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3 千夜一夜なのか!?

 ミチルは今、冷や汗が止まらない。

 砂漠の国(仮)ラーウスで出会った褐色イケメンのルーク・プルクラ・ループス。

 彼に(いざな)われてちょっと歩いたところに、その自宅があった。

 ミチルが転移したのはかなり大きなオアシスだったようで、その近くでは町が栄えているのだ。

 その町の一番大きな建物。てっきりミチルは役所か何かだと思った。

 ところがどっこい、これがルークの家だと言う。


 ちょっと待って。超絶金持ちなんじゃない?

 アラビアンナイトな王様住んでない?


 ミチルの知識は貧困だ。多分本物の王様の城はこんなものではない。

 それでも一般庶民のミチルから見れば、見上げた星々が、本当は遠かったり大きかったりしても地上からは同じに見える。

 それくらい感覚がかけ離れている。


 思えば、最初に出会ったジェイは貧乏貴族でアパート暮らし。

 アニーは天涯孤独で寂れた酒場経営。

 エリオットは王子様だけど、転移したのは部屋の中だし、その城の外観をゆっくり見る暇がなかった。

 ジンの居室も綺麗だったけど、田舎な上に文化が日本と似ていたので違和感なく暮らしていた。


 アラビアーンな雰囲気で、細かい装飾や金が施された豪邸を目の当たりにして、ミチルはカルチャーショック寸前。

 これは、もしかしなくても、オイルダラーの佇まい!

 ゲームやラノベでもレアなエキゾチック感に、ミチルはすっかり飲まれてしまっている。


「さあ、ミチル。どうぞ」


 ジェントルマンさながら、ルークはミチルの手をとってピカピカの大理石を敷き詰めたような玄関に案内する。


「ひえっ、ひえ……っ」


 鏡のような床の光沢に映る、己の姿のなんと滑稽なことよ。

 ミチルが広すぎる玄関でビビり散らかしていると、バタバタと奥から人がやって来た。



 

「ルークさまぁああ!」


 息を切らせて走ってきたのは、大柄なオジサン。黒い髪を四角い帽子でまとめて、真っ黒のあごひげがたっぷり生えている。ルークと同じようなゆったりした長い服を着ているが、ルークのもののような華美な装飾はない。浅黒い肌からは、涙と汗がとめどなく流れていた。


「カカオ、ただいま」


「ご無事でしたか! 三日探してもいらっしゃらないので、わたくしはもう……おおいおいおい」


 見た目は厳つく、雰囲気はアニーのところで会ったヒグマおじさん(マリーゴールド)のようだったが、ルークに縋りついて泣き崩れる様はエリオットのところの陰険執事(ウツギ)のようだった。


「ミチル、コレは、うちの執事で、カカオです」


 ルークは少し困りながら笑って、彼を紹介した。


「はあ……えっと、三日探したって?」


 ミチルが聞くと、ルークは「ああ」と頷きながら、また笑って言う。


「ぼく、オオカミになってしまうと、ワケがわからなくなって、変なところに逃げるのです」


「ええ! それじゃあ、あの黒い狼みたいな、犬みたいのってルークさんだったんですか!?」


 ルークのような超絶イケメンに出会えた衝撃で、ミチルは最初に遭遇したベスティア激似の獣とルークの関係性を繋げられずにいた。

 驚いてしまったミチルだったが、ルークは「何を今更」みたいな顔をして、首元に光る金のチョーカーを見せた。

 それは、あの狼犬ベスティアにあった金色の首輪と同じものだった。


「はい。ミチルが、ぼくを、ヒトの姿に戻してくれた、でしょう?」


「えええ……? そうなのかなあ……?」


 確かにあの青いバリアは二度目なので、ミチルが出したのかもしれない。それは百歩譲るとして、ベスティアを人に戻すなんて、そんなことを認めたらまたどんな風に言われるかわからない。ミチルはスノードロップや最初の頃のジンのような疑りの目で見られるのが、相変わらず怖い。



 

「ルークさま、では、この方はもしや……?」


 泣き崩れていたカカオがようやく立ち上がって聞くと、ルークはにっこり笑って言った。


「それはまだ、ワカラナイけど、ミチルはとても『美しい』人だよ」


 え? 何? どういう事?

 全然、自分で思ってる訳じゃないけど、「可愛い」とか「可憐」とかなら言われたけど、「美しい」は初めてなんですけど!


 十八年、モブとして生きてきて。身長も低いし、痩せっぽちのこのオレが。

 エキゾチックビューティなルークを前にして、「美しい」ワケがないだろう!?


 だがしかし、ルークにそう言われた執事のカカオは、顔に笑い皺を作ってミチルを迎えた。


「左様ですか。ミチル様、ようこそ当家へおいでなさいました。歓迎いたします」


「ミチル、ぼくの部屋、行きましょう」


 ルークもまた、輝くような笑顔でミチルに手を差し伸べる。エスコートの仕草である。


「ああ、旦那様がお留守なのが残念です」


「父サンは、どこ、行ったの?」


 ルークがそう尋ねると、執事は目を細めて恭しく答えた。


「昨日から大きな商談でお出かけでございます。ですからもう、存分に……」


「ハハ、ウン、わかった」


 少し困ったような顔で頷くルークと、蕩けるような笑顔の執事。

 ミチルは二人の会話の意味がよくわからなかった。


「すぐにお茶をお持ちして、あとは私どもは近寄りませんので……」


「ああ、ウン……」


 ちょっと待って、オジサンがこんなにニヤニヤしてるなんて、なんかおかしくない?


「ミチル様、どうぞよろしく……」


 ──何がっ!?


 カカオが笑顔のまま、奥へ引っ込んでいく。ミチルはなんか、とある危機を感じていた。


「さあ、ミチル」


 ルークの手がさりげなくミチルの腰に回される!


「はうっ!」


 再び疼きだすミチルの〇〇!


「ぼくの部屋で、ゆっくり、します」


 ゆっくり、ナニするのぉ!

 爽やかなのに有無を言わさない笑顔!


 アラビアンなナイトが、訪れちゃうんじゃない!?

 アラビ・イヤーン♡ナイトが繰り広げられちゃうんじゃないっ!?

お読みいただきありがとうございます

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