表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
87/150

契約成立

「これで良いわね。後はどうやってこれを姫巫女様に成立させてもらうかだけど。」


 作戦会議中、アーデルハイト宛の契約書を書き終えたマーリンが伸びをしながら俺達に質問する。

 一通りの段取りを決め、マーリンが契約書を書いている間やることのなかった俺達は、夜飯の準備をしていた。


「ああ、それならアルに頼もうと思ってる。」


「ぼ、僕ですか!?」


 スープの味を見ながらアルを見つめる。


「任せられるのがお前しか居ない。そしてお前が適任なんだ。他の者より小さく、弱く見えるお前がな。」


「どういう事ですか?」


「城の橋の前で待っているのは防衛隊の人間だ。今回は防衛隊よりも早く、討伐隊に来てもらわなければならない。そこでお前は、大声で俺の名前を叫びながら慌てた振りをするんだ。俺に利用されて仲間達がアーデルハイト邸にカチコミに行ったってな。」


「それじゃあ一成さんが悪者になっちゃいますよ!!」


 どうやらこの短時間でよく懐いてくれているようだな。

 悪い気はしない。


「いいんだよそれで。全部上手く行けば俺も解放される。つまり俺が捕まるか捕まらないかはお前にかかってるんだよ。」


「そ、そんな……。」


 責任の重さに表情が少し暗くなったアルの肩を、俺は励ますようにトントンと叩く。


「仮に捕まったとしてもそれはお前のせいじゃない。100パーセント俺のしでかした事が悪いだけだから気にすんな。」


「は、はい……。」


「ああ、言い忘れていたが、ソールを誘き出すための方法は簡単だ。レインの名前を出すだけで良い。それだけ言えば、後はアイツなら勝手に着いてくるだろう。」




 アルはどうやら上手くやったようだな。

 指示通り防衛隊よりも早く討伐隊を到着させ、ソールも連れてきている。

 やはりアルは頭が良いし、この手の事なら他の3人より対応力があったか。


「はぁ。あまり職権乱用はしたくないんだけどね……。」


 ソールが溜息をつきながら読み終えた契約書を丸める。


「アンタが使ってるタバコに火をつけるヤツ、ライターだっけ?それ貸して。」


「良いけど何に使うんだ?」


 俺がポッケからライターを取り出すとそれをソールはぶんどり、一瞬こっちを睨んだ後ルシウスの方に向き直す。

 そして大きく1度深呼吸をした後、足を肩幅に開き直し、手に持った契約書を広げながら高々に言った。


「我、ブリタニア帝国第一皇女としてここに宣言する。」


 明らかに普段のソールとは違う。

 その立ち振る舞いは皇女そのものであり、普段のチャラけた話し方も、今は威厳と風格ある口調に変わっていた。

 周りの兵達はその様子を見て、全員ソールの方へ向き直した後膝をつき、手に持った武器を地面に置いた。


「この契約書を正式な物と認め、我が名、ソール・A・ブリタニアのもと、書面に書かれた全ての内容を今この瞬間から履行する。」


 ソールが屋敷中に聞こえるような声で宣言すると、手に持った契約書が淡く光り出す。

 それにゆっくりとライターの火を近づけ、炙るようにライターを左右に振った。


「お、おいそんな事したら、」


 俺が止めに入ろうとしたのを、小声で静かに、


「やめなさい。これが契約を成立させる唯一の方法よ。」


 と言い、とうとう契約書に火がついて燃え上がった。

 しかしソールは、燃える契約書を手放そうとはせず、ただ契約書が燃え尽きるまでの数分間、炎で手を燃やし続けた。

もし宜しければブックマークや下の評価ボタン、ご意見ご感想等送っていただけると大変励みになります!

よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ