31 こうなったら嫁ぐしかない?
「ぐぬぬ……我々は、もうずっとミチルと同衾していない」
おい、ジェイ。何を言い出す。
「そうさ……初めてミチルと出会った時、ミチルの夜はおれだけのものだった」
エリオット。お前もか。
「我らは気づいてしまったのだ。シウレンの温もりを知らぬ頃にはもう戻れない……」
毒舌師範が泣いてる……だと?
「俺は超絶不眠症なんだ! ミチルが一緒じゃないと眠れないぃい!!」
アニーがぶるんぶるん震えながら大号泣してるぅうう!!
「……」
イケメン四人の嘆きを聞いたルードはしばし唖然とした後、一言。
「バカか? お前らは」
そしてアニーが泣きながら、人を小馬鹿にするルードに食ってかかる!
「そうだよ、バカなんだよ! 俺達はミチルへの愛に狂う狩人なんだよぉおお!」
ミチルはこの場から逃げ出したかった。
でも欲求不満なのはオレもそうなんだよな……とは口が裂けても言えない。
「そうか。ぼくも最近、沈みがち。ミチルと一緒に寝ていないせい……」
ルーくんまで、そんな可愛いこと言って!
「んなこと言ったって、お前ら、アジトにいた時は普通に寝てたじゃねえか」
ルードのもっともな意見に、アニーは号泣しながら反論する。
「バカヤロー! ミチルとはぐれた時の俺達はなあ、寂しさをぐっと堪えて我慢してんだよ! だけど、今はどうだ? ミチルが一つ屋根の下にいるのがわかってるのに! ちょっと歩けばミチルの柔肌があるって思える場所で、呑気に寝てられると思うか!? ミチルの寝姿を悶々と××に××して×××が痛くてどうしようもないんだよッ!!」
アニーらしくない下ネタの連発! 絶対に先生の悪影響!
ミチルは新鮮な経験にうっかり興奮しそうになった。
「いかん、アニー殿が寝不足で半狂乱だ」
ガルルル、シャガガガと唸るアニーを、とりあえずジェイが押さえつけた。
「なるほど。お前らが特殊な愛欲関係なのはわかった」
愛欲、とか言わないで欲しい。
アニーの様子にドン引きしつつも、ルードは冷静に提案をする。
「明日は大事な決戦だ。そんな精神状態では困る。かと言って、俺様の可愛い弟に6♡なんて破廉恥なことはさせられない。どうだろう、一人一時間で順番にミチルっこを××して×××の×××……」
「ええっ!」
その場のイケメン5人が薔薇色の声を出して恥じらった。
しかしそれに意を唱える、主人公。
「ふざけるなァ! オレ達はまだそんな関係じゃねえ! 逆ヘラ〇〇スなんて真っ平ごめんだぁああ!!」
そこへ助け舟を出したつもりの、ややズレたぽんこつナイトの言葉が世界の真理を突いていた。
「それはとても素晴らしい提案だが、肝心の順番を決める戦いでおそらく我々は全滅するだろう」
ああ……
そうかも……
という沈んだ雰囲気の中、舌打ちしながらルードはミチルに言い捨てる。
「めんどくせーなぁ、じゃあもう、ミチルっこが決めろよ。主導権はお前にあるんだ、平等に情けを与えてやれ」
「えっ」
オレが? イケメン達に? ビッチ発言しろというのか?
どど、どうしよう。ミチルの心臓は冷や汗が溢れそう。
チラッとイケメン達を見る。皆、素敵な笑顔で希望に満ち溢れていた。
ええい、ままよ!
「ひ、ひとり、ハグ一回! 順番は出会った順で!」
キャアアア……と歓声が沸く。喜んでもらえて良かった……のか?
だが悪魔はとんでもない事を囁くのだ。
「チッ。シケてんな。せめて一人ずつ口でしてやれよ」
……!
考えたことすらなかった特大ビッチ行動! ミチルは目眩で気を失いそうになった。
「ふざけんなあ、ルード、コラァ!」
「ミチルにそんなことさせられるクワァ!」
「我らがするのはいい、だがシウレンがするのは違う!」
真っ赤になって叫ぶエリオット、アニー、ジン。
足元がよろけたミチルをジェイとルークが支えてやった。
「わーかったよ。ウブなのかタダレてるのか、わかんねえ奴らだな。さっさとやれよ」
「お前は出ていけぇ!!」
そうして悪魔は祓われてしまった。
部屋に残されたのはミチルと、期待に胸躍らせる男達。
「じゃ、じゃあ……する?」
する、とか言うなよぉ、オレぇ……!
「やるッ!」
やるって言うなよ、お前たちぃ……!
「ど、どうぞ……」
ミチルは覚悟を決めて、両腕を広げてウェルカム状態で目を閉じた。
なぜ目を閉じたかって? 恥ずかしいからに決まってんだろ!
「で、では、私から……」
少し緊張をはらんだジェイの声がした。大きな影に覆われた次の瞬間に、ミチルはふわっと正面から抱きしめられた。
「……ッ」
包み込まれるような優しさに、ミチルは胸がきゅっと締めつけられて、ジェイの背中に手を回す。
それだけで、切なくなって泣きそうになった。
「ミチル……」
耳元でそう囁いた後、ジェイはぐっと力をこめてミチルをきつく抱きしめる。
愛している……
美しい笑顔を見せてから、ジェイはミチルを離した。
ミチルの足は立っているだけで精一杯。
ちょっと待って! すごかったんだけど! これ、あと四回やるの!?
オレは絶対に萌え苦しんで死ぬに違いない!!
「ミチルゥ!」
「ひあっ!」
感度ビンビンの体に、アニーが待ちきれずにバックハグ!
背中とお尻に押しつけられる熱い体温に、ミチルの意識が弾け飛ぶ。
「んん……」
アニーはそのままミチルの右頬に唇を寄せてキッスする。
好きだよ……
「あぁ……」
そんなにされたらもっと欲しくなっちゃう。
ミチルは思わず漏れた自分の声にゾクゾク震えてしまった。
スルリと解放されたものの、ミチルはすでに呼吸困難。
「次はおれだな」
エリオットは、ミチルが真っ赤になってはふはふしている隙に、その体を正面から抱っこした。
「やあ……っ」
小憎らしいエリオットが、少し意地悪く笑う。
「お前、おれのことコドモ扱いしてんじゃねえぞ」
それからミチルの胸元に顔を埋めて、超敏感な部分をちょっとはむっとする。
ミチルはおれの妻なんだからな……
「あぁんっ」
ヤバい。だいぶヤバいよ。
なんかもう、立ってられないかもしんない。
ミチルはすでに朦朧となった意識の中で、床に下ろされてもフラフラだった。
「シウレン、大丈夫だ、儂がいる」
ミチルはジンの腕の中に倒れ込むように収まった。
「先生ぇ……」
力強く抱きしめてくれる頼もしさと、サラサラの銀髪がくすぐったい。
このまま全てを委ねてしまいたい。
「おぉ……久しぶりのシウレンの尻」
セクハラ思考がデフォルトのおじさんの手がミチルのお尻を揉みしだく。
ああ、儂の恋しいミチル……
「いや、あぁぁ……」
全然嫌がってない甘い声を、ミチルはまたも漏らしてしまった。
もう無理です。砕けました、腰が。
意識も飛びそうです。
「ミチル……」
ジンからミチルを受け取ったルークは、ふわっとオヒメサマ抱っこする。
「ルーくん……」
「ミチル、絶対に守ります」
ルークはミチルの顔に頬を寄せてすりすりする。それから左頬をペロっと舐めた。
ぼくの、美しい人……
「はあ……」
やだ、もう。何これぇ。幸せ過ぎるんだけどぉ。
ミチルはルークの腕の中で完全に力を抜いた。
ああ……気持ちいい……
もう、オレはダメだぁ……
こいつらに体を開発されきってしまったぁ……
こんな、こんなんなったら、もう……
こいつらに嫁ぐしかないんじゃない……?
幸せの絶頂に昇りつめたミチルは、そのまま眠りに堕ちてしまった。
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