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太陽のような巫女

 その後開発部隊の数名が到着してジークの怒りも収まり事なきを得た。あのレベルの戦いを見たくなかったと言えば嘘になるが、多分やり合ってたら現場が粉々に消し飛んでただろう(ルシウス談)。


 ジークの部隊でもラックの話以上の情報は出てこなかったようだ。

 暗部が関わると毎度こういう結末になるからほとんどの部隊は暗部を嫌っているらしい。

 ただ、橋前を護衛していた兵士の死体が現場から出てきて、無事に遺族の元へ届けられたようだ。

 防衛隊の新人2人だっただけに、ジークはかなり落ち込んだ様子だった。


 俺はその後レインを連れて宿に戻った。

 レインはかなり疲れていたようで、部屋に着くなり気を失うように眠った。

 その寝顔は嬉しそうに笑ったかと思うと苦しそうにもがいたり、夢の中で忙しそうだ。

 時折うわ言のように俺の名前を呼ぶので頭を撫でてやると安心したようにぐっすりと眠った。

 俺の方はというと、やたら目が冴えてしまっていたので頃合を見て城へ戻りルシウスの元へ。

 外は少し白んでいた。


 ルシウスはルシウスで俺が壊した橋の修理の手配や被害状況の確認で大忙しのようだ。

 城門の壊れた橋の前、防衛隊だけでは手が回らず、駆り出された討伐隊の人間達に指示を出しているルシウスが居た。


「おいルシウス。ちょっと良いか?」


「あ、一成さん良いところに。ちょうど手が空きそうなのでちょっと隊長室で待っててください。」




「んで、来たは良いものの……」


 隊長室にはソールが居た。

 パタパタと部屋を掃除したり、資料を整理したり。

 たまに蹴つまづいて持っている書類を落としたりしていて、いつもの感じでは無さそうだ。

 ついさっきまで敵に拉致られてたはずだがな、こいつ。


「なーにやってんだ?」


「ああ、一成じゃない。ちょっと手伝って。上の棚に手が届かないのよ。」


「ほい。」


「あんがと。」


「じゃなくてなんでお前こんなとこにいんだよ。」


 ソールはビクッとした後、頭を掻きながら答えた。


「あたしのせいであれだけ街に被害が出たし、みんな怪我したりしたのよ?当事者のあたしがじっとしていられないのよ……」


 ああ、コイツのこの落ち込みようは責任感が強いという言葉で片付けて良い問題では無さそうだな。

 こいつは目的を曲げちゃいけない。

 誰かを頼り、誰かを犠牲にして世界を救う立場に居る人間なんだから、この程度のことで目的を見失っちゃいけないんだ。

 誰かの犠牲の度に責任を感じていては世界なんて救えるはずがない。

 小を切り捨ててでも大を得なければならない事がこの先必ずある。

 残念だがそれがコイツの道なんだ。


 タバコを咥えた後、火をつけようとしてライターが無いことに改めて気付き、火のついていないタバコを咥えたまま俺は話した。


「今回の件はお前のせいじゃない。そしてお前はこれ以上絶対に誰かに謝っちゃいけない。そういう道をお前は歩かされてるんだ。覚悟を決めろ。それがお前が選んだ道ならな。」


「あたしの選んだ道……」


 ソールは泣きそうになりながら縋りつくように俺の服を握りしめ、小さく言った。


「じゃあ……あたしはどうしたら良いの……?」


「謝るんじゃなく、感謝するんだ。犠牲になってくれた人間に。自分を守ってくれた人間達に。みんながお前が世界を救うと信じているからこそ、謝罪は世界が救えなかったその時にだけしろ。」


「わ……分かったわ……でも!!」


 珍しく大人しく言うことを聞いていると思っていた俺が間違いだった。


「こんなクヨクヨしてるのあたしらしくないからやっぱりみんなを手伝うわ!!」


 机の上に登り、またいつものように腰に手を当てながら堂々と宣言してきた。

 本当にこいつは太陽の様な奴だ。そんな生き方俺もしてみたかったよ。


「ああ……なんか、お前はそれで良い気がしてきたよ。てか机降りろ。」


「折角だからあんたに最初に言ってあげるわ。」


「何をだよ?」


「あ……ありが……」


 何言ってるか聞こえん。

 首を傾げ腕を組む俺の耳元まで顔を赤面しながら寄せた後、


「……んんー!!ありがとうって言ったのよ!!」


 右耳から左耳まで突き抜けるソールの声。

 半分言ってること分かんなかったし、しばらくキーンという音しか聞こえん。


「てめぇ!!今のは謝罪しろ!!」


「あんたがしなくていいって言ったんじゃない。」


「取り消し取り消し!!」


 ニヤニヤしながら机の上にしゃがみ込むソールにはいつもの表情が戻っていた。

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