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8 宙ぶらりん

『超絶イケメン!』

『まさに国民の彼氏級!』

『ダイヤモンド貴公子!!』

『超絶美形! すでに神!』

『イケメンに押し潰されるなら、痛くない……』


 ミチルの脳裏に今まで感じてきたイケメンうほうほが蘇る。

 地球にいた頃のオレなら、イケメンとは言え男性にこんなに興奮したりしなかった。

 ところが異世界に来た途端にイケメンとキャッキャウフフの爛れたセクハラ生活。

 今となってはそれがないと欲求不満で調子が悪い、とは誰にもまだ言えない。


 この感情が、異世界に来た時に操作されたものだとしたら……


「其方達の名誉のために言及しておくが……」


「!?」


 ミチルが血の気が引くほどの危機感を思い浮かべた時、少年法皇エーデルワイスの言葉がその思考を中断させた。


「プルケリマシステムは、元から持ち合わせない感情を無理矢理植え付けるものではない。其方達は元々セイソンたる、カリシムスたる素養があったのだ」


「ほへ……?」


「愛に飢え、愛したい、愛されたいと願う感情が強い者。そういう者がセイソンとカリシムスに選ばれる。さらにはセイソンに選ばれた者を元々好むような人物がカリシムスに選ばれる。ワタシは先程『お互いに強く惹かれ合うように、その精神のスイッチが入る』と言ったが、愛し愛されるストッパーを取り除くと言った方が正しかったかもしれない」


 ええーっと、説明が長くてよくわかんないんですけど……?

 ミチルがボケっとしていると、ジンが難しい顔をして確認した。


「つまり、我らは元々シウレンのような少年が好みで、それであるがゆえにシウレンと出会ったということか?」


「然り」


 エーデルワイスが頷くと、エリオットも続けて聞いてきた。


「てことは、おれ達がミチルを愛しいと思う気持ちは元々のおれ達の深層心理であって、プルケリマシステムっつーのに操られたワケじゃねえんだな?」


「然り」


「ストッパー、言うのは、どういう事です?」


 ルークが更に聞くと、エーデルワイスはやはり淡々とした表情で答えた。


「うむ。プルケリマシステムは其方達に芽生えた感情を障害なく全開させるのだ。人間というのは無意識に『こんな事したら嫌われそう』とかブレーキをかける。そのブレーキの性能を限りなく弱めるのがプルケリマシステムだ」


「ああ、それで俺はミチルを見るとダッシュで駆け寄ってすりすりしたくなるのか!」


「私もミチルが側にいるとつい抱きしめて押し倒したくなるのだな」


 エーデルワイスの言葉を聞いてアニーとジェイは普段なかなか言わない性癖を披露するはめになった。


「其方達のために誓って言うが、プルケリマシステムは精神汚染などはしない。ただ、元から其方達にある愛情を百パーセント表現するように、少し背中を押すだけのものなのだ」


 そう言い切られて、一同はやっと安心する。

 ミチルもほっと胸を撫で下ろした。


 ん?

 でも、ちょっと待って。


 という事は、オレってイケメンかつオトコが元々好きだったってこと!?

 そんでもってスケベも大好きってこと!?

 それをシステムによって開花されてしまったってことぉおおお!?


「ミチル? 大丈夫?」


 優しいルークの声かけが沁みる。

 ミチルは本当の自分に気づいてしまって、心の整理がつけられそうにない。


「うう……大丈夫だけど、ちょっと待って……」


 お父さんお母さん、ごめんなさい。

 あなた達の息子は遠い異世界でイケメンうほうほな好きものとして生きることになりました。




「では、やはりミチルはこの世界にいてもらわねばならないと言うことだな」


 ジェイが少し深刻な調子で言った言葉が、一同の中に重く落ちた。


「……」


 他のイケメン達も黙ってミチルの方を見る。

 ミチルはジェイにかつて『元の世界に戻れる方法を探す』と言った。ジェイはずっとその事を覚えていたのだろう。


 今のミチルはと言えば、元の世界に戻りたいという気持ちはほとんどない。

 未練のある友達もいないし、両親に会えないのはまあまあキツいが、イケメン達に会えなくなる事に比べたらどうという事はない。


 心はすでに決まっているんだ。

 オレは──




「それはもちろん当たり前だ」


 ミチルがしかけた決意を遮って、人の心の機微に疎いエーデルワイスが答えた。


「ワタシの召喚術は一方通行。呼んだ者を送還する技術はこの世界にはない。異世界への扉は法皇の在任中、一度きりしか開けないのだ」


「えっ……」


 その言葉にミチルは絶句した。


 イケメン達が大好きだから、この世界にいたい。

 それはミチルの中では決まっている。


 だが、「帰らない」と「帰れない」は違う。


 召喚術は一方通行。

 ミチルは元から「帰れない」存在だった。


 この世界で生きる、という結果は変わらないかもしれない。

 ただ、そこにミチルの意思が入る余地が元々なかったことに、ミチルは大きなショックを受けていた。




「帰らない」って自分で決められると思ってた。

 自分の意思でここにいると決めたかったのに。




 ミチルの決意は、宙ぶらりんになってしまった。

 すごく、気持ちがワルイ……




お読みいただきありがとうございます

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