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職安

 翌朝ルシウスとソール(またワガママ言ってついて来ただけ)が宿の前まで迎えに来た。

 レインを1人にしておく訳にもいかないが、仕事してる所をあまり見せたくは無い。

 結果、一緒に行きたいとごねるのもあって渋々了承。

 ソールがレインの良い話し相手になってくれていて、目の見えないレインを先導し、手を繋ぎながら談笑してくれている。


「ん?ここか?」


「そうです。ちょっと私1人では紹介できる仕事が殆ど隊に送られてきた討伐依頼しかなくて決められなかったので、まずは職安です。」


 異世界で職安に行くとは思わなかったぞ。

 面構えが割とご立派で、冒険者らしき人間達が出入りしているのが見える。


「冒険者達はただ旅をしていてもお金に困るので、ここで討伐依頼や運搬依頼等を紹介してもらうんですよ。帝国領土内の各街に職安はあるので道すがら依頼をこなすって感じですね。」


「あー、ゲームのクエストみたいなもんか。」


 掲示板のようなボードに、古紙に手書きで何かが書かれている。マジで読めない。

 一応数字だけは読めるが額が低すぎるな。


「そういうのって命懸けの割に大した金額にはならないですし、危険度の高い依頼は帝国軍に回されるのでここで出されてるのはその日の宿代を稼ぐ位の依頼ですよ。」


 確かにそう思う。

 だが1枚だけやたら金額の高い依頼書がある。


「おいルシウス。これは?」


 その依頼書をボードから剥がした瞬間、周りの人間達が驚きの声をあげ、ヒソヒソと話し始めた。

 報酬金額100万。借金完済&1ヶ月泊まるだけの金が手に入る。

 ルシウスは依頼書を見た途端顔が青ざめ、そっと依頼書をボードに戻した。


「一成さん。今のはつがいのワイバーンの討伐依頼です。この時期のワイバーンは卵を産み、それを孵す為に本来あまり動かないから帝国軍まで上がっていない依頼だったんですよ。つまり、普通の人間が受ける依頼じゃありません。」


「でも領土内で危険なんだろ?」


「領土内と言っても場所が人里離れた山ですし、近寄らなければ今のところはむしろ安全です。恐らく依頼者は……」


 までルシウスが言いかけた時、職安の扉が乱雑に開く。

 甲冑を固めた騎士のような男と魔法使いのような格好をした肌の露出が多い女性、粗暴そうな獣人族の大男に小さくなっている聖職者の少年と、いかにもRPGのパーティみたいなのが現れた。

 大きな音に驚き、離れた椅子に座っていたレインが持っていた飲み物を落としてコップを割ってしまっている。


「あんなのも居るんだな。」


「あれはこの辺りで1番有名なパーティですね。討伐依頼等をこなして生活している方達です。」


 ボードの前で俺とルシウスが話してると、彼らはズカズカと俺たちの後ろに立ち、獣人族の男が俺の肩を乱暴に掴んできた。


「おい。どけ。」


 そのままどかそうとするも、タバコを吸って踏ん張っていたせいか、俺の体はビクともしなかった様だ。


「順番守っていただけますか?」


 接客スマイルで獣人族の男を見る。と同時に俺の顔面にそいつの拳が飛んできた。

 そんなことだろうと警戒していたので男の拳を掴み、そのまま受け流して投げ、相手を転ばせる。

 その後、タバコをひと吸いしたあと呆然としている相手に、トドメを刺そうと相手に跨り拳を振り上げた所でルシウスが俺の拳を握り、ストップが入った。


「一成さん。それやったら建物が消し飛びます。」


「ああそうか。すまん。」


 ルシウスの方に顔を向けた瞬間、寝ながらでも重く鋭い拳が俺の顔にヒットし、俺はドアを突き破り、店外まで吹き飛ばされた。


「ッの野郎……」


 寝ながらにしてあの威力の攻撃が出来るのか。

 吹き飛んだ割に痛みはそれほど無く、口の中が切れた程度だった。


「一成さん!!大丈夫ですか!?」


 レインがすぐに駆け寄ってきて、俺の傷の手当をする。

 そうしている間に俺を殴った男も立ち上がり、こちらに寄っていているのが見えた。

 その肩をルシウスが止める。


「その辺にしといた方が良いですよ?」


「ん?てめぇ臆病者の剣聖じゃねぇか。離せ。」


 そう言われてルシウスはそっと掴んでいた手を緩める。

 離せと言われて素直に離す辺りがルシウスらしい。


「そこまでだブル。止めろ。」


「指図は聞かねぇよランス。火をつけたのはアイツだ。」


「はぁ……。好きにしろ。」


 今度は騎士のような男が止めに入るも、ブルと呼ばれた大男は止まる気配がない。真っ直ぐこちらに向かってきている。


「ルシウスー!!建物壊さなければ良い?」


「構いませんが殺しはナシです!!一応優秀な人材なので!!」


「難しい注文するな……」


「一成!!殺っちゃいなさい!!」


 ソールが壊れた扉の影からひょっこりとこちらを見ている。

 親指を立て、首を掻く動作をした後、ルシウスにマジでやめなさいと止められていた。

 みんなを守る巫女様がそれで良いのかおい。

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