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42 プルケリマ=レプリカ

 青く光るふわふわモフモフ。

 緑色の瞳がキュートに輝く。

 それがミチルの愛犬(カリシムス)、ルーク!


「い、犬になった……だと?」


 ジンは細い目を全開して驚いていた。


「さっすがミチル! 斜め上を行く奇跡!」


 アニーはピュウと口笛を鳴らして褒める。


「は、はは……やっぱミチルはおもしれえや」


 エリオットも脱帽して笑うしかない。


「あの犬……やるぞ」


 曇りなき目で正しく見抜くジェイの見立ては正しかった。




 ワンワンワンワン!




 犬ルークが吠えると、ベスティンクスは途端に怯え始めた。




 ニャ、ニャーオ……


 ワワワン、ワンワン!


 ニャ、ニャニャーオ……




 砂漠には一気に「ワンちゃん猫ちゃん大集合!」的な、のほほん空気が立ち込める。

 しかしそう思うのは人間だけであって、ワンちゃんも猫ちゃんも必死なのであった。




 ウー、ワンワンワン!


 ニャ、ニャニャニャ……ッ!




「ルーク、セット!」


 ミチルの掛け声が飛ぶ。

 犬ルークはサッと頭を下げて、狙いを定め、走る準備を始める。

 その鋭い視線に、ベスティンクスは恐怖で固まった。


 なんだあんなネコ。

 スフィンクスに比べたら阿保だし、ネコ型バスよりも可愛くない。

 もう、全然怖くないっ!


「ゴーーーーッ!!」


 ミチルが叫びながら手を振った。

 それを合図に犬ルークは颯爽と走り出す。


 そう! まさに! 一陣の青い風……




 ワオオオオーン……!




 犬ルークはベスティンクスの喉笛ににがぶり、と噛みついた。

 見事なジャンプ、見事な牙である。


 ベスティンクスは最期だと言うのに「ニャア」とも言わずに、足元から崩れた。

 ボロボロ黒い破片になって、その破片は音もなく霧となって消える。


 後に残ったのは、勝利を手にしたワンちゃんだ。


「ルークッ!」


 ミチルは両手を広げて駆け寄った。

 お手柄ワンちゃんをよしよししてあげなくては!


「ワワーン!」


 犬ルークも嬉しそうに尻尾を振ってミチルに飛びついた。


「うわあ!」


 勢い余ってミチルを押し倒し、犬ルークはミチルの顔を舐め回す。


「あ、こら、くすぐったいよ!」


 ペロペロワンワン!


「あっ、ちょっと……激しい……ッ」


 ペロペロワンワン!


「あっ、待って、ああん、あっあっ、ああー!」


 ペロペロワンワンワーン!!




「コラアッ! クソ犬がぁ!!」


 ストップ、獣〇!

 イケメン達が大慌てで犬ルークとミチルを離した。


 ほっかほかのミチルは力が入らない。


「はあん……危ない扉が開くかと思った」


 尻尾を勃てたままの犬ルークは、キュウンと鳴いて、その姿が青くぼやける。

 それはどんどん大きくなって人型になった。

 青い光が収まる頃には、人間の姿のルークが現れる。


「あ……ぼく、戻れた?」


 本来の姿を取り戻し、呆然としているルーク。

 ミチルはちょっとウルウルして、ルークに抱きつきたい衝動にかられる。


「ルークゥ!」


 好きぃ……♡




 だが、それを押し除けて。


「るぅうーぐぅうーっ!」


 マグノリアの巨体がどーん。


「ふぐっ!」


 ミチルは哀れにも吹っ飛ばされた。


「と、父さん……?」


「ルークゥ! 愛する息子よぉ! 良かった、本当によくやった! お前こそ我が家の誇り!」


 お髭がジョリジョリでグリグリ!


「……」


 ルークは何とも言えない顔をしている。


「あ、危なかったぁ……」


 ミチルは我に返ってホッとしていた。

 毎度毎度の吊り橋効果。今回もマジでやばかった。




「うう……」


 黒い霧が晴れた場所から二人の人間が起き上がった。

 ベスティンクスを形成していたのはもっと大人数だったが、生き残ったのは二人だけのようだ。


「何という事だ。我々は、負けたのか……?」


 覚醒しきらない頭を抱えて困惑する彼らに襲いかかる、大きな影。


「よおー、パオーン。よおー、ピエーン。生きててくれて嬉しいぜえ♡」


「ヒッ、ルード……!」


 哀れ、セクハラ盗み聞き坊主パオンとピエンは、あっという間にルードの操る大きな絨毯に簀巻きにされた。


「同志諸君! 反乱は成功だ! セイソン様とカリシムスに最大の敬意と忠誠をっ!」


 ルードの大音声が響く。

 民衆は歓声を上げてミチル達を讃えた。


「ハーッハッハッハ! ナーッハッハッハ!」


 勝利の笑い声の中、砂漠に落ちる黒光りする一本の角。

 それを真っ黒な鳥がサッと掴んで飛び立っていったのは、誰も気づかない。


「うん?」


 そしてそれとは少し離れたところに、青く光る何かがルードの意識を捉えた。

 ルードはそれを拾い上げてしばし眺めた後、弟に声をかける。


「ルーク!」


「ん?」


 ルードは手の中のものをルークに投げる。それは大きく弧を描いてルークの手中に収まった。


「お前んだろ、それ!」


「これ……」


 いつか見せてもらった「絆の青い石」。それによく似た石だった。


「うーわ、デスティニー・ストーンじゃん!」


 覗き込んだアニーが、驚きと喜びと嫉妬を交えて叫ぶ。


「これが……」


 ルークは喜びを噛み締めて手の中の青い石を見た。それに呼応するようにチェーンネックレスも鈍く光る。


「見事だった、歓迎しよう」


「ジェイさん」


「だが、ミチルは渡さない」


 ジェイはライバルを認めて笑う。ルークもそれを受けてたった。


「……それは、ぼくもです」


 ルークの決意の笑顔を見て、ジンもエリオットも複雑そうに笑う。


「ぬぬ……ペット枠とは、やるな」


「くそぉ、よしよしペロペロワンワンなんて卑怯だ……」




「勝った……」


 ミチルはやっとそれを実感していた。


「オレ達、勝ったんだね……!」


 これでまた、一歩前進……!

 ミチルの心は晴れ晴れとしていた。







『やっと見つけた、プルケリマ=レプリカ』




「……え?」


 その声は、少年のように高い声で。

 何処から聞こえるのかまるでわからなくて。




『セイソンを召喚する』



 

 朗々と響くその声とともに、ミチルの周りに青い羽根が飛んだ。


「……!」


 なんで!?

 オレ、くしゃみしてないよ!

 いきなり青い羽根なんて初めてなんだけど!?




「マジかよ、ミチルッ!!」


 エリオットの声が遠く聞こえる。

 他のみんなの姿も遠い。


「ミチルー!!」


 イケメン達が駆け寄る暇もなく、ミチルの姿は青い羽根とともに消えた。


「嘘だろ……」


 呆然となる五人の頭に、不思議な声が響く。




『来たれ、カリシムスと共に』




 次の瞬間、ジェイ、アニー、エリオット、ジン、そしてルークの周りにも。


「!!」


 青い羽根が舞う。

 五人を包み込んで、そのまま砂漠から消えた。




 セイソンとカリシムスを讃える声の中。

 向けられる者はもういない。

 それでも砂漠はしばらく騒がしいままであった。








 



「異世界転移なんてしたくないのにくしゃみが止まらないっ!」

              Meets05 優しいバーサーカー   了



 

 次章 Last Meets 籠の中のレプリカは最愛を探す

 開始まで今しばらくお待ちください!

 (※Last言うてますけど、終わりではないです)

 


 次章開始前に、おさらいや設定資料盛り沢山のエピソードも公開します。

 どうぞお楽しみに!

お読みいただきありがとうございます

感想などいただけたら嬉しいです!

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