10. 答えが無いから間違う
小学生の頃から身長が高かったからかな?
中学校に入学してすぐバレー部に勧誘された。
部活といっても普通の公立中学校だから身長はみんなバラバラで、同級生の中だと私が一番大きかった。
先輩たちと混ざってもかなり高い方で、それだけでチヤホヤされたしズルイとも言われた。
でもボールを扱うのが人一倍下手くそだったのもあって、それが逆に良かったのかもしれない。すぐに羨望も嫉妬も無くなって輪に溶け込めた。
みんなでボールを繋いでいくっていうのがバレーの一番好きだったところ。
お揃いのユニフォームを着て、得点を決めるたびに円陣組んで喜んで。試合にはなかなか勝てなかったけどあーでもないこーでもないって、みんなで練習メニューを考えるのがなんかすごく良かった。
だから練習をサボったことなんて一度もなかったし、下手くそだったからできることが1つ増えるたびに成長が実感できて、どんどんバレーにのめり込んでいった。たくさん練習した後にみんなで買い食いして帰るのも楽しかった。
初めてレギュラーに選ばれた日はものすごく嬉しくて、みんなもお祝いしてくれた。
先輩からレギュラーを奪ったことで先輩からの風当たりが強くなったけど、同級生のみんなは私を庇ってくれた。
一生の仲間なんだって本気でそう思っていたの。
だからこそ、私は私たちの代で勝ちたいって思った。
だって負けるよりは勝つ方が楽しいし、練習だって上手くなって勝つためにやってるんだから。
それにみんなとちょっとでも長くチームでいたい。
キャプテンになった私はそれをみんなに伝えた。
みんな同じ気持ちだと信じていた。
でもそれは私だけのわがままだったの。
最初はみんなも協力してくれたけど、長くは続かなかった。
「これ以上、真希奈にはついてけないよ……」
私の願いは私だけのもので、みんなは私とは違ったみたいだ。
「私たちはそれなりに楽しくバレーができたら良かったの。先輩たちの代みたいにゆるくやれれば十分だったの」
私だって楽しくバレーをしたい。勝ってもっともっと楽しみたいって思ったの。
「勝ちたいって気持ちもわかるけど、だからって朝練とか休みの日に1日中練習とか、そこまでは無理かな」
みんなで一緒なら、辛くても楽しいはずだった。だってチームだから。
「真希奈は身長も高いしバレーも上手いからそう思うかもしれないけど、私たちにとっては所詮部活というか、バレーよりも大切なものもたくさんあるから」
私は別にバレーで勝ちたいわけじゃないの。みんなで一緒に勝ちたかったの。大切なのはバレーじゃなくてこのチームだったの。上手くなれたのだってみんながいたからじゃない!
でもそれは全部全部私だけの話。
私以外のみんなは同じ気持ちだったから、みんなで私に反発したんだ。
私は枯れるんじゃないかってくらい泣いて、みんなもおんなじくらい泣いていた。
そんなに私が嫌だったのかな? 友達の私にそんなことを言うのが心苦しかったのかな?
何が願望で何が正解なのか分からないから涙の意味を考えるのはやめた。
私が流した涙の意味も色々混ざってぐちゃぐちゃだったから、やっぱり考えないことにした。
私にみんなの場所を奪う権利なんてない。
だから私は部活をやめた。
やめて気がついたけど、やっぱり私はバレーが好きなわけじゃないみたいだった。
みんなとやるバレーが好きだったんだ。
気づいた時にはもう遅くて、今更戻ることなんてできなかった。
戻ったとして、私がみんなと同じようにゆるく楽しくなんとなく部活をしている姿が想像できなかった。きっとそのうちまたぶつかるんじゃないかって思えたし、そもそも元通りに戻ったフリして気をつかいあう関係になっちゃうんじゃないかとも思ってしまった。
関わるときっとまた間違えてしまうから。
同じ気持ちで、同じ方向を向いて進んでいると信じてたのが裏切られるのは怖いから。
あの時、ちゃんとみんなのことを理解できていたのなら、同じ気持ちで歩けていたなら、まだ一緒に笑っていられたのかな。
考えたところでどうしようもないことだ。
考えたところで私には答えがわからない。
誰の気持ちもわからない。
それで誰かを傷つけたり、怒らせたりするのはとても悲しい。
悲しい思いはするのもさせるのも嫌だ。
そのうちクラスメイトのことも、よくわからなくなった。よくわからなくて考えているとあっという間に1日は終わってしまう。答えが出ないまま明日にはまた新しい問題が出てきてしまう。人と関わって心を交わらせるのは私には難しすぎた。
気を紛らすために勉強を始めた。
もともとあまり成績は良くなかったけど、答えが1つ確かに存在することは安心できる。
私の出した答えが間違ってないことを証明してくれる。
勉強をしていることで人と関わる時間を少なくできる。
そんな考えが虚しくてたまらないから、またそれを隠すように答えを求めて、それを繰り返していくうちに成績がどんどん伸びて、私は地元から離れた進学校と呼ばれるレベルの高校へ入学していた。
どれだけ勉強ができるようになっても結局、人の気持ちは分からないから高校でも私は1人になった。
みんなが普通にできることができないから、迷惑をかけちゃうから、私は1人でいるべきなんだ。
だけどやっぱり……
1人でいるのは寂しいの。




