里を救いたい
「あれから2日ですか。どうやらまだ一成さんの武器は完成していないみたいですね。」
「それだけ丁寧に作ってくれてるってことだろ?ゴーレム討伐には間に合わなかったが、帰ってきたらきっと出来上がってる。」
俺達は宿で明日の朝から向かうヴォルブ火山の地図を確認していた。
登山の準備自体は里長のおかげでかなり早く終わり、後は朝から登頂して5日ほどで帰ってくるというスケジュールの元計画を練っている。
里長からの連絡が無いということは、結局それまでにオリハルコンの加工は終わらなかったようだ。
「それにしても何なのこの地図?本当に合ってる?」
「古い物らしいので現在は違う部分もある可能性はあるらしいですが、恐らく合ってますよ。」
ソールが疑問に思うのも無理は無い。
何故なら渡された地図に書かれていたのは登山道とは思えない、地図だけ見ると絵に書いた迷路のような物だったからだ。
「各魔源には魔力に当てられた自然が作り出した防護癖が備わっています。その姿は城であったり、入り組んだ森であったり様々ですが、どうやらヴォルブ火山は迷宮のようです。」
「俺達が渡された本には書かれてなかったぞ?」
「あんな子供向けの本をあてにしないでくださいよ。私が1ヶ月も出発に時間を割いた理由の一つが、前回の旅の正確な記録を外側の大地、協会本部にある白の書の内容を確認する為だったんですよ。」
「白の書!?」
聞いたことは無かったが、ソールが驚いているということは凄いものなんだろう。
俺とレインが首を傾げていると、ご丁寧にソールとルシウスは説明してくれた。
「白の書ってのはね、書き手がいないのにこの世界にかつて起こった歴史が全て書き示された物なのよ。協会の最高機密と言われていて一般人じゃ閲覧することは到底不可能ね。」
「ただ、協会の幹部であるクレアさんは当然白の書を閲覧したことがありました。そこで、クレアさんに頼んで白の書の写しを書いて頂いていたんです。」
「そんなに簡単に書いてもらって良いのか?最高機密なんだろう?」
「クレアさんと私は古い仲ですし、写しはクレアさんの目の前で焼却処分しました。それに原書はこの世界の文字では無い文字で書かれているらしく、クレアさんも正確かどうかは分からないそうです。」
とはいえそれを差し引いても協会にとっては最高機密だし、俺達にとっては有益な情報だったという訳か。
「かなり薄い筋の情報だが、信じるしかないか……。」
「正直私もこの目で見るまではその情報が正しいか分からなかったので皆さんには黙っていましたが、実際に里長様から頂いた地図を見るに、信じても良いかと思いましてね。」
「まぁ、どっからどう見ても迷路だもんな……。」
しかしヴォルブゴーレムを討伐して魔源を収める為には通らなきゃならない道なのだろう。
1本タバコに火をつけて、窓を開ける。
俺が吐いたタバコの煙が、窓から見えるヴォルブ火山に向かって薄くなりながら飛んでいく。
「……ん?」
その時、俺に浮かんだ1つの不可解な点。
「なぁ、ヴォルブゴーレムって里の人間にとっては鉱石を生み出してくれる守り神のような存在なんだよな?」
「里長様がそのように言ってましたね。」
「って事は……。」
「……私は一成さんの言うことが分かる気がします。」
レインも俺の疑問点に気付いたようだ。
そして、それまで黙っていたレインが口を開き、俺の疑問をはっきりと言葉にしてくれた。
「一成さんはドワーフの里の皆さんが、この魔物が沢山いるはずの迷路を抜けていつも鉱石を掘りに行っているという事って言いたいんですよね?」
「その通りだ。」
「……た、確かに……。」
「言われてみればそうね。」
そしてそこから俺は里長の言った里を救いたいという話まで遡り、この場で言葉にはしなかったが1つの結論として自分の中で落とし込んで話を終えた。
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