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副作用

「おいおい冗談だろ?」


 謎の液体を飲み干したアーデルハイトの体が、メキメキと音を立てながら巨大化していく。

 やがて天井まで頭が届き、ついさっきまでデブだった男は筋骨隆々の大男へ姿を変えた。


「悪くない気分だ。さぁ、契約書を返してもらおうか。」


 アーデルハイトは俺を見下ろし、全身の感触を確かめながらこちらに手を伸ばしている。


「ノブナガ、何が起こったかわかるか?」


「単純に考えれば薬物投与による異常な筋力の向上だろうな。ただ、死後も様々な冒険者を見てきたが、薬1つで見た目がここまで変わるのは我も見るのは初めてだ。可能性があるとするならば……。」


 まで言いかけた時、アーデルハイトの腕が俺と、レインの体のノブナガに伸びる。

 俺達はそれをサッと躱し、ノブナガは続けて言った。


「霊薬エリクシールか。」


 その言葉を聞いて俺は驚愕した。


「マジか!?」


「もちろん本物では無いだろう。だがさっきの薬を飲んだ時から、あの男の体内の魔力量が飛躍的に上がった。まるで魔力そのものを飲み込んだかのようにな。」


 さっきの一撃でアーデルハイトの腕が壁を貫通して抜けなくなっている。

 それを横目に俺は一旦落ち着くためにタバコに火をつけ、アーデルハイトの顔面に向けて副流煙を吹いてやった。


「ケホッケホッ!!何だこれは!!やめろ!!」


 アーデルハイトは夢中で顔の前で腕を振る。

 その反動で壁に刺さっていた腕は抜かれ、奥にあったもぬけの殻の牢屋が姿を現した。


「……おい。俺の女共はどうした?」


「あ!!俺知ってますよアーデルハイトさん!!何処かの喫煙者が全部の檻の鉄格子破壊して回ってたみたいです!!これから俺の奴隷になるのに酷い奴も居たもんですよ!!」


 俺は腕を組みながらうんうんと頷いてみせる。

 ノブナガはそんな俺に冷ややかな目線を送っていた。

 反面アーデルハイトは怒りに満ちた目で俺を睨みつけ、また俺に殴りかかってきた。


「1番近い牢の女共はこれから調教と選別をする予定だったんだ!!俺の物に手を出しやがって!!絶対生きてここからは出さんぞ!!」


「おー怖。」


 アーデルハイトの拳は接近戦の経験が薄いからか、やたらと直線的で単調だ。

 当たれば危険だろうが、今の俺にその拳が届くことは無い。

 俺はアーデルハイトの拳をひたすら躱し、時折煽りながら一定の距離を保ち続ける。


 変化が表れだしたのは本当に突然だった。

 段々とアーデルハイトの拳から力が抜けていき、その表情が今にも泣きそうな子供のように変わっていく。


「なんであたらないんだよぅ!!なんでよけるんだよぅ!!ぼくなにかわるいことした?」


「な、何だ!?」


 短時間のあまりの変貌ぶりに、さすがの俺もたじろいだ。

 明らかに精神的に幼くなっている。

 大の男が赤子のように泣き喚きながら襲いかかってくる姿は、色んな意味で怖い。


「恐らく、さっきの薬の副作用だろうな。」


 ノブナガが遠目で冷静に観察し、導き出された答えだった。

 やがてアーデルハイトは泣き疲れたのか床に座り込み、親指を咥え始める。


「体力は肉体に、魔力は精神に強く影響する。さっきこいつが飲んだ薬は肉体を大きく強化する代わりに精神を幼児退行させたんだろう。」


「薬物なんてやるもんじゃねぇな。」


「タバコ吸いまくってるお前が言うか。」


「タバコは草ではあるけど薬物じゃねぇよ!!」


 俺達が喧嘩している声が煩かったのか、アーデルハイトが不機嫌そうにこちらを見つめ、こちらに腕を伸ばしてくる。

 流石に近寄り過ぎたか。

 バックステップで俺は回避しようとしたが、アーデルハイトの腕が歪に1段階伸び、俺の足を掴まれた。


「つかまえた!!」

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