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27 一人寝が寂しいなんて言わない

 ルードの計画する反乱に、旗頭として参加することを決めたミチル。

 イケメン達のサポートを頼りに、自分の運命と戦うことも決意した。


 まずはチルクサンダー魔教会のラーウス支部をぶっ潰すらしいが、ルードはまたその準備のためにループス邸を出ていった。

 ルークの父、マグノリアも周辺との調整や調達するものがあり、数日はそれで忙しいらしい。


 ミチルとルーク、それから捕虜預かりとなったジェイ、アニー、エリオット、ジンの六人はすることもなくループス邸に待機している。


「ううーん……わお! 朝の目覚め、サイコー!」


 ミチルは久しぶり……というか、異世界に来て初めてかもしれないが、一人でのびのびと眠ることができた。

 引きずりこまれたり、抱き枕になったり、デンジャラスゾーンを触られたり、夜通し気持ちヨクされたり、マークをつけられたり……

 改めて思い出すと、なんて破廉恥で爛れた夜ばかり過ごしてきたのだろう。


 それが、今朝は一切、起きなかった。なんて平和、なんて平穏。

 イケメンと同衾することはやぶさかではないけれど、何もない朝のかけがえのなさよ。ミチルは感無量で泣けてきた。

 

 ところで、誰がミチルと同衾するのか。その血みどろの戦いは当然起きかけた。

 ジンの住まいと違ったのは、ルークの家はスーパー金持ちで部屋が余りまくっていることだ。

 イケメン四人は、このままルークとミチルが同室なのを良しとしない。

 かと言って他の誰かとミチルが同室になるのは、マグノリアが許さない。


 そこでようやく、ミチルには別の客室があてがわれた。誰と寝ても諍いが起きるなら、ミチル一人で寝るしかない。

 捕虜イケメン四人は、使用人用のタコ部屋に押し込まれた。それでもルードのアジトよりはマシらしいから、彼らが今までどう扱われてきたかは推して知るべし。


 そんなわけで、スッキリ目覚めたミチルは広間でルークと美味しい朝食を食べていた。マグノリアはすでに出かけてしまったらしい。



 

「あのー……他のみんなは?」


 とても美味しいパンケーキのようなものを給仕してくれた執事のカカオに、ミチルは恐る恐る聞いてみた。


「はあ。彼らなら居室に昨夜の残りものを運んでおきましたが」


「残りもの……そうですか……」


 おそらくマグノリアからそんな指示を受けているのだろう。ミチルはイケメン達を不憫に思ったが、居候の身分は同じなので、ミチルは何もしてあげることができない。

 そんな風に肩を落とすミチルに、ルークがこっそり耳打ちした。


「ミチル、大丈夫。あとで、ぼく、運んでおく」


「ルーくん……♡」


 なんて良い子なんだろう。ミチルは手を合わせたくなった。


「ところでミチル様、お食事が済んだらよろしいですか?」


「何、カカオ?」


 ミチルが返事をする前に、ルークが少し表情を強張らせて聞く。それにカカオは目を細めて答えた。


「何も危険なことはございません。来たる日にお召しいただく衣装の採寸をしたいのです」


 あー……それね。

 危険な予感はしないけど、別の意味でミチルは不安になった。

 昨日薄気味悪く笑っていたマグノリアとルードを思い出したからだ。


「それじゃあ、ぼくも……」


「いいえ、坊っちゃまはなりません」


 カカオはルークに向けて毅然な態度で断った。


「ミチル様のお支度は坊っちゃまに見せてはならないと、旦那様の仰せにございます」


 そんな事を言われるとますます不安になるんですけど……

 ミチルは飲み込んだパンケーキが喉に詰まりそうになる。


「ル、ルーク、大丈夫だよ。別にどこかに行くわけじゃないんだし」


「左様でございます。当家お抱えのテーラーがすでに待機しておりますゆえ」


 恭しく答えるカカオにバレないように、ミチルはルークに目配せした。


『オレが人を引きつけている間に、みんなに何か美味しいものあげて!』


 その意図は伝わったようで、ルークは大きく頷いていた。

 その点についてはホッとしたけれど、カカオの不気味な笑い方でミチルはやっぱり不安が募る。


「ミチル様、よいお式にいたしましょうねえ、ふっふっふ」


 ……なんの!?





 

 ミチルがずるずるとカカオに引き摺られていったのを見届けたルークは、調理場で肉料理を作らせた。

 コックは不思議がっていたが、ルークには得意のおねだり攻撃がある。使用人にはもれなく効果抜群のやつだ。

 そうしてまんまと大量のご馳走を手に入れたルークは、それをカートで運んで捕虜隔離部屋に来た。


 緊張で、ゴクッと喉がなる。

 しかし思い切ってルークはその扉を開けた。


「コラァアアア!!」


 目に飛び込んできたのは、おかっぱ頭の男の憤怒の顔と怒号。

 恐怖で身が竦みそうになるけれど、ミチルの笑顔を思い浮かべてルークはその場に留まった。


「みなさん、おはようございます」


 一様に疲れで項垂れている男達に、ルークは余裕ぶった笑みで話しかける。

 おかっぱ頭の男だけが、妙に元気で怒りながらくってかかった。


「おはようじゃねえええ! 朝食がカッピカピのパンとうっすい野菜スープで力が出るかあああ!」


 そう訴えるおかっぱ……もといエリオットの顔はゾンビさながら。

 これでは反乱の決行日になっても、ミチルを守れるか期待できない。

 あとで父さんに進言しなければと思いながら、ルークはカートに乗せた料理を皆に見せた。


「そうだろう、思って、差し入れ、持ってきました」


 香ばしい匂いとアッツアツの湯気にまみれた、肉、肉、肉。

 それらを視認したゾンビ四名が貪るように料理に飛びかかった。


「肉だああ!」

「タンパク質ぅうう!」

「温かいメシじゃあ!」

「ふおおおお!」


 栄養を摂取し始めたゾンビ達は、瞬く間にイケメンへと変貌を遂げる。

 ガツガツ食べまくるイケメン達に、ルークは意を決して言った。


「あの、皆さんに、聞きたいこと、あります……」


 するとイケメン四人はピタッと食べる手を止めて、ルークに注目した。

 そして代表するように、エリオットが鋭い視線で答える。


「いいぜ。おれ達も、お前に聞きてえことが山ほどあるんだ」


 イケメン達がミチルに隠れてする話とは──?

お読みいただきありがとうございます

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