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《最終章毎日更新》【BL】異世界転移なんてしたくないのにくしゃみが止まらないっ!  作者: 城山リツ
Last Meets 籠の中のレプリカは最愛を探す

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2 ミチルは無事か

 ラーウスでの反乱を成功させたミチル達。

 喜ぶ暇もなく、不思議な声によってまた別の場所に転移させられた。

 そこは独立宗教国家ペルスピコーズ。

 ミチルの目の前で、その少年法皇が「其方を呼んだのはワタシ」だと自白したのである。


「おーまーえのせいでぇ! オレが今までどんな思いをしてきたくわぁあ!」


 ミチルは自分が受けた被害的な事項を、怒りながらも改めて思い返した。

 ジェイと同衾うほうほで、アニーを押し倒してドキドキで、エリオットからキッスをチュッチュで、ジンからいやんばかんな触れ合い、ルークからは婚前交渉未遂のあははん。


 ん?

 おかしいな、気持ちいい記憶しかないぞ。


「……怒りながら涎が出ているぞ。阿呆が」


「う、うるへえ! オレはなあ、いきなりこんなトコに呼ばれてものすっごい苦労をしたんだぞぉ! ずずずっ」


 涎を啜りながらそんな事を言っても説得力がない。

 少年法皇のミチルを見る目は冷ややかだった。


「本当に? よく思い出せ、お前は本当にここに来て『帰りたい』と思うほど大変な思いをしたか?」


「そ、それは……」


 何てこった。転移した最初は確かに「帰る方法を探したい」とか思ってた。だけど、異世界を転移して回って、色々なイケメンと会っているうちにそんな事は忘れてしまっていた。

 だって話題がどんどん壮大になるから。

 野犬みたいな魔物で手一杯だったのに、最近はビル級の巨大魔物を討伐してしまった。

 なんか聖なる存在として奉りあげられてしまった。

 何てこったい。


「気にするな。プルケリマシステムとはそういうものだ」


「はあ?」


 なんだか不穏なことを言われた気がしたが、少年法皇は軽く息を吐いて話題を変えた。

 そしてその頃には、ミチルの瞳の色は元通りになっていた。




「まあ、今はそれはいい。今回は急な召喚だったから条件設定を細かく指定できなかった。おかげで男のレプリカに男のカリシムスが選出されるという前代未聞の異常事態だ」


 前代未聞、前代未聞うるせえな。

 どうせオレはおまーみたいなインテリじゃねえやい。


「ワタシは別に同性のソレを否定はしない。しかし、今のお前達では世界を救えるのかどうか……」


 勝手に呼んどいて、勝手に失望してら。

 偉い人あるあるだよね。どうせオレ達庶民には計り知れない思惑がある、とか言うんでしょ。


「とにかく、イレギュラーながらプルケリマシステムは正常に稼働している。現状で何が出来るのか最大の努力をしなければ」


 ミチルに言っている訳ではなさそうだった。だからミチルは少年法皇の言葉を白けて聞いている。

 こいつはアレだ。偉すぎて独り言が多い、空気が読めない厄介なヤツ。

 

 ミチルはたった一人の状態が続いて、少し不安な思いが胸に広がっていた。それなのに目の前の人物は話が通じない。

 連れて来られた野良猫のように、怒って虚勢を張るしかなかった。


「ねえ、何なの? オレに何の用? さっさと済ませて帰してよ!」


 ミチルがそう言うと、少年法皇は意外そうに目を丸くしていた。


「帰す、とは何処にだ?」


「決まってんだろ、イケメン達のトコだよ! アイツらのトコにいないとオレはダメなんだよ!」


「ふむ、そうか……」


 少年法皇は何かを納得するように頷いた。


「システムは確かに正常なようだ」


「何が!?」


 ほら、やっぱり話が通じない。

 ミチルはますますイライラが募っていた。


 


「其方、名は?」


 今更? 最初に聞くべき事でしょ。ていうか、自分が召喚した存在の名前くらいまず先におさえるべきでしょ!

 ミチルは文句を言ってやりたかったが、早く終わらせて皆の所に帰りたいので、不貞腐れながら短く答えた。


「……ミチル」


「……」


 すると少年法皇は僅かばかりの動揺を見せる。しかしその真意はミチルにはわからない。

 すぐに元の淡々とした表情に戻して口を開いた。


「そうか。ワタシの名前はエーデルワイス。お前の後見人だ。気安く呼ぶことを許そう」


「はいはい、エーデルワイスのえぇちゃんね」


 ヤケクソで憎まれ口をきいたミチルだったが、エーデルワイスは特に何の反応も示さなかった。

 本当にミチル「そのもの」には興味がないのだろう。


「お前は不安を感じる必要はない。カリシムス達ならすでにここに呼んでいる」


「エッ!?」


 エーデルワイスの言葉に、ミチルは大いに期待した。

 どこどこ、イケメンどこ!? と周りをキョロキョロしていると、少し離れた出入り口っぽい扉の向こうから音がする。




 ドドドドドドドド……




 その音は、漫画で見る心理的なアレではなく物理的な音だった。

「ギャアア」とか「ヒエエエ」とか野太いおじさん達の悲鳴とともに、嵐のような一団がやってくる。




「ミーチールー……ッ!」


 麗しい声の五重奏。


「ミチルゥウウウァアアッ!!」


 違った。我を失ったバカ・ファイブ。




「ミチルのお尻は無事かぁああ!?」

「おのれ、シウレンをてごめにするとは死にたいのかぁ!」

「ミチルゥ! おれが上書きしてやるからな!」


 ……何コレ、デジャブなんだけど。


「ミチル、ミチル! すぐ抱きしめます!」

「むむむううう! ミチルぅうう!」


 比較的平和思考の奴らまで毒されている!




「 [私 俺 おれ 儂 ぼく] の [天使 抱き枕 妻 愛弟子 プルクラ] になんちゅーことしてくれやがった!!」




 訂正していいですか。

 イケメン達が、オレがいないとダメなんです。




「なんと言うことだ……」


 少年法皇エーデルワイスは杖を握りしめて言う。

 そうでないとショックでよろけてしまいそうになるからだ。


「カリシムス達までこんなに阿保なのは前代未聞だ……」





 なんか、ごめんね?




お読みいただきありがとうございます

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