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41 命令して欲しいんだワン

神鳴鳥の円舞曲サンダーバード・ロンド!」


「シャンパンタワー、入ります!」


「うおぉおッ!!」


 エリオット、アニー、ジェイの連続攻撃を、バスほどの大きさに縮んだベスティンクス(※ネコバスティンクスという名前は却下された)はまともに食らった。だが、あまり効果がなく、ベスティンクスの大きさはこれより一向に小さくはならない。


「……一旦、引け」


 そう言ってジンが一人、ベスティンクスに立ち向かう。

 気を高めて、呼吸を整えながら音速の蹴りを繰り出した。


風華玲瓏(ふうかれいろう)二次元脚(にじげんきゃく)!」


 ギニャァアア……!


 ベスティンクスは悲痛な叫びを上げて、上下に真っ二つ。しかし、影のようにユラユラ揺らめいた後、また元通りにくっついた。


 ニャオーッ!!


 勢いよく吠える様から、イケメン達の攻撃でのダメージは全くないように思える。

 ジンは悔しそうに舌打ちした。


「チッ、やはりそうか……」


「師範殿、何かわかったのか?」


 ジェイの問いに、ジンは視線をベスティンクスに向けたまま答える。


「おそらくだが、我らと巨大ベスティアには相性のようなものがあるのでは。だからあのベスティアには我ら四人の攻撃が効かなくなったのだ」


 イケメン達の武器はこれまでベスティアに絶大な効果を与えてきた。それなのに、目の前のベスティンクスには効いていない。ミチルがイケメン各々に武器を生成した時、対峙したベスティアそれぞれへの「超特効効果」がついたとするなら、その場のイケメンが一瞬で倒せたことの説明がつく。


「じゃあ、どうするんだよ!?」


 アニーが焦って聞くと、エリオットは後方でオロオロしているミチルを見て言った。


「ジンの仮説が正しいなら、おれ達の武器にミチルから『特効効果』をつけてもらうか……」


 だが、これはあくまで仮説の段階で、ミチルにやった事のないことをやれと言っても無理だろう。


「もしくは、この地に相性のいい力を持った武器を生成してもらう……」


 そう思い至ったエリオットは続けてルークを見た。ミチルと同じように困りながら立ち尽くしている。


「おれ達の時みたいに、ルークに武器を生成できれば勝てるってことか……」


 ジンもまた同じ結論に辿り着いていた。

 だが、ミチルがどんな状態でどんな感情を持ったらそれが叶うのか。絶対的な方法論がない。ミチルもそれを意識してやった形跡もない。


「待つしかない。シウレンが活路を見出すまで、こうして食い止めるしかないのだ」


 ジンが歯噛みしなが言うと、ジェイとアニーも姿勢を正してベスティンクスに立ちはだかった。


「承知した。時間稼ぎと言うことだな」


「いいぜえ、俺はミチルを信じてるからな!」


 イケメン三人は改めて各々の青い武器を携えて構える。


「エリオットぉ! 四方を固めるぞ!」


「わかったよ! ……ミチル、頼むぞ」


 アニーに言われてエリオットもベスティンクスへと駆け出した。ミチルとルークに望みを託して。




「ああ……どうしよう……」


 ミチルの眼前には、イケメン四人が適度な距離を取ってベスティンクスと戦っている。傍目にはちょっかいを出したり様子を見たり、遊んでいるようにも見えた。だがこれはイケメン四人だから成せることで、余裕があるように見えて精神力の消耗がはかりしれない。


「ミチル、ぼくも……戦いたい、です」


「ルーくん……」


 イケメン達の姿を見て、ルークは拳を握る。

 けれど武術の経験のないルークには何が出来るのかわからず、それがとてももどかしかった。


 ジェイ、アニー、ジンの時は「基礎」となる武器があった。壊れたそれを怒りの感情とともに強く「直れ」と思えば良かった。

 だが、ルークはそういう武器を持っていない。


 エリオットの時は、礼拝堂に安置されていたカミサマ像を見たらなんか閃いた。

 だが、この戦いの砂地には、ピンと来るものがない。


 どうしよう。

 どうしたらいい。


「ミチル、お願いです」


 ルークはミチルの手を取ってじっと見つめた。


「ぼく、あれ、倒したい。ううん、倒さなくちゃ」


「ん……」


 ルークの真剣な瞳に、ミチルはどう応えたらいいのかわからない。

 けれど尚もルークは決意をこめてミチルに願った。


「ぼく、ミチルの力、信じます。ミチルの言葉、勇気が出る。だから命令して、ぼくに……」


 ルークが言った『命令』という言葉に、ミチルの中の何かがざわついた。


「命令して! あいつを、倒せって……!」


「あ……」


 良い子のルーク。

 従順なルーク。

 ストレートに愛を表現(ペロペロ)するルーク。


 それは、まさに──


「忠犬ッ!!」


 ミチルの頭にそんなワードが閃いた。


「……ふぇ?」


 そしてルークはキョトンとしている。


「ルーク! やるよ!」


 ミチルの目に光が灯る。それはまだ薄いけれど、確かに蒼い炎。

 影炎(かげろう)と対をなす、蒼炎(そうえん)


「はい、ミチル!」


 その炎に、今、導かれよう。




「おう、コラ! やい、コラ、答えは人間だ、ネコバスヤロウ!!」


 ギニャッ!?


 ミチルの大声に、ベスティンクスが反応した。

 周りを取り囲んだイケメン達もこちらを振り返る。


「ああ……ミチル……」


 イケメン達は心から安堵した。

 ミチルから薄くても確かに「決意」の蒼炎が見える。


「お前なんかなあ! 良い子のバーサーカーとモブ学生が噛み砕いてやるからなあ!」


 その声に呼応して、ルークの首元が青く光り輝いた。


「ああっ!」


 ルークの首に新たな装飾具。

 きっちり締めたりなんかしません、ゆったりいきましょう。

 青く光るチェーンネックレスがおしゃれにシャララン! でも継ぎ目がないから取れないよ! それはマジごめんやで!


「やっちゃいなさい! 忠犬ルーク!」


 ミチルの『命令』にルークは更なる変身を遂げる!




 わおーん……!




 砂漠に鳴く、誇り高き猟犬(ハウンド・ドッグ)

 青く光る毛並みの犬が、エメラルドの瞳を携えて立ち上がった。

お読みいただきありがとうございます

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