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7 魔法のチョーカー?

 チルクサンダー魔教!? 何その素っ頓狂なネーミング、恥ずかしくないの!?


 そんな気持ちがミチルの胸に沸いたが、笑いとか、つっこみとかは一生懸命我慢した。

 落ち着け。そもそもネーミングセンスなんかは、異世界ならではのものだ。

 ミチルの常識に当てはまらないからと言って、笑ったり否定したりしてはいけない。


 そもそも、チル一族だって、何だそれって感じだし。

 今まではみんなが普通に使っていたからスルーしてたけど、チル神様とか、だいぶセンスが狂ってる。


「うん? ()()クサンダーって、なんかチル一族と関係があるの?」


 とにかく冷静に整理していくしかない。ここには魔術知識の豊富なエリオットも、人生経験豊富なジンもいないのだから。

 ミチルが聞くと、ルークは心許なさそうに答える。


「ええと、もうひとつのチル一族、だって聞いた。ぼくは、よく、わからないけど……」


「そうなの?」


「うん、ぼく、赤ちゃん、時に呪われた。それで、チルクサンダー魔教の教会、通ってた。でも、ぼく、難しいお説教、わからなくて。そしたら、ちょっと、家の事情が変わって、教会にはずいぶん行ってない」


 家の事情? ルークの家に何があると言うのだろう。

 ミチルは気になったけれど、素直なルークが言葉を濁した以上、さらに聞くことは憚られた。


 あれ? そういえば、カエルレウムやアルブスで信じられている方の宗教はなんて言うんだろう?

 しまった、エリオットからもっと詳しく聞いておくんだった、とミチルが悔やんでも今はどうにもならない。


 何か情報を集めなければ。アーテル帝国の宗教について知ることは、チル神やベスティアについての大きなヒントになるかもしれない。

 ただルークはあまり深く知らなそうなので、ミチルはまずルーク自身の呪いを掘り下げることにした。



 

「ねえ、ルークの呪いのこと教えて? なんでルークは呪われたの?」


 ミチルが聞くと、ルークは暗い表情で首を振った。


「わからない。赤ちゃん、時に呪われて、父さんが教会から、説明受けた。ぼくは、あまり、教えてもらえなくて」


「そうなんだ……」


 シュンと肩をすくめるルークの隣で、ミチルも肩透かしを食らったような気分だった。

 赤ん坊の時に呪われたなら、親に詳しい説明がされるのは当然として。ルークの父親はどうして本人に教えてあげないんだろう。


「その金のチョーカーは? いつから付けてるの?」


 ミチルがその首元を指差すと、ルークもそこに手を添えて答える。


「赤ちゃん、時から。これはお守り、だから、ずっとつけてる」


「ずっと? 同じものを?」


「うん」


 頷くルークにミチルはふと、考える。

 同じもの? えーっと、同じとは言え、成長するんだから「同一」のものじゃないよね?

 自分から言った言葉なのに、ミチルの方がこんがらがりそうだった。


「えっとさ、同じものっていうかさ、同じものなんだろうけど、サイズとかがさ、ほら、あるじゃん?」


「うん? ぼく、赤ちゃん時から、これ、外したこと、ない」


「ええ? 取り替えたりしたでしょ?」


「しない」


 マジで!? それ、硬そうだけど、実は伸びたりする金属なの?

 そうでないと、絶対首が絞まるじゃん! 一気に青紫色になっちゃうじゃん?


 ミチルはそうツッコミかけて、急にピカーンと頭から電球がつくようなことを閃いてしまった。


 魔法、か!

 ルークのチョーカーは魔法のチョーカーなんだ! ここがファンタジー世界って忘れてた!


「ミチル? ぼくの話、わかる?」


 少し考えこんでいたようで、ミチルの様子に不安になったルークが顔を覗き込んだ。

 ちょっと! 何この可愛いの! 美形が天然でぶりっ子してんだけど!!


「うんうん、もちろんわかるよ! 大丈夫、謎は解けてるから!」


 この時、ミチルはもっとチョーカーについて調べるべきだった。

 直接触ったりして確かめるべきだった。だけど、静電気をくらったことが災いして、無意識にスルーしてしまった。


 危険な目にあったチョーカーを再度触るよりも、ミチルは目の前のこの可愛い生き物にメロメロになっていたのだ。



 

「良かった。ぼく、頭、悪い。だから、上手に説明できない……」


「ええ? そんなことないでしょ、誰が言うの!?」


 確かにルークの言葉遣いは辿々しい。でも意味はちゃんと通じるじゃないか。

 こんなに可愛くて素直なルークに、どこの誰がそんな酷いこと言うのよ!


「兄さん。とても賢い。早口で喋れる。僕は出来ないから、兄さんにいつも怒られる……」


 どんどん落ち込んでいくルークに、ミチルは憤慨して言った。


「ンマー! なんてでしょ! 兄貴が年上マウントで弟をいじめるとか、サイテーなんですけど!」


「……どういう意味?」


 あ、しまった。つい、現代日本の単語を使ってしまった。これじゃ、ルークが結局傷ついてしまう!

 ミチルは謝るとともに、もう一度、自身の憤慨を伝えた。


「ごめんね、この世界にない言葉を使っちゃった。お兄さんが達者なのは、年上だからってだけでしょってこと!」


「そう、かな……?」


 不安げに首を傾げる、褐色イケメンの可愛さがマシマシ! 抱きしめたいっ!

 だが、こちらから抱きついて、押し倒し返されたら、そのままぱっくんちょされても文句は言えない。ミチルは欲望をぐっと堪えた。


 そうしていると、部屋の入口付近でオジサンのか細い声が聞こえる。


「ルークさまぁ……坊っちゃまぁ」


「カカオ?」


 ルークが反応するも、声の主であろうカカオは入口の縁に隠れて姿を見せなかった。


「大変申し訳ないのですが、服をお召しになっていただきたいのですが……」


 おおい! 服なら最初から着てるけど! ふざけんなよ、エロ執事!

 ミチルが声にならない叫びを胸に燻っていると、勘違い執事は遠慮がちにまた言った。


「チルクサンダー魔教の神官様がいらっしゃいました……」


 タイムリー過ぎない!?

お読みいただきありがとうございます

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