魔銃召喚
「思ったより時間がかかっちまったな。」
俺が最初のゴブリンを仕留めた後、ゴブリン達はより慎重になり、視覚に頼れない俺はかなり苦戦した。
奴らはフェイントをかけたり、投石をして来たりで中々しっぽを掴ませてくれなかったからだ。
それでも吸っているタバコの煙が、奴らに合わせて動いていることがわかると、一気に仕留めきれた。
どうやら魔法は強いが戦闘能力的にはあまり高くない奴らだったらしい。
「とりあえずこの辺にもう敵の姿は無いし、みんなと合流するか。」
俺がみんなが避難している村長の家へ向かおうと思ったその時、銃声のような音が響き渡る。
「何だ!?」
油断していた。
俺のところに現れたゴブリンが4体だっただけで、他に姿を消せるゴブリンがいる可能性を考えていなかった。
俺は急いで村長の家へ駆け出した。
少し前、レインとソールは避難所へ到着していた。
「全部で13人……。」
「村の半数以上を失いました……。」
村の青年がレインとソール項垂れながら答えている。
「これが、この世界の現実……。」
「ソール……。」
レインは心配そうにソールを見つめ、少し風に当たろうと避難所の外へ誘導した。
「……アタシね、全然知らなかったの。城下街の外に行く時はいつもルシウスと一緒だったし、近くのこの村まですらも来たこと無かったから。」
「私も知りませんでしたよ。生まれてから殆ど山の中で暮らしてましたし、山を出てからはずっと一成さんが何かあれば解決してくれてましたから。」
レインとソールはお互いがこの世界の何も知らなかった事を反省した。
いつもルシウスや一成に助けられてばかりで、自分達は何もすることが出来なかった事を悔いた。
「でも、アタシは前を向くわ!!こんな事がこの先何度あっても、前向いて進むしかない!!」
「私も、皆さんのお役に立てるよう、少しでも頑張ります!!」
最悪の村の現状を見ながらも2人は意気込み、もう一度避難所へ戻る。
しかしそこには真新しい怪我をした子供と、何かに怯える住民達が居た。
「何があったの!?」
「分かんない!!突然この子が血を流して!!」
子供達はパニック状態。
ソールが駆け寄ろうとしたが、冷静なレインがそれを止めた。
「ソール。この場に何人居ますか?」
「え?さっきも言ったけど13人だと思うけど?」
「つまり、私達を含めて15人という事ですよね?」
「そうよ。それくらいの計算は出来るわ。」
レインは耳をすまし、トンッとグリフォンのクチバシで作った杖で地面を突いた。
そして1から順番に数を数えていき、
「14、ソールが15……私が16。やっぱり、1人多いです。」
「何ですって!?」
ミシッという音がなる。
その音をレインは聞き逃さなかった。
「はぁあ!!」
「ぐぇ!!」
レインが何も無いところに向かって杖を振り抜くと、剣を構えて今にも住民を襲いそうなゴブリンが、吹き飛んで壁に激突した。
「キャー!!」
「嫌だ!!ゴブリンだ!!」
住民達は更にパニックになり、我先にと避難所から出ようとする。
レインとソールは全員が避難所の外へ逃げたのを確認し中を見渡すが、ゴブリンは再度姿を隠す魔法を使っており、ソールの目には確認出来なかった。
「レイン、何処!?」
「少し離れたところに。ただ、今度は相手もこちらをかなり警戒しているようです。全く近寄ってくる気配がありません。」
「分かったわ。」
ソールは頷いたと同時に右手をかざす。
ソールの手には各指に指輪がはめられており、右手の小指の指輪が光出した。
「【魔銃召喚】一式 妖精ピクシー。」
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