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7 新たな、ショタ!?

「ふみゅ……」


 ミチルはジンのベッドの上で目が覚めた。

 いつの間にか眠っていたらしいが、あまり「寝た」実感はない。


 何故なら──


「おお……何だこれ……」


 床に横たわる四つの人()()()モノ。

 左右バラバラに組まれたり敷かれたり、なんかいろいろしたらしい十六本の手足。

 金、銀、黒、青の髪の毛を振り乱したイケメン()()()顔は、土気色であらぬ方を見たまま固まっている。


 そんなベスティアも真っ青な、バケモノの屍のような物体が、ミチルのいる所まで到達すること叶わず、冷たい床に横たわっていた。


「どうしよう、これ、ほどけるのかな……」


 図体のでかい男達が絡まっている姿を見て、ミチルは途方に暮れた。


「う、うう……」


 微かに呻き声が聞こえる。誰かが目を覚ましたのだろう。

 ミチルはおそるおそる、そのバケモノに近づいた。


「アニー、アニー?」


 金髪のホストアサシン()()()()()()の頬をミチルは軽く叩いた。

 すると、それは青い瞳をバチッと開いて言う。


「ミチル!? ミチルのおしりは無事かい!?」


 バッチーン!


 開口一番言うことか。ミチルは思わず、その頬を高らかに叩いてしまった。


「うう、ミチル……」


 今度は小悪魔プリンス()()()()()()が呻いていた。


「大丈夫、エリオット?」


 ミチルが近寄ると、それはギョロッと大きな瞳を開いて叫ぶ。


「ミチルは()の伽だぁあ!」


 ペッチーン!


「しっかりしろ、エリィ!!」


 体は25歳のくせに、精神がすっかり退行してしまっているエリオットの頬にも、ミチルは気合いを入れた。



 

 この精神力が幼い二人は置いといて、残る比較的理性派の二人はどうだろう。


「う、ううぬ、儂としたことが、なんたる不覚……!」


「ああ、先生、おはようございます」


「シ、シウレン、よもや儂以外の男に××を開くことなどあるまいな……?」


 はい、パッコーン!

 ミチルはどスケベ師範の頭をぶっ叩く。

 ああ、だめだ。徹夜で戦っていたから、脳回路がイカれていらっしゃる。


「ジェイ、は……?」


 ミチルはイケメンの塊を隅々まで見て探す。

 端の方に、ようやく黒くて固そうな毛が見えた。


「ZZz……」


 聞こえたのは、疲れているせいなのか、大きめのい・び・き。


「……」


 ミチルは口を開きっぱなしで、脱力した。

 こいつは大物なのか、それとも人の心がないのか。


「起きろぉ!」


 ぎゅうぅう……!

 ミチルはぽんこつナイトの頬を思い切りつねる。


「む、むむ……! 朝か?」


 眩しそうに目を開けたジェイは、目の前のミチルに微笑んだ。


「ああ、ミチル。おはよう」


「……なんで普通に挨拶できんの、怖いんだけど」


「む?」


 これで全員の意識が戻ったが、肉塊となっているイケメン達は身動きがとれずにいる。



 

「先生、朝のお食事は──ギャアァアア!」


 ノックとともに、師範代のお兄さんが部屋に入ってくる。

 悲鳴とともに、恐らく一瞬だけ失神したようだったが、さすがの精神力で彼はその場に踏みとどまった。


「助けてくださあい!」


 ミチルは部屋の中心で叫ぶ!


 こうして盛大に絡まったイケメン達は、弟子総勢十人がかりで丁寧に解いてもらった。

 中にはイケメン達に触れて喜ぶ者もいた。

 ミチルはその様子をシラけた(まなこ)で、眺めていた。





「まったく、結局一睡も出来なんだ」


 ボッサボサの銀髪を整えもせずに、ジンは不機嫌なまま粥をすすっていた。



 

「ほんとだぜ、オッサンのくせに元気過ぎるだろ」


 エリオットも、ぐちゃぐちゃのおかっぱ頭のまま、箸で漬物を刺す。



 

「まあ、とにかくミチルのおしりは死守できた。良かったなあ」


 寝不足に耐性があるアニーは、満足そうに食事を続けていた。



 

「ふむ。初めて食べるが、非常に滋味深い……」


 ジェイにいたっては、余裕で粥を食リポする始末。


 

 

「ちょっと、朝からしんど過ぎるんだけどぉ……」


 ミチルはげんなりして、粥をスプーンでちびちび食べていた。

 寝不足なので、いつもの食欲がなく、目の前の色々なおかずもくすんで見える。


 それぞれが黙々と食事を続けた。

 食べ終わった後の沈黙に、ミチルが耐えられなくなった頃、また部屋のドアがノックされた。


「先生、失礼します」


 どうも食器を片付けにきた様子ではない、師範代のお兄さんの雰囲気に、ジンは眠さで下がっていた首を元に戻した。


「何かあったか?」


「はい。例の少年が目を覚ましたそうです」


 その報告に、ジンだけでなく、ミチルも顔を上げる。昨夜おおよその事情を聞いているイケメン三人も、師範代を注視した。


「そうか。是非とも彼には聞きたいことがある。面会はできるのか?」


 ジンが、おそらくは虚勢で、冷静に尋ねると、師範代は言葉を濁し目線を泳がせる。


「それが……その……」


 彼が困った表情を浮かべると同時に、遠くの方からドタバタと騒がしい音が近づいてくる。


「?」


 ミチルも含めた五人は、捕物のような物音に耳を澄ませていた。

 次第に「待ちなさい!」とか「あ、こら、止まりなさい」とか、「ふぐえええ!」「のおおお!」と言った悲鳴も聞こえ始める。


 ドタバタ音がこの部屋まで到達するのに、そう時間はかからなかった。


「とぉーう!」


「ぐわぁ!」


 穏やかな性格に定評がある師範代のお兄さんは、何者かに背中を蹴られて大声とともに倒れ込んだ。


「何奴!?」


 ジンはすぐさま戦闘態勢をとる。三人のイケメン達も、ミチルを背に隠して構えた。

 そこにいたのは──


「ミチルお兄さま!」


 頬を紅潮させて、元気いっぱいの、猫のようにしなやかな身のこなしでお馴染み。

 武道大会決勝戦に出場した少年だった。

お読みいただきありがとうございます

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くしゃみ転移シリーズの総合ポータルサイトを開設しました!
全ての情報の掲載を目指します。イケメンのビジュアルもこちらにございます
是非遊びに来てね♡
https://plus.fm-p.jp/u/kurishiroyama/

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― 新着の感想 ―
あっもう「とぉーう!」の時点で可愛い これは心身ともにショタな子来るのか?!(エリィは心だけショタ?だな) どうやって争ったらイケメンの塊ができるのか…… アニーはこれでもかってほどミチルのおしりを重…
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