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30 決戦前夜〜温もりが欲しい

 あ! っという間に数日が過ぎた。

 ルークの進言により、イケメン四人は捕虜の身分を解放され、食客のような待遇を受けられるようになった。

 栄養状態は万全、武人であるジェイとジンは裏庭で鍛錬などをして過ごしている。アニーも見様見真似で体を動かす。エリオットは精神集中してイメージトレーニング。そんな彼らの行動を側で見ながら、ミチルは日に日に「戦争に参加する」実感が増していった。


「おいすー! 野郎どもしっかりやってるかあー!」


 準備おさおさ怠りなしのループス邸に、意気揚々とやって来たのは反乱の首謀者・ルード。

 彼は相変わらず偽アラ○ンのような格好で、魔法の絨毯を抱えていた。


「ああ、兄さん。いらっしゃい」


「ルーくうぅん! いいこにしてまちたかぁ♡ やっとにいたんがきまちたよぉ♡」


「う、うん……」


 猫撫で声で弟に愛を語る激イタ兄貴だけれど、良い子のルークは邪険にはできない。


「ああーん! このさみちぃにいたんに、ルーくん成分を補給させておくれぇえ!」


 がばちょと弟に抱きついて、ほっぺをはむはむする様は狂気の沙汰。

 それを見たミチルは血の気が引いて石化したように固まった。


「ああん、何見てんだ、弟嫁、コラ。いいじゃねえか、お前は毎晩ルークの××を注いでもらってんだろ」


「するかぁ!」


 変態に輪をかけたセクハラ発言に、ミチルは真っ赤になって叫んだ。

 何日も一人寝しててこっちは欲求不満なんだよ! とは誰にも言えない。



 

「おう、捕虜どもはどうしてる?」


 切り替えの早いルードはミチルに問いかける。その言い方は私怨もあってだいぶ意地悪な声音だった。


「もう捕虜じゃないよ。ルークがちゃんとしてくれたからね。ずっと訓練してる」


「へえ、そうなのか」


 ルードがルークに視線を移して言えば、ルークも毅然とした態度で答えた。


「うん、彼ら、大事な戦力。ちゃんとご飯食べて、元気でいないと、でしょ?」


「ううーん! さすがルーくん、いい采配だあ♡ にいたんは嬉しいよぉ♡」


 デレデレで腰をくねらせる変態兄貴。そこへやっと他のイケメン達もぞろぞろとやって来た。


「げ! くそばかルードじゃねえか!」


 開口一番、エリオットの容赦ない言葉が飛んだ。しかしルードは気にする風もなく、軽く挨拶するように言う。


「よお、ライバル共。気合いは十分か?」


「む……うむ……」


 ジェイを始め、イケメン達の様子はなんだか歯切れが悪い。


「とりあえず、明日の作戦を伝えに来た。親父様もいるんだろ?」


 イケメン達の様子を無視して言うルードに、ルークが尋ねる。


「じゃあ、明日……?」


「そうだ」


 ニヒルな笑みでたっぷりためてから、ルードはその場の全員に言う。


「明日の朝、反乱を決行する」



 

 夕食をとりながら、決戦に向けた最後の会議が開かれた。

 ……と言っても作戦を論じる段階にはすでになく、ルードが決定事項を伝えることに終始する。

 明日の朝、区庁舎に押し入って帝国の役人を制圧する。そこで決起集会を行い、ミチルを奉じながらその足でチルクサンダー魔教会ラーウス支部に乗り込む。

 徹底的に暴れて、支部のトップであるパオン司教を生捕りにして帝国との取引材料にすると言う。


「まあ、パオン程度で取引できるとは思えないけどさ」


 ルードが言えば、ジンが険しい表情で聞いた。


「……司教は見捨てられる可能性が高いと?」


「まあな。そん時は派手にパオンを処刑して、ラーウスから魔教会を追い出すことで今回の反乱は一区切りとする」


 そう答えたルードに、今度はエリオットが不安そうに尋ねる。


「そんなに上手くいくか? 帝国の役人はどうすんだよ」


「こっちに自治を任せるだけあって、ここにいる役人は皆たいした地位じゃない。けど、こいつらは簡単には殺せない。捕虜として軟禁しておくくらいだな。パオンよりも価値がないのに、殺したら帝国が一気に報復に出るだろうから」


「……そもそも、最初の作戦で役人達が強く抵抗したら?」


 エリオットの懸念を、ルードは既に承知しているような顔で否定した。


「それはない。汚職にまみれたアイツらにそんな気概がある訳がねえ」


「なるほど。それも反乱を起こす理由のひとつって訳だ」


 ……なんだか難しい話をしてますけども。

 ミチルはだんだん怖くなってきていた。会話に「殺す」とか「処刑」とかが自然に出てくるだからだ。

 あのパオン、死ぬんだ。

 そう思ったらますます怖い。知っている人間が命を落とす様など、ミチルは見たことがないからだ。


「我々は、約束通り、ミチルの守護でいいのだな?」


 ジェイの確認に、ルードは含みのある笑みで頷いた。


「ああ、いい。特製の輿を用意した。ミチルっこはその中に入ってジッとしていればいいし、お前らもそれを守っていろ。うちのルーくんに怪我でもさせたらそれなりの償いはしてもらうけどな」


「承知した。ミチルと貴殿の弟は死ぬ気で守ろう」


 ジェイは自分の大剣を目の前に立てて、誓うように言った。それを聞いていたルークは少し複雑そうだった。


「ぼくも、自分の身くらいは守れます……」


「たわけ。そんなものは当然だ。シウレンの盾となるくらいの気概は見せろ」


 ジンの厳しい言葉が飛ぶ。それでルークは背筋を正して、顔を引き締めた。


「それはもちろんです! ミチル、必ず守ります」


「……」


 イケメン達の雰囲気に、ミチルはなんだか申し訳ない気持ちになった。

 そんなにまでしてもらうほどの価値が、自分にあるんだろうか? そりゃ、死ぬのは嫌だけど、オレの代わりに皆が危ない目に会うのはもっと嫌だ。



 

「明日の作戦はだいたいわかった。それよりも、今夜解決しなくちゃならない問題がある」


 不意にアニーが手を挙げる。

 すると、他のイケメン達も元気を失くしながら頷いた。


「どうした。そういえば、お前らさっきから妙にしおらしいな」


 ルードが首を傾げていると、アニーは真剣かつ暗い表情で凄むように言う。


「これは、俺達の死活問題なんだ……」


「何が?」


「俺達には、大至急、ミチル成分が必要だ! ミチルと触れ合わないと今にも死にそうっ!!」



 

 ……なんですって?

お読みいただきありがとうございます

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