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煙の中の再開

「流石に今回は死んだと思いましたよ一成さん。」


 膝を着いていたルシウスが立ち上がりながらイケメンスマイルをこちらに向ける。


「奇遇だな。俺もだ。」


 座り込んだレインの肩を抱きながら俺も切り返す。


 あの時俺自身も何が起こったのか分からなかった。

 レインに回復を受けた時にはまだ意識があった。

 だが回復を受けても胸と左腕の痛みが全く引かなかった。

 今回ばかりは潮時だと思った時、胸の槍が一瞬で朽ち果て、それと同時に傷口が塞がったのだ。

 見上げるとエルフの女に向かっていくレインが見える。

 止めようにも全身全く動く気配がなく、意識しないと呼吸すら出来なかった。

 分からないのはレインは俺から遠ざかっていくが、ずっと回復され続けていた事。

 狼との戦いで遠隔でも回復をすることができる事は分かっていたが、レインの意識は完全にこちらを向いていなかった。

 煙玉で煙の中に消えていくレインを見送ってもずっと回復され続けている。

 その回復の甲斐あって俺はその頃には少しずつ動けるようになり、最初は腕だけでほふく前進のように、段々と足にも力が入るようになり片足を引きずりながら、最後には普通に歩けるようにまで回復し、2人の前に駆けつけた。

 時間にして約3分程。俺はずっと回復され続けていた。



「一成さん……良かった……」


「レインのおかげだ。本当にありがとう。」


 泣きながら喜ぶレインを見て俺も本当に良かったと思いつつ、肝心の目的を思い出す。

 この頃には周りの煙は晴れ、ベリアルとエルフの女は姿を消していた。

 代わりに膝を着きながら頭を下げている忍者風の女が現れて俺たちに告げた。


「ご報告です。敵のアジトが分かりました。既にジークベルト隊長率いる防衛部隊数名が向かっております。」


「分かった。我々も直ぐに向かう。案内を頼む。」


「畏まりました。」


 なるほどコイツが例の暗部か。


「わ、私も行きます!!」


「ああ。また戦闘があるかもしれないし、レインを置いて行く訳にもいかんからな。」


「いいでしょう、行きましょうか。」


 ルシウスはさっきまで気だるそうだったが、すぐにいつもの調子に戻り、走る準備をしている。どんな体力してんだコイツ。

 かく言う俺もほぼ全快状態。というか多分戦う前より調子が良い。

 1番キツそうなのはレイン。俺に対しては笑顔を見せていたが魔力の消費、吸収を繰り返した時の脱力感は俺が1番知っている。


「レイン、乗れ。」


 俺はしゃがんで背負う体制に入る。

 足の速さから言っても多分これが最善だろう。いや、最前はルシウスに背負ってもらう事だろうが何となくそれは俺が嫌だ。


「え、えっと……」


 レインは恥ずかしがりながら困惑している。


「し、失礼します!!キャッ!!」


 気合を入れて乗り込もうとするが、目が見えないためか足をスカしてそのまま前のめりに倒れ込む。俺は咄嗟に振り返り何とかそれを支えることが出来た。


「先に行きますか?」


 ニヤニヤしながらこちらを見ているルシウスを他所に、そのままレインを肩と膝裏で支えて持ち上げ、いわゆるお姫様抱っこの形で走り出す姿勢をとる。


「あ、あの、一成さん!?」


「いつでも行けるぞ。レイン、肩に手を回せ。落ちるなよ?」


「は、はい……」


 レインはされるがまま、恥ずかしがりながらもしっかり首に手を回してくれる。

 改めて持ち上げて思う。小さく、軽い。

 こんな体で俺が倒すことが出来なかった2人を撤退させたかと思うと本当に脱帽だ。

 そして何よりもうこれ以上そんな女性に辛い思いをさせる訳には行かないと改めて俺は心に決めた。

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