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成功体験

「ちーがう!!魔力を放出するんじゃなくて体内に留めて衝撃だけを伝えるんじゃ!!」


「それが上手くいかねぇんだろうが!!」


「パワーは有り余ってるようじゃが動きが荒いし、格闘センスがあるとは到底思えないんじゃがな……。正拳突きの動きだけは全く無駄のない達人の動きじゃ。」


 腕を組みながら首を傾げるドワーフの里長は俺に厳しく指導している。

 里長に最初に見せられた、ゴーレムを粉々にする技術は、当然ちょっとやそっと努力した程度では身につかないという事を思い知らされた。


「拳が敵に当たった刹那、その拳を引け!!貫くのでは無い、留めるのじゃ!!」


 それを意識すると正拳突きのフォームが崩れる。

 反対に正拳突きを完成させようとすると、拳を引くのが遅くなり、ゴーレムに風穴を空けるだけ。


「それにしても元気ねぇ……。もうかれこれ3時間くらい全力で魔力放出し続けてるはずなのに全くバテてないじゃない。」


「私でも全開状態では流石にそろそろキツいところですね。あの異様なほどのタフさ、さすが転生者というところですか。」


 俺が里長に教わっている間、他の5人はレジャーシートを敷いて昼飯を食べている。

 今日の飯はサンドリザードの丸焼きだそうだ。

 俺も腹は減ったが、タバコを吸っていればある程度空腹を紛らわせるので、ひたすらタバコを吸い続けて空腹を誤魔化し続けていた。


「一成さんの分、そろそろ食べないと固くなっちゃいますよ?」


「小僧の分は用意せんで良いぞ。主らで平らげろ。」


「ジジイてめぇ!!」


「悔しかったら早く上達することじゃな。」


 そう言って里長も串に刺さった肉をムシャムシャ食べながら俺の事をジッと監視していた。


「小僧は一体何者なんじゃ?動きがちぐはぐで違和感がある。」


「転生者でございます里長様。どういう経緯で転生してきたかは存じませんが、かなり特殊な能力は持っているかと。」


「……ワシの見立てが間違いなら良いのじゃが、あまり良い経緯で転生したわけでは無さそうじゃのう。ほれ小僧、集中が切れて動きが雑になっておるぞ。」


 突然俺の背後に現れたかと思うと俺の頭を杖で叩き、後頭部だけでなく頭全体が揺れるように衝撃が浸透した。


「クラクラするぞ〜?こんな状態じゃ無理だろうが〜。」


「良いからやってみぃ。普通にやっても出来ないんじゃ。」


 俺は言われた通り正拳突きをゴーレムにするが、脳を揺らされた結果狙った場所に攻撃が当たらず、ゴーレムをかすめる程度にしか攻撃が当たらなかった。

 更に体勢を崩した為、ゴーレムにまともに衝撃も魔力も浸透せず、それが分かった俺は咄嗟に拳を引く。


「それじゃ!!その動きじゃ!!」


 里長が叫んだと同時に、ただ攻撃をかすませることしか出来なかったゴーレムの、かすった箇所とは反対側の腕が急に弾け飛んだ。


「な、何だ!?」


「小僧の魔力と衝撃がゴーレムの体の反対側まで浸透して弾けたのじゃ。まともに当たっておらずともあれ程の威力が出る。これを全力でできるようになれば、ゴーレム程度簡単に粉砕できるじゃろう。」


 俺はまだハッキリしない頭で懸命にさっきの感覚を記憶し、片腕を失っても尚まだ動いているゴーレムに向けてあえてゆっくりと正拳突きを放つ。

 当たった瞬間に引く為に力を込めるのではなく、あえて体のバネで自然に腕が返ってくるように脱力した。

 こうすれば正拳突きの意識に集中しても、最後に力任せに貫くことは無くなる。


「ほほう、たった1回の成功体験でモノにしおったか。無理矢理意識を飛ばす事により腕を引くというかなり歪な打ち方ではあったが、第1段階はクリアという事で良さそうじゃのう。」


 俺が放った拳はゴーレムに当たった後その全身を駆け巡り、コアだけを残して粉々に砕け散る。

 砕け散った粒は里長程細かくないが、俺もまたその技術を身につけた瞬間だった。

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