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裏切り者

「俺は別の世界で死んだ後、この世界に来た転生者である。」


 一行は驚いたが、巫女がそれを諭すように言った。


「貴方は巫女である私にいち早く協力してくださった。とても感謝しております。この世界の人間でない事など関係ありませんよ。」


 巫女と転生者の間には信頼関係があった。

 他の誰よりも互いを信じあっていた。

 しかし、転生者は始まりの地の最後の魔源を収めた後、一行を裏切った。

 巫女の体に宿った世界中の魔力欲しさに最初から巫女を利用し、最後にはさらったのだ。


 転生者は強大な力を持っていた。竜人族達は協力して転生者を倒そうと襲いかかるが、たったひとりの人間に歯が立たなかった。

 一行は同行していた各種族の代表4人と竜人族の族長を除いて全員が転生者に殺されてしまった。

 それは同時に竜人族の滅亡でもあった。


 巫女は生き残った5人に霊薬エリクシールを授け、それを使って転生者は倒され、世界に平和が訪れた。

 エリクシールを生み出した反動で巫女は命を失い、戦いで死んでいった竜人族と共に最果ての地で安らかに眠っているという。



「って言うお話ね。」


 ソールが締めくくるようにそう言った。


「え、最後なんか端折りすぎてないか?」


「この辺りに関して情報がほとんどないのよ。学者の間では意図的に消されてるとも言われてるわ。」


 一応最後にエリクシールの話は出てきたが、何ができるのか全くわからんな。

 あと、生み出せば巫女が死ぬってことはソールの命と引き換えの薬って訳か。

 それをルシウスは知ってるはずだよな……。

 なんでそんな物を俺に渡そうとしてるんだ?


「エリクシールはお前の命と引き換えなのか。」


「何?私の心配?」


 ソールはヘラヘラしながらこっちを見ている。

 よかろう。現実を叩きつけてやろう。


「俺は別にお前がどうなろうが知ったことでは無いが、ルシウスがどうするかだな。」


「あー、そっちね……。」


 ソールは少しガッカリしているようだが、すぐに元の表情に戻った。


「でも実際のところ分からないのよ。コレには命と引き換えって書いてあるけど、文献によっては最後の魔源を収めた時全員の前に現れるだとか、魔源を収めた巫女は必要な時に出すことが出来るだとか、色々説があるみたい。」


 俺が元いた世界でも俺が学校で習っていた事と、今教科書に載っていることに多少の違いがあるらしいからな。


「なんて言うのか……悲しい物語ですね。」


 一緒に話を聞いていたレインがゆっくりと口を開いた。


「最初から一緒に居てくれた方が最後には裏切るなんて。」


「俺もそう思うが、人間てのはそんなもんなんじゃ……?」


 そこで俺に疑問符が浮かぶ。

 最初から巫女を利用していた……?

 仮に俺と同じ世界から来ていたのだとしたら、俺の世界に魔力や魔法といった概念は存在しない。

 転生者にとってそんな馴染みのない不確かなものよりも、旅を終えたあとに貰えるであろう金銭などの報酬の方が良いはずだ。

 何より伝説の中で転生者はほとんど活躍していなかったにもかかわらず他の種族の者達はしっかりと活躍していた。

 彼らの超人的な技術と強さを間近で見ているはずのただの一般人が、そんな連中に喧嘩を売るなんてとても考えられない。


「生きてるヤツとか居れば話は早いんだけどなー……」


「居るには居るわよ?」


「居るんかい!」


「でも話が出来る状態じゃない。物語に出てきたエルフの女は生きてはいる。今もエルフの里に居るみたいだけど、エリクシールを使った反動でまともに話すことは出来ないらしいわ。」


「じゃあ希望持たせんなよ……」

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