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10年を1週間に

「何とか形にはなったようじゃな。里までの道、よく頑張ったぞ小僧。」


「はぁ、はぁ……。」


 目の前に広がるのはヴォルブ火山の麓にできた巨大な街。

 街全体が高熱の火山により生成されたマグマを冷やして作られており、マグマはその他にも火種として使ったり、場合によってはそのまま成形して道具を作ったりと、ドワーフがこの火山と共に生きていると言っても過言ではなかった。

 ここに来るまでの道中に居たゴーレムは全て、俺によって修行の為にと処理させられ、俺はひたすら寝る間も惜しんで戦い続けた。


「やはり稽古より実践で覚えるのが最も早いな。稽古だけしておるワシの弟子は、10年経ってもこの領域にはたどり着けん。」


「そりゃあほぼ飲まず食わずで全力出し続けて戦ってたら1週間が10年にもなるわ……。」


「いや、その異常なまでの体力が10年を1週間に縮めたんじゃ。もはや免許皆伝じゃな、一成。」


「初めて名前で呼んだな、里長。」


 俺と里長はドワーフ里長は固く握手を交わし、先に用があるからと里長は残像だけを残して姿を消した。


「一成さん、この1週間で見違えるほど逞しくなりましたね。」


「そうか?」


 俺はあまり実感が無いのだが、今までレインが無理に作りだした歪な筋肉がキチンと体に馴染み、れっきとした格闘家の体付きに変わったらしい。


「何だか一成さん、戦闘で乱れた鼓動が落ち着くのが異様に早い気がするんですが……。」


「それに今まで明らかに漏れ出ていた魔力も殆ど感じられない。でも内包しているのが分かるほどの存在感になってる。アンタほんとこの1週間でほぼ別人になってるわよ?」


 しかし体が仕上がったとしても俺は相変わらずタバコに火をつけ、煙をふかしながら戦っていたので、喫煙の常習性は更に悪化の一途を辿っている。

 まだ昼も過ぎてないのに1箱吸いきってしまった。


「あ、これ最後の1本か。」


「はい、次の箱です。」


「ありがとうレイン。」


「それ、依存性も害もあるんだから多少控えなさいよ?」


 ソールは俺に釘をさしながらもタバコに火をつける事を止めようとはしない。

 魔力と強さの源がこれだということを理解しているからだ。

 もはやこの光景は日常であり、タンポポもラックも微笑ましそうに見ていた。


「さて、ここから本腰入れねぇとな。」


「ええ、期待していますよ一成さん。」


「確か魔源にはガーディアンと呼ばれる強力な魔物が居るんですよね。」


「それだけじゃないわ。魔源に繋がる道にも魔物は多く出るし、近付けば近付く程強くなっていく。一筋縄では行かないわよ。」


 ここまで来れば全員覚悟は決まっている。

 ロックロードから1週間、帝都から考えれば2週間もの間ひたすらこの火山を目指して俺達は歩き続けた。

 目の前には天にまで突き抜ける魔源の本流と、真っ赤に煮えたぎる大地。

 とうとうここまでやってきてしまった。

 旅の最初の目的地であり、これからどんな戦いが待ち受けているのか、その魔力の圧倒的な量からおおよそ予想はできる。


 気合いの入った俺達とは対照的に、ドワーフの里の入口、懐かしむようにタンポポが駆け出し、門の前で大きく手を広げて俺達の方へ向き直し、まるで案内人のように言った。


「皆さん、ようこそドワーフの里へ。」

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