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救出

 行き止まりかと思えた路地は魔法で隠されており、その先には古びた建物があった。

 多分俺一人なら見失っていたはずだ。魔法にはこんな使い方もあるのかと感心した。


 建物の前でレインを下ろし、中を確認する。

 中では数人が慌ただしく走りまわったり、虫眼鏡のようなもので何かの痕跡を探したりと大忙しだ。

 そんな中、他の人間たちに囲まれながらも一際目立つ存在が立っている。彼は俺達を見つけるなり周りの人間に指示を出し、こちらへ歩み寄ってきた。


「おー、来たかルシ坊。」


「状況はどうですか、ジークさん。」


 髭面にポッケに手を入れたロングコート、気だるそうな佇まいだが鋭い目つき。

 見れば見るほど中世ヨーロッパ辺りの刑事って感じだ。

 防衛隊というのは警察のような事をする部隊なのか。


「どうもこうもねぇよ。先に着いた暗部の連中が好き勝手したせいで人っ子一人残っちゃいねぇ。」


「ソールは無事なんですか!?」


 ここまで慌てた顔のルシウスは初めて見る。

 それだけ心配だったんだろう。ソールのことになると何だかんだ分かりやすい奴である。


「思ったより中が下に広くてな。嬢ちゃんが発見されたのはついさっきだ。会ってやれ。」


 そう言ってジークは建物の中を指さした。

 いの一番にルシウスが駆け込み、それに続くように俺とレインが中に入る。


 ……?

 暗部の女はいつの間にやら姿を消していた。



「ごめん、あたし……」


 流石に怖かったのか、女性警官(?)に連れられて暗がりに佇むソールは萎らしくなっていた。

 帝国内で皇帝の娘が堂々と攫われるなんて誰も考えて無かっただろう。それはもちろん本人もだ。


「怪我は!?痛いところはないか!?何かされてないか!?」


 ルシウスが過保護な親のようにソールの周りをぺたぺた触りながら回っている。

 流石にソールも恥ずかしかったのか、ぷるぷる震えて赤面しながら


「どこ触ってんのよ!!」


 と、ルシウスに平手打ちをしようとした。

 しかしその手を止められ、


「本当に無事で良かった。」


 と、言われた時、ソールはルシウスに抱きつき、大声で泣き出した。

 横を見るとソールの無事な声を聞いて、レインも貰い泣きしていた。



「ルシウス。一旦外に出よう。」


 レインを見た時目の端に写った光景。防衛隊達が片付けていたもの。暗がりで気付かなかったが、それはエルフたちの惨殺された死体だった。

 殆どが首を鋭利な刃物で切られている。

 人によっては首の骨を折られ、あらぬ方向に曲がっていた。

 流石に俺も吐きそうになったが、胃から込み上げてくるものを何とか飲み込んだ。


「分かりました。」


 ルシウスは気付いていたようで、静かに返事をした後、ソールの手を引き外へと連れ出す。

 出入口のドアにはジークがもたれながら立って、声をかけてきた。


「残念だが奴らの目的はわからず終いだ。1人でも残しておいてくれたら良かったんだがな。暗部の連中は容赦がねぇよ。」


「全員、ですか。」


 ルシウスは納得出来ていないようだが、俺はあることを思い出した。


「おい、ラックも一緒に来てたんじゃないのか?」


「そうだ!!ラックは何処に!?」


「あー、あの獣人の嬢ちゃんか?ほれ。」


 ジークが視線を送った先には建物の外、木の横に体育座りで顔を伏せているラックの姿があった。


「あんな現場を見ちまったからか何にも喋らねぇんだよ。俺達が到着した時には建物の中、血塗れで1人呆然と立ち尽くしてたからな。」


「だろうな。」


 そこそこ歳いった俺ですら吐きかけるほどの惨劇だ。多分20歳にもなっていないであろう少女には酷すぎる。

 そう思いながらタバコを咥えポケットのライターを取り出して火を……


 火を……


 つかねぇ……


 おいこれは死活問題じゃねぇか?


「兄ちゃん火が欲しいのか?」


 そう言って隣の優しい人が親指と人差し指を擦ると、ボッという音と共に小さな火種が生まれ、それで難を逃れた。


「ありがとうございます。」


 お礼を言いながらその人の方を向くとそこには俺のタバコを物欲しそうに見るジークの姿があった。


「それ、なんか、イカしてるな。」


「タバコなんて百害あって一利なしっすよ。」


 そう言いながら空に向かって煙を吐く俺に説得力は皆無だ。


「1本貰えねぇか?」


「ああ、良いっすよ?メンソールっすけど。」


「メンソ……?」


 俺が1本差し出したタバコをその場で部下に複製させてオリジナルの方を口に咥え、さっきと同じように火をつけて……


 ……やっべ!!

 これめっちゃ魔力吸収するんじゃなかったっけ!?

 俺以外が吸ったらどうなるんだ!?

 完全に喫煙所でライター借りてタバコ1本返すノリでやってたわ!!


「あの!!」


「フゥー……どうした?」


 普通に吸えてるな。

 大丈夫なのかな?


「うっ……」


「だ、大丈夫っすか!?」


「うぉっほ!!ゴホッ!!」


 むせただけらしい。


「なかなか渋くて良いじゃねぇかこれ。ありがとうよ。」


「す、吸いすぎには注意っすよ?」


 事なきを得て良かったが、ライターどうすっかな……

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― 新着の感想 ―
[良い点] 登場人物たちの性格や関係性が鮮明に描かれており、特にルシウスとソールや、主人公とジークの関係が印象的でした! [一言] 評価入れさせていただきました。
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