勝利の確信
「ソール!!ルシウスは無事か!?」
俺はルシウスに駆け寄ったパニックになりかけているソールに声をかけ、安否確認と共に落ち着かせる。
実は遠目から見ても呼吸をしているのは判別できており、ルシウスならあの程度の一撃を受けたくらいでは死なないと思っていた。
「だ、大丈夫!!生きてる!!」
「よし!!」
しかしあまり望ましい状況では無いのは変わらない。
さっきまで2人で交互に囮になりながら戦っていた相手と、今度は1人で戦い続けなければならないからだ。
俺がタバコを吸い切るのを待つかのようにゴーレムは静かに佇んでいる。
「……何故襲ってこない?」
さっきまで死に物狂いで逃げていたのが馬鹿らしくなるくらいに静かである。
むしろ急にピタリと動きが止まったので逆に不気味だ。
だがこれで分かった。
下手に動かなければ相手は襲ってこないのか。
そう思いながら組んでいた腕を解いてタバコの灰を落とそうとした時、ゴーレムの目の色が先程までの青から赤に変わり、俺に向けて一目散に走ってきた。
「これもダメかよ!!」
そして一度追われ始めるとこちらとしても逃げ続けるしかない訳で、またデカブツとの鬼ごっこが始まる。
「いい加減にしろ!!」
ゴーレムが振り下ろした腕に向けまた俺も正拳突きで応戦するが、すぐに再生されるだけで効果は無さそうだ。
せめて頭のてっぺんから拳を振り下ろせれば上半身まで浸透させて粉砕する事は可能だろうが、この大きさの相手の真上を取るのは簡単な事じゃない。
「い、一成さん……。回復すれば私がまた両断いたしますからもう少し耐えてください……。」
「ルシウス!!アンタ無理しすぎよ!!」
「そうです!!」
「お2人とも、あまり声を出さないように……。」
この調子ならルシウスの復帰はまだかかりそうだ。
というかアイツにこれ以上無理をさせたくないからな。
無理をするなら、俺だろう。
「……アレをやるか。」
走った後に準備体操するのはおかしな話だが、ゴーレムが駆け寄ってきている目の前で準備体操をしながら身構える。
俺の態度に腹を立てたのかは知らんが、ゴーレムは先程までよりも大振りに俺に拳を振り下ろした。
「躱しやすくて助かるぜ。」
地面に突き刺さった腕を伝って瞬時に肩へ。
ゴーレムは振り払おうと身体を振り回しながら暴れているが、俺もゴーレムの身体を這い回りながら動き、相手に俺の位置を掴めないようにしている。
やがてゴーレムは身体の上で俺の位置を見失い、キョロキョロと周囲を見回し始めた。
読み通り触覚は無いので、相手に触れていても気付かないようだ。
「取った!!」
俺が打てる真上からの攻撃はこれしかない。
だがこれが最も俺の技の中で威力が出る。
その分リスクも大きいんだけどな。
「……一成さん、まさか!?」
レインが心配になるのもわかる。
前に打った時は暫く動けなかったからな。
「【灰の一撃】。」
真上から発動した【灰の一撃】は俺の体ごとゆっくりとゴーレムに近付き、やがて纏った灰色の魔力がゴーレムに触れる。
その瞬間にゴーレムに衝撃と重力が同時にかかり、支えていた足から地面へめり込んでいく。
そしてそのまま拳が当たるとガラスが割れるように粉々にゴーレムの頭が崩れていき、上半身、下半身と順番に崩壊して両の腕だけがその場に落下した。
「一成さん!!」
身体が動かねぇ。
レインの呼びかけに答えようにも声も出ねぇな。
これ打った後は相変わらず反動が大きすぎるな。
「い、一成さんのタバコは……あった!!」
レインが俺のポケットにある開いたタバコの箱から1本取り出し、自分の口と俺のライターで火を付けて、むせながら俺の口へ運んだ。
程なくして意識がはっきりとしはじめ、安心した笑顔のレインと、ソールに肩を借りながら歩いてくるルシウスが確認できた。
しかし俺達は肝心な事を忘れていたんだ。
それはゴーレムのコアの破壊を確認していない事だった。
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