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8 〇〇希望少年

 坂之下(さかのした)ミチル。満18歳。異世界カエルラ=プルーマにやってきて〇〇日。

 それまで年上イケメンにうほうほしていたが、ついに正真正銘のショタに巡り会ってしまった。


「ミチルお兄さま! お会いしたかったです!」


 数多の障害(ジンの屈強な弟子達)をことごとく蹴散らして、若干10歳の少年は瞳をキラキラさせていた。


「えーっと……?」


 すぐ目の前のちんまい子どもの、度を超えた好意の眼差しにミチルは戸惑った。

 だが彼はピンク色のくせっ毛を揺らし、ルビーのように紅い目でミチルを熱っぽく見上げる。


「お忘れですか? 大会の一回戦で対戦した、ミモザです!」


「いや、覚えてるけどぉ……」


 おかしいな。こんな雰囲気だったっけ?

 あの猫少年は、もっと人を馬鹿にしたように笑って、軽く闇堕ちしていた印象だ。


 決して、今のように……


「ああん、覚えててくれたんですね! ミモザ、感激ィ!」


 ぶりぶりぶりっ子で、お尻をぷりぷりさせて、腰をくねらせながら笑顔を振り撒くような子どもではなかった。


「キミ、ほんとにあの時の子?」


 まるで陰と陽。決勝戦の時の邪悪な笑みはどこにもない。もっとも、今の笑みも無邪気ではないが。


「そうですよ。でも僕、あの時、自分が自分じゃない変な感じだったから……」


「何? それは本当か?」


 ミモザ少年の言葉に、ジンは眉をピクリと動かして反応するが、オジサンの言葉は子どもには聞こえていないようだった。



 

「僕、ずっとお兄さまに謝りたくて! 試合では酷いことしちゃってごめんなさい!」


 馬鹿にされた挙句、二時間も眠らされたことを思い出し、ミチルは苦笑いした。


「ああ、まあ……うん」


「許して……くれますか?」


 10歳の子どもに目をウルウルさせて謝られたら、許す以外の選択肢は人であれば、ない。


「う、うん。まあ、特に怪我もしなかったし……」


 ミチルがそう言うと、ミモザはパァッと顔を輝かせて喜んだ。


「嬉しいっ! お兄さま、好きっ!」


 そしてそのままミチルに抱きついて、お腹に顔を擦りつける!

 スリスリで、ぐりぐりっ!


「にゃあぁん!」


 思わずミチルは変な声が出た。

 その声にもちろん反応したイケメン四人は、ミチルに抱きついたミモザ少年を注視する。


「……ニヤリ」


 ミチル以外に向けられる悪魔のホホエミ!

 イケメン達は瞬時に理解した。


 このショタは、攻め希望である! と。



 

「おい、こら、クソガキ! 離れろ!」


 ミチルをショタおにの餌食にするわけにはいかない。

 エリオットはミモザの肩に手をかけて、ミチルから離そうとした。


「……」


「てめえ、無視すんのか!」


 一向にミチルの腰にしがみついて離れないミモザを、エリオットは体重かけて引っ張る。


「ふぐぐぐ……ッ!」


「ににににに……っ」


 だが、ミモザも見上げた根性でミチルの腰を離さなかった。10歳のわりに大した腕力である。


「ぎゃああ!」


 そんな体力自慢たちにミチルが耐え切れるはずもなく、真っ先に転んで尻もちをついた。


「お兄さま、ごめんなさい! 大丈夫ですかぁ?」


 そんなことになっても、ミチルから離れなかったミモザは、謝りながらもミチルに抱きついていた。ぷりぷり尻尾を振るようにお尻を振って。


「く、クソガキ……!」


 エリオットが悔しそうに歯噛みしていると、ミチル奪還のため、ついにあの男が立ち上がる!


「エリオット、俺に代われ」


「アニー!」


 アニーは笑顔のまま、額に青筋が立っていた。


「フッ、マフィアはなあ、悪ガキどもの扱いには慣れてるんだ。いっちょヤキ入れて──」


 ポキポキと拳を鳴らしながらミモザにむけてすごむアニー。それはイケメンにあるまじき行為。


「ああん、お兄さま、怖いぃん!」


 アニーの行動は完全に逆効果で、ミモザに更にセクハラさせる機会を与えるだけだった。

 少年はミチルの膝にちょこんと座って、怖がるふりしてミチルの胸をまさぐった!


「ふぁああ……ん!」


「……ニヤァ」


 ちっこくても攻め希望の微笑みが、アニーとエリオット、ジェイにもブッ刺さる。

 三人が戦闘体制に入ろうとした時、ジンの一喝が響いた。



 

「耐えろ、馬鹿者ども! 今はそれよりも重要なことがある!」


「ジジン!?」


「ジジイではない、先生と呼べ!」


「うるせえ、止めんな!」


 アニーとエリオットがぶうぶう文句を言うが、ジェイがとりあえず二人を抑えて聞いた。


「師範殿。この少年が何か?」


 ジンは内なる怒りを年の功で抑え、溜息を吐いた後、ミモザに言う。


「そこの餓鬼、聞きたいことがある。その間シウレンは貸してやるから、素直に吐いた方が身のためだ」


 怒りはだいぶ隠しきれていない。


「先生え……」


 ミチルが呆れていると、ジンは悔しそうに更に顔を歪めた。


「シウレン、辛いだろうが耐えろ。今夜は儂が必ず清めてやるから……っ」


「おおい! 子どもの前で何てこと言いやがる!」


 真っ赤になって怒るミチルを側で見て、ミモザは口を尖らせた。

 ジンはこの不貞腐れた少年から、必要な情報を引き出せるのか。


 そして、今夜も誰がミチルを清めるか戦争が勃発してしまうのか!?

 それはこの攻め希望ショタにかかっている!

お読みいただきありがとうございます

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是非遊びに来てね♡
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