束の間の日常へ
「ふぁああ……」
背中と手を伸ばしながら立ち上がり、ルシウスが珍しく欠伸をする。
流石に外はもう明るくなっており、鳥達のさえずりが聞こえていた。
「長話で流石に俺も眠いな……」
「むしろエクスと戦った後、襲撃者撃退してなんでまだ起きてられるのか不思議なくらいよ。」
長い1日だった。ていうか日を跨いでるから2日か。
タバコを吸ってないと意識が保てない。
やべぇ、昨日起きてから2箱吸ってるぞ。
いや、起きてる時間考えたらちょっと少ない方か。
「俺もいい加減帰るよ。色々話してくれて、ありがとうな。」
「今回の件もあり、準備にまだ時間がかかりそうなので本格的に旅立つのは1ヶ月後になります。それまでは宿で大人しくしていてください。」
「あたしもたまに遊びに行くから綺麗にしといてね!!」
「貴女は暫く謹慎ですよ?」
「えー!!私もレインと遊びたい!!」
痴話喧嘩は俺が帰った後やってくれ……。
帰り道、レインに何か土産をと思い、売店で例の中華まんを買って帰った。
部屋に着くとレインはまだ寝ていたが、自分の分の中華まんを隣でタバコに火をつけながら食っていると、寝起きとは思えない視線を中華まんに送りながら起き上がった。
コイツ、目見えてないんだよな?何で食い物だけそんなに正確にわかるんだよ。
「買ってきたは良いが寝起きに中華まんはちょっと重たいか?」
「いえ、イケます。」
ハッキリとした返答でした。
中華まんをレインに手渡すと、1口頬張って顔を輝かせながら堪能している。
その後も1口食べる事にいちいちリアクションを取りながらあっという間に1つを食べきった。
「これも食うか?」
俺が半分だけ食べた中華まんをレインに差し出すと、少し照れながら「い、いいんですか?」と、目を輝かせて受け取った。
「起きたところすまんが俺はこれから寝るよ。」
「はひ!!ほはふひなはひ!!」(はい!!おやすみなさい!!)
「ああ。おやすみ。」
まだ横で頬張って幸せそうにしているレインを見ながら俺はゆっくりと眠りについた。
「あいつまだ寝てるの?」
「疲れていたんだと思います。見た目よりずっと。」
一成が寝てから丸1日経とうとしていた。
レインとソールは街のレストランで食事をとったあと、昼から飯屋2軒目に行こうとするレインをソールが何とかカフェに押しとどめ、そこでコーヒーブレイクしていた。
「それにしてもレイン、良く食べるわねぇ……」
目を丸くして頬杖しながらソールは呟いている。
ちなみにレインは1軒目で男性用の量を2人前平らげたあと、カフェでドリンクと大盛りのパフェを頼んでほぼ平らげていた。
頬張った大きなひと口を飲み込んだ後、恥ずかしそうに答える。
「今まで自分で作るものって味のしない物ばかりだったので、なんでも美味しくって、つい……」
「良いの良いの。アンタが食べてるところ見るとなんだかこっちも幸せになるわ。」
「えへへ……」
「ちなみにほっぺにクリーム着いてるわよ?」
「ふぇ!?」
「はいはい、動かないで。」
ソールはレインの頬に付いたクリームをティッシュで優しく拭い、恥ずかしそうにお礼を言うレインを優しい眼差しで見つめながら、
「妹ができたみたい……」
と、思わず呟いた。
「ソール!!またこんな所に!!」
「ゲッ!!ルシウス!!」
カフェの扉を勢い良く開け、ルシウスが2人の前に現れる。
珍しく私服で鎧や武器を纏っていない。
どうやら戦闘があった日から働き詰めだったので、1日休暇をと部下にまくし立てられたようだ。
「貴方は謹慎だと言ったはずですよ!!また城を抜け出して!!」
「良いじゃないの。今昼間だし遅くならないうちに帰るわ。」
飄々とした態度のソールにため息をついた後呆れながら隣に座り、コーヒーを1つ頼んでナチュラルに女子会に参加するルシウス。
周りの客達は剣聖と巫女が並んで座っている姿を見て引き締まった表情をしている。
「さっきまで私だってバレてなかったのに……」
「監視のためです。」
「んー、まぁ良いけどね。」
ソールはなんだかんだ嬉しそうにルシウスを見つめている。
そんな2人の心音の違いを感じながらレインはふと一成の事を思い出していた。
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