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自爆

 道中もう何ヶ所かの食料庫で人間達を助けつつ、残す道は最奥へ繋がる一本道のみとなっていた。

 明らかに他の脇道とは作りが違う。

 両脇にはしっかりと松明が埋め込まれており、正面には荒いながらもしっかりとした作りの扉がそびえている。


「さて、鬼が出るか蛇が出るか。」


 扉を開き少し空いた隙間から無数に弓矢が飛んでくる。

 しかしルシウスはその弓矢を正面から受け切り、自分を仕留めたと思ったゴブリン達を一瞬にして両断。

 奥の無骨な玉座に座り肘を置いているゴブリンと1体1になった。


「お前がここのボスですね。」


「ニンゲンのクセにやるものだ。」


「人間の言葉が理解できるほど成長しましたか。」


 魔物は人間を食えばその魔力を吸収する。

 そして魔力によってその人間の持っていた知識や記憶を少量ながら吸収するのだ。

 食った人間の魔力量にもよるが、約100人食えば人間と同等レベルの知恵を持つ魔物が誕生する。

 つまりこのゴブリンは人間100人分以上の魔力を内包しているということだ。


「帝国の近くにこのレベルのゴブリンが居たとは。」


「キサマはカコにくったニンゲンのキオクにあるぞ。ケンセイとかいうヤツだろう。」


 ゴブリンは徐に玉座の後ろに隠してあった長剣を手に取り、ゆっくりとルシウスに歩み寄る。

 他のゴブリンの体格はほぼ変わらないが、その姿は他を威圧する迫力があった。


「サイキョウのオトコがどれほどか。タメしてやる!!」


「魔物に試される筋合いは無いですね。」


 互いに慎重に歩幅を進め、牽制距離。

 ルシウスの大剣がギリギリ届かない距離でゴブリンは動きを止める。

 それを見計らい、ルシウスは自身の剣に魔力を込めた。


「【鉄の剣】(アイアンブレイカー)。」


 ルシウスの剣の形状が黒曜石で黒光りしていたものから、鉄の光沢へ変わる。

 彼の剣の中で最も魔力消費が少なく、最も剣自体が頑丈な形状である。

 反面通常時より重いため、扱いは難しい。


「【ゴブリンスラッシュ】!!」


 魔力を乗せた大振りの一撃。

 剣は届いていないのに真空波だけで天井を削った。

 しかし【鉄の剣】は刃こぼれ1つしていない。


「ほほう、カタいな。」


「関心してる暇は無いですよ。」


 ゴブリンの振り抜いた隙を狙い、ルシウスは重い一撃を切り返す。

 咄嗟に剣でガードしたゴブリンだったが、地面を大きく抉り取った一撃は、吹き飛んだゴブリンごと玉座を粉々に打ち砕いた。


「ご、ゴブ……。」


「トドメだ。」


 ルシウスは全く油断せず、冷静に距離を縮めながら瀕死のゴブリンへ近付く。

 ゴブリンは瀕死ながらも不敵に微笑んだ。


「ツヨい。だが、このままマケるワケにはイカない。」


 そう言って剣に装飾された宝石を手に取り、大きく叫ぶ。


「シャドウ様、バンザイ!!」


「まさか、魔道具を!?」


 ゴブリンが手に持った宝石を握りつぶすと、宝石が眩い光と共にゴブリンの魔力を爆発させた。

 まさに最期の一撃、自爆である。

 ルシウスは油断していなかったにしてもゴブリンにとどめを刺す為に近付きすぎており、衝撃波で扉まで押し戻され、そのまま扉を突破って入口付近まで飛ばされた。


「うぐっ……。」


 流石のルシウスでも不意打ちで魔力を充分に体に巡らせられなかったため、全身に鈍い痛みが走る。


「いくら知恵が付いたからとはいえ魔物が魔道具を使うとは。これは、裏で糸を引いている者がいますね。」


 崩落しかけているアジトの天井を見て、痛む体にムチを打ちながらルシウスは脱出。

 出口で待っていたラックに肩を借りながらゴブリンのアジトを後にした。

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