託す
俺たちが駆け寄った時、タンポポは意識は残しながらも衰弱していた。
俺もレインの魔力が体を巡った時は意識はあっても動けなくなっていたから似たようなものなのだろう。
「お、おい!!大丈夫か!?」
「皆さん本当にありがとうございました。」
今にも消え入りそうな声でタンポポは答える。
「ラック、里長に連絡を。昨日の話が本当なら悪いようにはしないでしょう。」
「了解っす。」
ラックは岩や建物の上をぴょんぴょんと跳ねながら文字通り真っ直ぐに里長の居るであろう工場へと向かって行った。
「あの速さなら恐らく10分もしないで里長の元へ着くでしょう。」
「あの、回復をっ」
「レイン大丈夫よ。覚醒の儀式で急激に魔力を吸収したからまだ体に馴染んでいないだけ。回復魔法でどうにかなる話じゃないわ。」
心配そうにタンポポを見つめるレイン。
タンポポもレインの方を向き弱々しく微笑むと、今度は俺を手招きした。
「一成さん。今オリハルコンは持っていますか?」
「ああ、あるぞ。」
俺がカバンからゆっくりとオリハルコンを取り出すと、オリハルコンは昨日までは無かった輝きを放っており、タンポポに呼応するように光が強弱を繰り返している。
「こ、これは……?」
「なんて美しい輝き。貴方を加工するのが本当に楽しみだわ。」
タンポポは弱々しく俺の差し出したオリハルコンを手に取り、赤子を抱くように大切に触れる。
オリハルコンもより一層輝きを増し、意思があるかのようにタンポポの胸に納まった。
「これがドワーフの力か。」
「ドワーフが触れた鉱石が輝きを放つのは見た事あるけど、これまで見てきた物とは比較にならないくらい強い光を放ってるわ。」
「恐らく彼女はとんでもない逸材なのでしょう。一成さん、オリハルコンは彼女に託すのが最善かと。」
「言われなくても分かってるよ。他に加工できるような人間居ないだろうからな。」
俺がそう答えるとタンポポは安心したように目を閉じ、ゆっくりと寝息を立て始めた。
それから待つこと10数分、里長自らが祭壇へ現れ優しくタンポポを抱き抱えると、タンポポを自分の家へと連れ帰った。
「あとは里長に任せておけば何とかしてくれるだろう。」
「そうですね。私達はヴォルブゴーレム討伐の準備を進めましょうか。」
里に戻った俺達はゴーレム討伐の準備をする為に店を回る。
しかし俺達が店の前まで行くと店主らしき人間達はそそくさと裏に下がり、物を売る気がないようだ。
「そういえば大半の里の人間からゴーレム討伐反対されてんの忘れてたわ。」
「んー、これじゃあまともに買い物もできないわね。」
一通りの店を回ったが、物を売ってくれるような店は存在しなかった。
するとそこへ町のドワーフとは雰囲気の違うフードを被った3人のドワーフが現れた。
「皆様、里長様がお呼びです。タンポポ様が目を覚まされたと。」
「かしこまりました。」
ルシウスはドワーフ達に一瞥しながら返事をすると、先導して里長の工場へ歩みを進める。
「アイツらは何者何だろうな。」
「恐らく里長様直属の兵でしょう。こういう時は相手の事を詮索しないのが吉です。」
里長の工場に着くとそこにはラックが待っており、里長とタンポポは居なかった。
ラックは何も言わずに工場を出ると、無言のまま町外れにある古びた屋敷に案内してくれる。
「ここに居るんだな?」
ラックは相変わらず何も答えずに屋敷のドアを開け、中に入ってドアを閉めた後、大きくため息を着いた。
「い、息が詰まったっす……。この屋敷の外で話をしないように言われていたもので……。」
「里長様は敵が多いですから。当然の措置でしょうね。」
「まぁ、何にしてもここまで来れば何喋っても良いんだろ?」
ラックは今まで喋れなかった分、首を大きく縦に振って返答していた。
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