22 イケメン集合!
ルークの兄で革命家、ルードの魔法により麻袋によって封印されていた捕虜四人。
その正体は、ミチルのよく知るイケメン達だった!
「もががががッ!!」
中でも一番暴れているのは、青みがかったおかっぱ頭を振り乱している男だった。
……まあ、エリオットなんだけど。
「もが、もがが! ごもももッ!」
猿轡のせいで、何を喋っているかはわからない。だが、激怒しているのは充分わかる。
それにしても、サラッサラストレートの輝く髪を持っていた彼が、今は見る影もなくボロボロだ。
他の三人もボロボロな風情は同様。捕虜と形容されるだけの仕打ちは受けたのだろう。
「ルード! 何コレ、酷いじゃん! みんなを解放してよ!」
「モガゥー!」(ミチルー!) ※特別に翻訳しています
ミチルがルードにそう訴えると、エリオットも他のイケメンもミチルに対して興奮を示した。
それを見て、ルードはニヤリと笑って言う。
「うん? なんだ、お前ら知り合いなのか?」
──わかって連れてきたくせに! 白々しい!
ミチルはわざとらしいルードの態度に呆れた。しかしそれよりも、今は彼らの縛めを解くことが先だ。
「そうだよ! この人達がオレが探してた仲間なの! すぐに解放してよ!」
するとマグノリアが険しい顔のまま答える。
「うーん、まあ嫁の言うことなので聞き入れてはやりたいが、ルードよ、彼らに危険はないのか?」
その単語は彼らの興奮にさらに火を焚べるものだった。
「ボベッ!?」(嫁っ!?) ※特別に翻訳しています
「ぶべぼんば! ばべがばべぼ、ぼべばっべ!?」(ふざけんな、誰が誰の嫁だって!?)
「びぶべんば、ばびぼぼぼば!」(シウレンは、儂のものだ!)
「むむむ……」(むむむ……)
ヒートアップしてしまった四人を見て、ルードは肩を竦めて父に言う。
「危険かどうかで言ったら、チョー危険よ。丸一日、メシも水もやってないのにこんな元気なんだぜ? 野獣なんじゃねえの?」
「いっ!? じ、人権侵害! すぐに縄解いてッ!!」
ミチルはイケメン達にされた仕打ちに真っ青になって訴えた。
だが、マグノリアは相変わらず渋い顔をしている。
「しかしなあ。という事は、彼らが例のアレなんだろう? ルークのライバルに塩を送るなんて……」
「あのねえ! オレの国には昔偉い人がいて、敵が困ってたら物資をあげたの! おじさんはこの区の一番エライ人でしょ!? そんな心の狭いことでどうすんの? ていうか、その前にマジこれ虐待だから! 解け、早く!!」
必死に訴えるミチル。そんなミチルを捨てられた犬のような目で見る緊縛イケメン達。
その様子を見て、ルークも兄に頼んだ。
「兄さん、ぼくからも、お願い」
「……いいのか? ルーク」
兄の目は、弟を試すように光る。
それにルークは力強く頷いた。
「うん。ぼく、負けない」
「ルークがそこまで言うなら。おい、弟嫁」
言われて思わずミチルは振り向いてしまった。それを聞いた緊縛イケメン達は「ボベッ!?」と揃って騒ぐ。
しかし革命家を名乗るルードの胆力は並ではない。のたうち回る彼らを綺麗に無視してミチルに聞いた。
「こいつら四人の身柄はお前とルークに預ける。今から縄を解くが、その瞬間こいつらが暴れたりなんかしたら、お前をここで殺す」
「!」
非情な言葉に、まずイケメン達の方が固まってしまった。
ミチルはと言えば、キッとルードを睨んで立っている。
その態度に、ルードはニヤと笑って更に言った。
「今、こいつらにお前が言い聞かせろ。こいつらがお前には従順だってのを、俺様と我が父に証明するんだ」
「……わかった」
ミチルは怯むことなくルードに頷いて、クルリと背を向けた後、緊縛イケメン達に語りかける。
「みんな」
「ビヂブ……」(ミチル……) ※特別に翻訳してします。
四人はミチルを見上げていた。ミチルは屈んで四人に言い聞かせる。
「あのね。ループス家の人達は話せばわかる人達だからね」
コクコク、と四人は頷いた。
「みんなが言いたいことがあるのはわかってる。でも我慢して欲しい」
コクコク。
「ここは、この人達の国だから。他所者のオレ達は暴力なんかで意思表示するべきじゃない」
コクコク。
「みんなの事は、オレが絶対守るから。だからみんなもオレを信じて欲しい」
「びびぶ……ッ!」(ミチル……ッ!) ※特別に翻訳しています
イケメン達はもれなく涙を流す。
ちょっと見ない内にすっかり逞しくなって。「みんなを守る」だなんて言われた日には、イケメン達は感無量である。
乾いた空気の部屋の中、ルードが指を鳴らす音が響いた。
するとイケメン達の猿轡が剥がれ、拘束していたロープも解けた後、消え失せる。
「ミチルッ!!」
「みんなぁ!」
自由になったイケメン達とミチルは、今ここに再会を果たす。
ガシッと抱き合って、互いの体温を喜んだ。
「うわーん! みんなが無事で良かったよぉ!」
「ミチルこそ、無事でいてくれてありがとう!」
アニーはミチルの髪の毛に頬擦りした。
「ああ……ミチル、本当に良かった!」
ジェイはミチルのほっぺを撫でて安堵の息を漏らす。
「シウレン、よく言ってくれた! 儂は鼻が高いぞ!」
ジンは咽び泣いてミチルの肩に擦り寄った。
「あー……ミチル、ほんと、良かっ……たんんぁ!?」
イケメン団子の中心に運良くおさまったエリオットは、ミチルの胸元に顔を埋めようとして奇声を上げる。
「ミ、ミチルッ!!」
エリオットは叫びながら、ミチルのパーカーの襟元を乱暴に広げた。
ミチルの首元に、不審な痕がある。
「んん?」
ジェイもアニーもジンも、ミチルの鎖骨周辺に注目した。
「えっ、あ……やっ……♡」
こいつら、あんなに言ったのに! 欲望のままにこの場でオレをひん剥く気なのか!?
ルーク達が見てる、イケナイ興奮しちゃう!
……というミチルの思考は、完全に甘いと言わざるを得ない。
イケメン四人達は捕虜として禁欲していたため、欲望が爆発した訳ではない。
ミチルの肌に、あろうことかミチルの柔肌に、自分が見覚えのないキッスのマークが点在していたからである!!
「なんじゃあ、こりゃああぁぁあ!」
「ミチルゥ! おしりは無事かぁああ!」
「シウレンんんッ! ほんとに嫁になったのくあぁ!」
「むむむむぅうう!?」
……ただいまの競技について説明いたします。
えー、ルークは寝ぼけてミチルを××しようとする癖がありまして。
あー、ですから、毎朝ミチルの肌には痕がつけられていたんですねえ。
それはもう、愛し合った後のような実に生々しい紅い、紅い、所有印……が♡
「イヤだぁあああああ!!!!」
イケメン達の怒号が部屋にこだました。
騒ぐなってあれほど言ったのに!
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