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再会と依頼

 グリフォン討伐の依頼主の家の前。

 ルシウスとソールが来れないので、俺はレインと2人、門の前でしゃがみながらタバコを吸っていた。

 かなり大きな家だ。

 ルシウスが言うには転々と土地を持っている地主らしく、そのうちの土地の1つがグリフォンに襲われたのだろうという事だった。

 もう1組が着き次第話をするという約束で家の門の前で待たされている。


「遅れて申し訳ありません……。ん?」


「いや、タバコを1本吸った程度だからそんなに待って……。ん?」


 ……鎧に身を包んだ男。

 大柄の獣人。

 魔法使いの女。

 付属品。


「もう1組ってお前らかよ……」


「まさか一成さんだったとは……」


「俺は匂いで気付いてたよ。」


 昨日ボコボコにした手前、気まずい雰囲気の中、屋敷の門から執事服の年配の男性がしっかりとした足取りでこちらに近付いてくる。


「お集まりのようですね。主人がお待ちです。」


 右手を前にしながらゆっくりとお辞儀をした後、内側から鉄格子の扉を開けて屋敷に招き入れてくれた。


「ああいうの初めて見るな。」


「冒険者の仕事で報酬が多い依頼は大抵このような方ですよ。」


 ランスが屋敷を歩きながら答えてくれる。

 コイツの対応は紳士的だ。

 ブルは俺を確認した途端小さくなってるし、他の2人も苦い表情をしていたので、まともに話せるのはコイツくらいか。


「レイン、段差があるぞ。」


「あ、ありがとうございます。」


 杖を持ってきてはいるが、こういう小さい段差は気付きにくく、レインはたまに転ぶ。

 そういう時はレインの手を取り、ゆっくりと先導してやるのがとりあえず今できる俺の目としての仕事だ。

 俺のそんな様子を後ろから見て冒険者4人は驚愕している。


「い、一成さんがあんなに優しいなんて……」


「信じられねぇ……」


 しっかり聞こえてるぞ。

 昨日初めて会ったほぼ初対面の人間に対して失礼極まりないな。


「お前ら一体俺をなんだと思ってんだ。」


「悪魔かと。」


「今すぐ全員地獄に送ってやろうか。」


 こいつら全員即答しやがった。

 空いている手でタバコに火をつけ4人を睨むと、4人とも目を逸らしたので後でがっつり叱りつけておこうと思う。



 屋敷はかなり広く、依頼主がいる部屋までにタバコが半分吸い終わった。

 執事が部屋の前で立ち止まり、ノックをする。


「御主人様。依頼を受けてくださった方々がお見えです。」


 すると部屋の中から「入れ。」という命令口調の声が聞こえてきた。

 執事がゆっくりと部屋の扉を開けると、部屋の真ん中に大きな長机があり、その最奥で依頼主と思われる男が、書類に印を押しては次の書類に目を通しを繰り返していた。


「失礼致します。」


 執事の声とともに俺たちは部屋の中へ招き入れられる。

 依頼主は肥満体型の男で威厳があるようには見えない。

 宝石類を身にまとい、ハッキリ言って俺の嫌いな人種である。

 俺達が部屋に入ってもこちらを見ることはせず、仕事に集中しているようだ。


「こんな形で失礼するよ。私はアーデルハイト。君たちの依頼人だ。報酬は依頼書通り2頭討伐で1人頭10万。詳しくはそこの執事に聞きなさい。」


 要件だけを伝え後は人任せか。

 気に入らねぇ奴だと喉元まで出かかったがその言葉を飲み込んだ。

 金を出してくれるなら別に良い。


「それでは皆さん、こちらへどうぞ。」


 執事がそう言って隣の部屋へ案内する。

 ……こういうの、思うんだけど二度手間じゃね?


「一応依頼を受けた人間の顔を見ておきたいという依頼者の心情だったんですよ。」


 どうやら面倒臭そうな顔をしているのがランスにバレたようで、小声で俺に説明してくれた。

 とは言っても一度もこっち見てなかったけどなアイツ。


 隣の部屋に入ると人数分の椅子が置かれていて、俺達はそこに腰掛けた。

 全員座ったのを確認すると、執事は依頼の詳細な内容を語り出す。


「皆様に討伐して頂くグリフォンは、帝国領土内の農村を壊滅させ、大きな被害を出しております。生存者の証言で、1頭は片目にキズがあり、もう1頭は片翼を半分失っているそうです。」


 俺は咥えていたタバコの火を靴の裏で消し、吸殻をゴミ箱に捨てた後、次のタバコに火をつける。

 あまりに堂々とした態度に冒険者4人が目を丸くしている中、執事は続ける。


「先程御主人様からもお話があった通り、討伐してくださった折にはおひとりにつき10万の報酬を約束いたします。但し、グリフォンを2頭とも討伐し、生存、帰還することが条件でございます。」


「討伐確認と死体はどう致しますか?」


 ランスが丁寧に質問する。

 こういう時は経験者に任せるのが吉だろうから俺は面倒だし、分からなければ後でランスに聞こうと思っている。


「グリフォンの素材は希少価値の高いものが多いので、持ち帰って欲しいとのことです。討伐後はこちらのロールを使って頂ければ直ぐに配送の手配を致します。」


 そう言って執事は筒状にされ、紐で結ばれた和紙のような紙をランスに手渡す。

 ランスはそれを見て少し驚いた様子だったが、その紙をポーチにしまって、了解の合図として頷いた。


「もう一点。皆様の中で死者が出た場合はその分だけ報酬は引かせていただきます。これは冒険者同士の争いを避けるための規則ですので悪しからず。」


「かしこまりました。期限はお決まりですか?」


「早ければ早いほど良いですが、最長1週間を目処にロールが確認できない場合、依頼放棄と見なします。その時はたとえ討伐を達成してくださっていても報酬はお渡しできません。」


「1週間か……。グリフォン2頭討伐にしては短いな……。」


 ランスは少し悩みながら呟く。


「3日で終わらせて帰ってきてやるよ。」


 俺がタバコを吸いながら発言すると、その場にいたレインを除く全員が驚愕していた。

 俺には時間が無いんだ。

 次の仕事が待ってるからな。

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