ロックロードの現状
「大丈夫か?」
「あ、ありがとうございます。」
「あら、本当にヒーローだったのね?」
「信じてなかったのかよ。」
俺はドワーフの女とレインの手を取り引き上げ立たせる。
「んで、なんでお前はこんな所にいるんだ?」
「アタシは主にこの町を拠点に商売してんのよ。帝都からだとそんなに離れてないし、質の高い鉱石や宝石を比較的安値で取引してくれんのよ。」
「それはっ……。」
ドワーフの女がルビィに何か言いかけたが言い淀む。
ルビィは理由を知っているからか、ドワーフの女の肩を叩き、この町の真実を語り出した。
「今、ロックロードのこちら側はね、ドワーフ達から安値で鉱石や宝石を買い取って、食べ物やその他の物を高値で売りつけてる。ドワーフだけを意図的に差別してるのよ。そしてアタシはそのおこぼれを貰ってるって訳。正直普通の金額で取引しても利益は出るけどこのバブルに乗じてる感じね。」
「へー。まぁ俺には関係ないが。」
「アンタってつくづく倫理観終わってるわね。」
「お前に言われたくない。」
俺とルビィが言い争っている中、レインはドワーフの女を気遣い、倒れた時にできたであろう擦り傷に回復魔法をかけていた。
「あの、お名前を教えてくださいますか?」
「た、タンポポです。」
「素敵なお名前ですね。」
レインにそう言われてタンポポは赤面している。
「タンポポ、お前は鍛治は出来ないのか?」
「……私は怖くて鍛冶場に入れないんです。だから鍛治以外の仕事をしながらここで生活してるんです。」
「あら、ドワーフなら女性でも鍛治をするのは珍しくないわよね?それにドワーフの里でも鍛治以外の仕事はあるんじゃない?」
「それは……。」
「皆さんこんなところにいらっしゃったんですね。町の入口にいないから探しましたよ。」
タイミングが良いのか悪いのか、ルシウスとソールが俺達を見つけ、手を振って歩いてくる。
どうやら宿は見つからなかったようで、ラックにまだ探してもらっているようだった。
「マジか、どうするかな……。」
「この際トンネルの途中で野宿でも良いのですが、流石にソールがベッドで寝たいと聞かなくて……。」
「せっかくまた町に着いたのに野宿何て嫌よ。」
「我儘巫女が。」
「アタシに向かって良い度胸してるじゃねぇの。」
俺とソールが睨み合っていると間でレインがオロオロし、ルシウスは溜息をつきながら俺とソールの間に入り、手が出ないように止めている。
「アンタ達って面白いわねぇ。」
「ていうか一成、何でこんなに人数増えてるのよ。」
「知らん。」
「宿が無いなら家に来る?折角だからタンポポちゃんも一緒にさ。」
突然のルビィの申し出に、宿が無い俺達に断る理由はなく、ルビィの家へ歩いて向かうことにした。
途中ラックとも合流し、合計7人の大所帯になっている。
道中で今日あった事を互いに説明しながら、ルビィの家に着いた時にはもう皆から笑顔がこぼれる程度に打ち解けていた。
「さぁ、ここがアタシの家よ。と言っても仮の拠点として買った言わば別荘だけどね。」
仮の拠点と言う割にかなりご立派な家であり、2階に3部屋、1階にリビング等一通りの設備が揃っており、7人くらい平然と泊めることが出来る環境だった。
「今日は居ないけど従業員やなんかが寝泊まりできるように各地に大きめの家を用意してるのよ。好きに使って良いわ。」
「俺はリビングのソファで良い。上はみんなで使ってくれ。」
「何言ってんのよ、それじゃあ女の子とルシウスが一緒に寝ることになっちゃうでしょうが。アンタらで1部屋使いなさい。」
「まぁまぁ、ここは公平にじゃんけんで良いんじゃないですか?」
「修学旅行かよ。」
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