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覚醒の儀式

「おはようございます皆さん!!」


 出会った頃とは打って変わって、タンポポが元気良く俺たちが泊まっている宿に顔を出した。


「おう、おはよう。」


「今日は皆さんに着いてきて頂きたい場所がございまして。」


「俺は別に良いが……。」


 俺が他の皆に目をやると、皆も頷き承諾している。


「ありがとうございます!!」


 そう言って手招きしながら小走りにタンポポは山道の方へとかけていく。

 俺達4人が遠目で歩きながらその背中を追いかけていると、里から少し離れた場所に6本の柱が円を描くように立ち並んだ場所に出た。


「ああ、そういえばタンポポは魔力の覚醒をしに里へ戻ってきたと仰ってましたね。」


 謎の場所を見てルシウスが1人で頷きながら納得している。


「あれが覚醒する場所なのか?」


「ええ。魔力の覚醒というのは自身の魔力を強化すると言うよりかは、大気の魔力しか扱えなかった者に地表の魔力を注入する様な行為なんですよ。だから恐らくあの祭壇の下には地表の魔力が溢れているんだと思います。」


 タンポポは恐る恐る忍び足で祭壇の中心に立ち、なにかに跪きながら祈るように手を合わせながら語った。


「私が皆さんをこの場に呼んだのは、本来なら立会人をする家族が、この儀式に反対したからなんです。」


「そうなのか?」


「……私は昔から鍛治が好きで、両親が居る鍛冶場に入り浸っていました。ですがある時私が父の真似をして幼心で振り下ろしたハンマーは鉄材に当たり、魔法を制御できなかった私の作り出した剣は母の胸を貫きました。どうやら私は他の人よりも潜在する魔力が多かったようで。」


 それを聞いて全員が黙り込む。

 タンポポが出会った当初、鍛冶場に入るのが怖いと言っていた原因はこれなのだろう。


「家族みんな母が大好きでした。もちろん私も。その母を殺めた私は自らの意思で10歳の頃家を出ました。家族は止めはしませんでした。そうしてロックロードまで巡り付き、ロックロードのカシワ兄さんにお世話になっていたんです。」


 まるで懺悔のように語り出したタンポポ。

 語れば語るほどその足元から光が込み上げ、タンポポを受け入れるようにあたたかく照らす。


「10年、鍛治以外の事をひたすら行っていた私は、より鍛治への思いをこじらせていました。いつか自分がもう一度鉱石を叩く事があるなら、心からその武器を託したいと思った人間の為に叩きたいと。あの時の母の顔をフラッシュバックさせながらも、毎日夢の中でハンマーを振り続けました。」


「……。」


 俺達はまるでわが子の門出を見守るような気持ちでその儀式を見守る。

 誰も一言も発しなかったのはその懺悔を聞いて同情したからではなく、幼かった彼女の後悔や思いを受け止めるという事にはそれが正しいと思ったからだ。


「私は一成さんのオリハルコンを一目見た時から、そのオリハルコンを叩いてみたいと心に思っていました。そして昨夜やっと決心できた。」


「お、おいまさかお前が選ぶ鉱石は……。」


 俺が声を漏らした時、タンポポはこちらに微笑みながらぎゅと目を閉じて合わせていた手にも力を込めた。


「お前俺なんかのために残りの人生を棒に振る気か!?」


「私ね、あの夜皆さんに助けて頂きましたが、ああいう事は決して少なくはなかったんですよ。でも、助けてくれた方は皆さんだけだったんです。皆さんと巡り会い、そしてオリハルコンを見せて頂いたあの時、私の運命は決まりました。」


 タンポポの瞳にもう幼さは無かった。

 覚悟を決めた一筋の眼差しは天を見上げ、周囲の光はそれに呼応するようにタンポポにゆっくりと吸い込まれていく。

 やがて光が収まると、タンポポは力が抜けたように崩れ落ち、ソールが駆け寄ってそれを支えた。

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