紹介された仕事
「だいぶ時間食っちまったが仕事探すか……」
「やる気はあるようですね。」
「あのワイバーンの依頼が1番手っ取り早いんだがな。」
俺たちはロビーに戻り、受付の順番待ちをしている。
忙しいのか結構待たされているが、人の出入りは激しいのでそろそろ順番が回ってくるかとは思う。
「そういえば、お前でも人の恨みを買うような事があるんだな。」
「隊長になって決して長い方ではありませんが、ハッキリ言って救えた命より救えなかった命の方が多いですよ。仕事柄仕方ないと割り切るしかありませんがね。」
真剣な表情でルシウスはそう語った。
思うに討伐隊に回ってくる仕事は本当に緊急事態なんだろう。
つまりルシウスの手に生きるも死ぬも委ねられた状況という事だ。
コイツが少しでも判断を間違えば冒険者4人のような人間が生まれ、その分だけ人の恨みを背負って生きていかなければならない。
気が狂いそうな仕事だな。
「一成さーん。」
受付が気だるそうに俺の名前を呼ぶ。
はぁ……仕事したくねぇな……
「お待たせしました。実績から紹介できる仕事はこの辺りですかね。」
そう言って受付の女性は3枚の紙を出してくるが、読めん。
ルシウスに読んでもらうと、
「まず1枚目。これはまぁ、言わずもがな討伐依頼ですね。グリフォン2頭で10万のお仕事です。」
「前回戦った時かなり命がけだったヤツを2頭で10万かよ。命が軽いな。」
「次に2枚目。街の清掃業務ですか。これなら魔法が使えなくてもできそうではあります。日当1万。」
「悪くは無いが50万稼ぐのに1ヶ月じゃ無理だな。」
「最後に3枚目。商人の手伝いですか。いわゆる店番ですね。給料は……歩合制?この手の仕事で珍しいですね。」
店番で歩合制って、売上の何%か貰える奴か?
そんな気前の良い商人いるか普通。
悩んでいると後ろからソールが現れる。
契約書を絶対全部読んでないのに無表情で全てにサインした後、とんでもないことを言い出した。
「面倒臭いから全部やるわ。」
「はぁ!?」
「どうせ暇なんだからどうにかなるでしょ。」
サインした契約書はヒラヒラとどこかへ飛んでいく。
捕まえようとすると契約書に触れた途端俺の手が弾かれた。
「一度サインした契約書は依頼主の元へ飛んでいきます。つまりもうキャンセルすることはできませんよ。」
受付の女性がご丁寧に説明してくださる。
「いや、俺が書いたわけじゃないんだけど!?」
「その点は大丈夫よ。ちゃんとあんたの名前で書いておいたから。」
俺は頭を抱えながら止めることの出来ない契約書を見送る。
ルシウスも哀れみの目を俺に向けている。
「これ、契約書のコピーなので目を通しておいてください。」
「あんたは淡々と仕事をこなすな!!」
「あの、怖いんでやめて貰っていいですか?怒鳴るの。」
「あ、ごめんなさい。」
かくして俺は3つの仕事をいきなり掛け持ちですることになった。
時間的に多分不可能なんだけどね……
「1枚目の討伐依頼が1番早くて明日ですね。2枚目は5日後、3枚目は来週なのでまだ少し時間があります。」
宿屋に戻り、皆で契約書の再確認をする。
俺は文字が読めないので殆どルシウスがスケジュールを組んでくれたんだが、
「奇跡的にスケジュール組めちゃったんだな……」
「グリフォンの討伐をおよそ3日で終わらせるとかいう頭の悪い計算ですけどね。」
ルシウス曰く、普通ああいう大型の魔物は持久戦に持ち込み、安全な位置から相手を弱らせて仕留めるそうだ。
あの時ルシウスは完全に意表を突けたうえ、かなり弱っている状況だったから一瞬で仕留めることが出来ただけで、討伐隊でも安全に仕留めるには1週間程かける魔物らしい。
「ていうか出現場所まで徒歩で1日かかるので実質1日でグリフォン2頭討伐しなきゃ行けませんよ。」
「流石にお前も手伝えよ?」
「手伝いたいのは山々なんですがね、私は通常業務がまだ残っているので今回は無理です。」
「お前のとこのアホ巫女のせいでこうなったんだろうが!!」
アホ巫女を指さしながら怒鳴ると、ソールは悪びれる様子もなく逆ギレしてきた。
「こうしないと50万の借金1ヶ月で返せないでしょうが!!あんたの為を思っての判断よ!!」
睨みを効かせながらお互い言い合っているとルシウスが仲裁に入る。
ちなみにレインさんはこの時、俺とソールの間に挟まれながら手慣れたご様子で、声を張り上げている方の耳を片手で塞ぎつつ、ルームサービスで頼んだパスタを器用に食べていました。
「まぁまぁ2人とも。今回の依頼、もう1組参加するようですし彼らの実力に賭けましょう。この手の大型の魔物の討伐依頼を紹介される位ですから弱いパーティでは無いはずですよ。」
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