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帝国軍

「帝国……軍?」


 目の前で自身の死を止められ、半分考える能力を失い、とりあえず疑問に思った事を口に出していた。どうやら彼が噂に聞く剣聖だそうだ。

 俺が思っていたより2回りくらい若いな。てっきり4、50代くらいの壮年の男かと思ったら20歳前後の青年じゃないか。


「一成さん!お怪我はありませんか!?」


「ああ、平気だよレイン。」


 剣聖が引き連れた連中よりも早く、いの一番にレインが俺に駆け寄ってきてくれる。

 その様子を見て剣聖ルシウスは俺たちの方に歩み寄りながら部下と思われる兵士たちに指示を出している。


「あなた方がこのグリフォンの足止めを?」


「あんたが来るのが少しでも遅かったら俺は死んでたよ。感謝する。」


 そう言って頭を下げる俺に対してルシウスもまた頭を下げ返す。


「いえ、あなた方が足止めして下さらねば村が危険な状況になっておりました。我々としても報告を受けてから急いで来たのですが……」


「その話、長くなりそうか?」


 俺はルシウスの話を遮る。流石に今回は疲れたし何よりレインが心配だ。


「剣聖さん、本当にありがとうよ。とりあえず皆まとめて村に来てくれよ。ゆっくり休んでから話すといい。」


 リックが割って入りルシウスも納得したようで、グリフォンの死体を村に搬送してから向かうと言って、俺たちは先に村へ向かった。

 村への帰り道レインが心配そうに俺を気にかける言葉を言っていたが、俺としてはレインの方が心配だ。



 この村に来る道中俺だけでなくレインももちろん怪我をした。

 酷い時は不意打ちされ、ゴブリンの手に持った槍でかなり深く斬られたこともあった。だがその傷は数秒と経たず回復していたのだ。レイン曰く、


「これは生まれつきなんです。私が怪我をしたり、魔法を使ったりすると周りの自然が肩代わりして枯れて行くんです。」


「だから枯れ木の魔女なんて呼ばれてたのか……」


「昔私は山で崖から落ちて死ぬほどの大怪我を負ったことがあるんです。もちろん近くに誰も居らずその時は本当に死を覚悟しました。

 でも次に目を覚ました時には全くの無傷だったんです。身体を岩場にぶつけ、受け身も取れず痛みもありました。それでも私は無傷だったんです。」


 恐らくその能力であまり良い思い出は無いのだろう。

 いつも通りの笑顔で語った彼女の顔には少し引きつった表情も見て取れた。


「死にはしないけど痛みはあるんだろ?なら怪我しないのが1番だ。怪我をするのは俺だけでいい。」


「私は……」


「ん?なんか言ったか?」


 後半が小声で何を言っているのか聞き取れなかった。


「な、なんでもないです……」


 そう言ってレインは顔を伏せた。



 今回レインは俺の目の前で死んだ。正しくは死ぬ痛みを味わったのだ。

 普通の人間なら精神が崩壊してもおかしくないだろう。

 もう二度とそんな辛い目に彼女を合わせたくない。

 それと共に本来あの山の小屋にいれば味わうことのなかった痛みを負わせてしまった後悔が俺の中で渦巻く。

 これから先何があろうと、たとえ俺が死んでも彼女を守り抜こうと改めて心に決めた。

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