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冒険者

「えげつない事なさいますね。」


「殴られた人間の痛みを知るには丁度良いだろ。」


 俺達はブルの叫び声が響き渡る中、もう一度職安に入りベンチで一息ついていた。

 ただ今回の一番の被害者はレインだろう。

 耳を塞いでもレインの聴力なら叫び続けるブルの声は暫く耳から離れない。

 それにレインは戦いを止めたかったのに結局俺が耐えきれなくて手を出してしまった。

 大人として色々と反省しなければならんな。


「レイン、すまなかった。」


「本当です。反省してください。」


「本当ですよ。反省してください。」


「本当よ。反省しなさい。」


「ソール、ルシウス、お前らはそれを言う資格はねぇぞ。」


 止めたのはレインただ1人だっただろう。お前らは賛同して止めもしなかったじゃねぇか。

 重い空気の中時間が只々過ぎていき、いつの間にか5分が経った。

 俺達はいい加減耳障りになってきた男の元へ叫び声を止めに行く。



 ブルは大通りのど真ん中に3人に囲まれながら仰向けで寝そべっていた。

 往来する人々は不思議そうな、憐れむような視線を送り、その人々が歩く振動だけで激痛が走って叫んでいる。

 痛みで体が動けばさらなる激痛。全てを憎み、恨みたくなるような5分間だっただろう。


「レイン、すまないが回復してやってくれないか?」


「分かりました。」


 レインが手をかざすとさっきまでの苦痛に満ちた表情が嘘のように穏やかになっていく。


「アンタ、すげぇな……。ありがとう。」


 ブルが振り絞ったようにレインに礼を言うとレインも嬉しそうに頷いた。


「起き上がれるか?」


「生憎だが、身体が動かせねぇ。痛みは完全に引いたんだがな。」


「普通はそうよ。レインの回復魔法は相手の魔力に自分の莫大な魔力を無理矢理干渉させて傷を再生させてるの。相手の体に今流れている魔力のほとんどはレインの魔力だから思うように動かせなくて当然よ。」


 そこまで聞くと疑問符が頭の上に浮かぶ。


「あれ?俺は?」


「わかんないわよ。アンタは全てが異常なの。いい加減そこのところ、理解しなさい。」


 指を刺されながら文句を言われた。

 単純に考えれば何度も回復されているうちに耐性がついたとかそんなところか?

 最初から割と平気だった気もするが。


「本当にありがとうございました。」


 ランスが深々と頭を下げる。


「そんなに気にしなくていい。イラッとはしたが命まで取る事じゃないしな。」


「器のでけぇ人だ。完敗だよ。」


 ブルが涙を流しながら俺を見ている。

 涙を流して感動するほど器デカイか?何なら一回殺そうとしたけどな俺。

 そしてランスは頭を下げたまま本音を口にした。


「正直に言って、ブルが負けるとは思っていませんでした。またいつものように喧嘩になって、ブルが勝って俺達が諌めるだろうと思っていました。」


「ルシウスを見た時点で多少は考えるべきだったな。」


「その通りです。でも普通、冒険者同士で戦いに負ければ身ぐるみを剥がされ、男は殺され女は嬲られ売られる運命です。相手があなた方で本当に良かった。」


 日常的に非人道的な危ない橋渡ってんじゃねぇ。

 そうなる可能性があるって分かってるならまずやるんじゃねぇよ。

 まぁ恐らくそれだけブルの強さが信頼されていたんだろうけどな。


「これに懲りたらもう誰彼構わず喧嘩を売るのはやめろよ。」


 俺はブルの目を見て真剣に言った。

 しかしブルは空を見つめ、頷こうとはしなかった。他の3人もまた然り。

 ゆっくりとした時が流れ、魔法使いの女が口を開いた。


「一成さんって言ったかい?冒険者の中ではね、これは通過儀礼なんだよ。みんな同じ事をされて、負けて、アタシたちは運良く生き延びてきただけなんだ。」


 どうやら負けたのは今回が初めてでは無いようだ。


「こうして多少荒っぽくても強さと名を知らしめておかないと旅の途中で同業者に襲われるのなんて日常茶飯事なんだよ。基本的に依頼の内容は筒抜けだからね。」


「山賊まがいな連中だな。あと筒抜けってのはどういう事だ?」


 その疑問に答えたのはルシウスだった。


「山賊まがいではなく元山賊や元盗賊も冒険者になるんですよ。そして筒抜けの理由は後続で出立する人や救援がしやすいようにです。」


「何が救援なもんか。あんなの横取りと口減らしだよ。」


 最年少であろう聖職者の少年が呟く。

 気になる言い方だ。それにルシウスに対しては少し当たりが強い気がする。

 4人の視線も少しキツイ。コイツら過去に何かあったのか?

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