突然の中断
「そういうことならば、この裁判は成立しませんね。」
「何?」
「貴方は人間を逸脱している。それを人間と同じ土俵にあげるのは失礼でしょう?」
確かに俺の策には穴があったが、それは予想してなかったな。
俺が転生者である事を全て認めた上で、裁判の中止まで持っていかれるのか。
「とりあえず裁判を終わらせましょう。アーデルハイトさん、一成さん。前へ出てきて貰えますか?」
俺とアーデルハイトはそれに大人しく従い、俺や教会への暴言が止まない中、全員の前へ立たされる。
「互いの罪は、この大鎌が裁いてくれるでしょう。」
クレアがそう言った瞬間、騒がしかった場内が一気に静まり返る。
俺から後ろのクレアは見えないが、ブンブンと風を切るような音が聞こえて、ものすごく嫌な予感がする。
「まずは、アーデルハイトさんですね。」
「へ?」
アーデルハイトが間抜けな声を出したと同時に、アーデルハイトの首を巨大な鎌が両断した。
「ああ!!ああああ!!」
アーデルハイトは何が起こっているのか分かっていない。
もちろん俺もだが、首を切られたはずのアーデルハイトが生きているところを見ると、どうやら死ぬわけでは無さそうだ。
「貴方の罪は……良かったですねぇ、90パーセントです。」
「体に……力が入らない……。何をされたんだ……?」
「次は一成さんですねぇ。」
そう言われ、俺の首に鎌がかかる。
威圧感のある鎌だな。
修道着を着ている人間が持っているには不釣合いな、禍々しい鎌だ。
うーん、普通に切られたら死にそう。
「一成さん……?一成さん!!」
「レインさんダメだ!!ここで止めれば貴女まで罪に問われる!!」
俺の身に起こっている異変を音で感じとり、レインが取り乱す。
それをルシウスが必死に抑えているような状態だ。
俺はレインを落ち着かせるためにわざといつものようにタバコを取り出し、一服した。
「レイン。安心しろ。俺は大丈夫だ。」
その瞬間、大鎌が俺の方に向かって動き出す。
俺はいつかと同じように目を閉じ、ここで死ぬならそれも良いと運命を受け入れた。
だが、また俺はどうやら生き残ったらしい。
「おい、どうした?切らねぇのか?」
「貴方は……本当に一体何者何ですか?」
「はいかいいえで答えなきゃダメか?」
俺の問いかけに反応すること無く、クレアは大鎌を下ろす。
口に咥えたタバコの先端だけが綺麗に切られており、振り返った時にはクレアの手に大鎌は無かった。
「一成さんとルシウス、それにそこの女性はこの後私の部屋まで来てください。」
そう言ってクレアは入ってきたドアに戻っていく。
それを追いかけるように付き人もドアに入り、会場はザワついた。
「何であの男だけお咎め無し何だよ!!」
「アーデルハイト様!!ご無事ですか!?」
富裕層たちが雪崩込むように俺とアーデルハイトの元へ駆けつけようとするが、流石にこのままだと俺の身が危ないので、少し黙らせることにした。
俺は咥えたタバコに火をつけ直し、大きく一息入れる。
そして、枷をつけられた両腕を地面に叩きつけてみせた。
ズドンという鈍い音と共に、会場の床がひび割れる。
その光景を見て、駆けつけようとした富裕層達が、声を上げて一斉に出口へ走った。
「何でアイツはここで魔法を使えるんだ!!」
「化け物だー!!」
別にいつものように力を使っただけなのに、普段以上に効果があったようだ。
ルシウスすら、それに驚いている。
「……一成さん。ここは地脈の魔力より下位の魔力は使えないよう術式を施されているんですよ……?その地脈の魔力すら、半分の力しか出すことが出来ないんです。貴方が扱っている魔力、もしかして……。」
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