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「さぁ!!どうするルシウス!!」


 このままでは民間人に被害が出る。

 討伐隊隊長としてそんなことは許されない。

 葛藤の中で揺れるルシウスに考える暇などなかった。

 ベリアルは安全地帯に居ることを利用し的確にルシウスを狙ってくる。

 爆発の威力は非常に大きいが、幸いにも【光の剣】を纏ったルシウスの防御を破れるほどではなかった。

 フェイントを入れながら機敏に動き回り、爆発を回避する。

 それでも何発か当たるが、かすり傷程度。

 しかし、それまで機敏に動けていたルシウスの足が止まる。


「な、何だ!?」


 ダメージを受けていないのにルシウスの膝がカクンと落ちる。

 息が苦しい。こんな短時間の戦いで息切れなどするはずがない。

 頭がボーッとし、視界がぼやける。どれだけ息を吸っても肺に空気が入ってこない。


「やっと効いてきたか。」


 ベリアルの魔法は物体や気体を爆弾に変える【爆破】(エクスプロージョン)。

 棒が正位置の場合、棒の先端が触れた物体が爆弾に変わる。

 物体の大きさにより爆破の規模が変わり、単純に大きければ大きいほど大きな威力を発揮する。

 棒が逆位置の場合、任意の位置の空気を圧縮して爆破させる。

 特定の種類の気体のみを爆破することができ、規模によっては周辺の大気の比率を変えることが出来る。

 つまりベリアルはこの時、空気中の酸素のみを大量に爆破し減らしていた。



「はぁ……はぁ……」


 ルシウスは肩で息をしながら地面に手をついている。

 暫くすれば大気の比率はある程度元に戻り、呼吸も出来るようになるのだが、そうはさせまいと四つん這い状態のルシウスをベリアルは爆破し続ける。


「このまま窒息させてやる。」




 もう、考える事が出来なくなってきた。


 討伐隊隊長?剣聖?どうでも良くなってきた。


 全力を出せば倒せない相手じゃないはずだ。


 ただ全開で魔力を剣に乗せて振り下ろせばそれだけで終わる。


 そうすればソールを助けに……ソール?


 そうだ。


 ソールが大切に思っている物を私が壊す訳にはいかない。


 なら、たとえ未完成でも使えるものは使うしかない。




「舐めるな……全部……守ってみせる……」


 決意を込めて絞り出した言葉をベリアルは聞き逃さず、それで良いとばかりに満足気な表情をする。

 しかし、言葉とは裏腹にルシウスの【光の剣】の輝きはゆっくりと収束していった。


「なんだここ迄か。つまらんな。」


 ベリアルがため息混じりに一瞬だけルシウスから目を離す。

 それは瞬きよりも短い時間であり、距離がある分周囲を見渡せるベリアルが、通りの真ん中で四つん這いになり疲れきっていたルシウスを見失うはずがない時間だった。


「……何処だ……?」


 早いなんてものでは無い。

 瞬間移動でも使わないと見失う距離に移動できるはずがない。

 ベリアルは臨戦態勢で棒を構えながら、さっきまでそこに居たはずのルシウスの左右を瞬時に確認するが見当たらない。

 建物の下を覗き込むが、そこでもない。

 となると、


「上か!!」


 建物や城壁よりも高い位置。人の筋力では到底到達出来ないはるか上空。

 先程までの【光の剣】の輝きは消え、まるで風で飛ばされた羽のように、静かにルシウスは居た。


「【空の剣】(シルフィード)。」

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