオ)がやってたヤツ。


 それなのに、目の前の男はミチルのよく知る男達(イケメン♡)とは似ても似つかない。


「やっと、手に入れた……」


「き、金髪ゥ!」


 その男はゆったりとした、まるで寝巻きのような服装で。


「待っていたぞ、プルケリマ……」


「ソフモヒぃ……ッ!」


 ガバッと開いた色気たっぷりの胸元。〇本木界隈にいそうなソフトモヒカンに似合っている。


「焦がれたその姿をついに……」


 手を伸ばしてミチルを顎くいして、微かに笑う顔は……


「わりとハンサムッ!」


 ミチルはカリシムス達を超絶イケメンと評するが、目の前の男はそこまでではなく。

 しかし、普通の男性よりは遥かにハンサム。そんな男がミチルに迫っていた。



 

 金髪ソフモヒの美丈夫は、ミチルの顔を食い入るように見つめて一言。


「……なんだ。思っていたよりは普通だな」


 笑う口元も急にスンとなって冷静な言い方だった。


「美しい男達を五人も手玉に取り、あのように可憐かつ艶かしい声で鳴くから、どのような者かと期待していたが……」


 ちょっと! どんな評価だ、それは!

 なんでオレの声(いやーん♡時)を知ってんの!?

 

 目の前のソフモヒハンサムはどうしてそんな情報を知っているのか、不気味な気分だ。

 だが、ミチルはこれまでの転移経験から、自分を奮い立たせる。

 気をしっかり持て。こんな状況に屈してたまるか。


「当たり前だろ、オレは普通のぼっちモブだぞ! 勝手な妄想してんじゃねえ!」


「……お前の言っている事は、ひとつもわからん」


 ソフモヒ、イケメン、ぼっちモブ。ミチルが口走った単語は確かに特殊。

 この世界の人間に通じないという感覚も久しぶりだ。だが、今はそれは重要ではない。


「とにかぁく! ()()()はまず名を名乗れぇ! それから押し倒すのヤメテぇえ!」


 今まで数々のぱっくんちょ危機があった。

 ゆえにこれしきの態勢ではミチルは慌てない。

 だが、敵もさる者、退くどころかミチルの腕をさらに強く押さえつけて再び笑う。


「ふっ、お前を解放するのは出来ない相談だ。だが、()の名前はもちろん教えてやる」


 余て。

 おまーはどこかの皇帝か。

 ん? 皇帝?


 ミチルは心の中でツッコミながら、それが核心をついている予感がした。



 

『我が君が、首を長くしてお待ちである』



 

 意識が飛ぶ前に聞いたテン・イーの言葉が脳裏に蘇る。

 我が君で、余とくれば……


「まさかまさかまさか……」


 冗談よしてよ。テン・イーに会った時点でオレはすでにキャパオーバーなんよ。

 それなのに、もう片方の『黒幕』も出てきちゃったってコト!?


 ミチルが衝撃に身を震わせているのを、目の前のソフモヒハンサムがどうとったかはわからない。

 だが、その様子にいたくご満悦になった笑みを浮かべて彼は言った。


「余の名はシャントリエリ。今からお前が『(きさき)』として生涯仕えるアーテル帝国皇帝である」



 

「きっ……!?」


 他の単語は飲み込めても、たったひとつが意味不明。ミチルは声が裏返って正しく発音すら出来なかった。

 目の前のソフモヒハンサムは、アーテル帝国皇帝・シャントリエリ。その理解は出来た。覚悟もしていた。

 だが、『妃』とはどういう事だ。


「ふふふ、喜びで声も出ないとは、可愛いヤツだ」


「ち、っがーう!!」


 ソフモヒ皇帝がボケた?ので、ミチルはようやく突っ込むことが出来た。


「バカか、オマエは! オレは男だぞっ!」


 そうです。オレはオトコです。

 こんなオレは正妻とか嫁とかも言われて来ましたが、それはアイツらの事情が特殊なだけ。

 そう(カリシムス)ではない男性が……というか、社会的地位がありまくりの皇帝陛下が男を『妃』呼ばわりするは正気の沙汰ではないッ!

 

「確かに男のようだが、その前にお前はプルケリマ=レプリカではないか」


「は、はあ……?」


「当代のプルケリマは、カリシムスに同性を選んだ。しかも五人も」


 おおい、ヒトを五股してるみたいに言うな!

 ミチルは本当の事を言われて言葉を失ってしまった。

 そんなミチルに、ずいと顔を近づけて皇帝シャントリエリは言う。


「つまり、お前は同性と婚姻しても()()()()()()特別なプルケリマだと言う事だ」


「な、何が……よっ!?」


 シャントリエリの言わんとしている事がミチルにはわからなかった。

 だが、それには答えずに覆い被さり続ける皇帝はハンサムに笑う。


「素晴らしい素質だ、まさに余の妃に相応しい」



 

「だからァ、オレはおと……っ」


 ミチルが反論しようとした時、シャントリエリの右手が腰回りにするっと伸びた。


「ああっ……」


 敏感な所を撫でられて、ミチルは思わずとんでもねえ声を上げてしまう。

 するとシャントリエリはますます嬉しそうに舌舐めずりして笑った。


「ふふっ、そうだ、その声だ。余はそれが聞きたかった。己の耳で(じか)にな……」


 興が乗ったシャントリエリは、ミチルの上着の中に手を滑らせて、直接腰を撫でる。


「あ、いや……っ」


 ちっがぁああう! そうじゃないだろ、オレェエエエ!

 もっと汚い声を出せぇえ!


 理性ではそう思っているのに、ミチルからは全然違う声が出る。

 これもイケメン達に開発されきってしまった弊害か。


「やだ……」


 抵抗を示す言葉もか細くて、これでは逆効果である。


「ふふふ、余はお前のその声を気に入ったのだ。カリシムスに触れられて愛らしく鳴く、その声が」



 

 そうか、ルークの金の首輪!

 ミチルはシャントリエリに撫でられながら、急に意識が切り替わった。


 ルークは魔教会からはめられた首輪からずっと盗聴されていた。

 ミチルに出会ってからのアレコレも聞かれている。それこそ毎朝♡♡♡されかけていた事も。

 魔教会の坊主達のオカズになっていただけではなかった。きっと、皇帝にも聞かれていた。


『そんなに強く吸ったらだめぇええ……♡』

 ──みたいなヤツを、ずっと聞いてたんだ!!



 

「さあ、これからは余が鳴かせてやろう……」


「ヤメロォ、ヘンタイぃ!」


 意識を切り替えたミチルは、強気な汚い声を上げることに成功する。


「いいぞ、存分に鳴くがいい……」


「ギャアァア! ズボン脱がさないでぇええ!!」


 だが皇帝シャントリエリはすでに聞く耳を持っていなかった。



 

「お前が、欲しい……」




 ソフモヒハンサム皇帝の甘い声が耳元に響く。



 

 あ、これ、間違いないです。

 史上最大のぱっくんちょ危機です……




お読みいただきありがとうございます

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