表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
121/150

村の惨状

 俺達が村に着いた時、既に事は終わっていた。

 燃やされた家屋と、大量のゴブリンの首を持つルシウス。

 鎧はゴブリンの血で汚れ、日が落ちかけた夕暮れにルシウスの剣先だけが光って見えた。


「おい、どうだった!?」


「ほぼ壊滅状態です。生き残ったのは村長の家に集められた子供達と数名の大人のみ。」


 淡々と状況を説明しているルシウスの剣を握る手が震えている。

 辺りには身ぐるみを剥がされ弄ばれた後殺されたであろう死体や、意図的に四肢を切断された死体などが散乱していた。

 人間に恨みがあったかのような殺し方。

 生き残った人数より死体の方が多い。


「恐らくかなりの数のゴブリンがここを数時間前に襲撃している。残っていたのは数匹でしたから大部分はアジトに帰ったのでしょう。」


「……アジトはどこだ?」


「今何匹かわざと逃がしてラックに追わせてます。かなり近くでしょうね。」


「息がある人をできる限り集めてください!!私が治療します!!」


 レインが失意の俺達に指示し、俺達も言われた通り住人を探す。

 大半は案の定トドメを刺されていたが、数名だけ意識はなくとも息がある状態だったのでレインの回復魔法でどうにか助けることが出来た。


「生き残ったのは……これだけか……。」


 俺も思わずため息が出る。

 生きていたのはたったの10数人。

 だがこの世界はこれが日常なんだろう。

 だからこそ帝都は強固な壁を作り、貧民たちは虐げられながらもその中で生活していたのだ。


「皆さん!!ゴブリンのアジトが分かったっす!!」


 残っていた住人達を1箇所に集めた後すぐにラックが帰ってきた。

 この早さで折り返してくるということは本当にかなり近いな。


「アジトへは私が行きます。他の皆さんは生き残った住人の保護を。」


「1人で良いのか?」


「これでも元帝国軍隊長ですよ?」


 切り返したルシウスの言葉の前、一瞬だけ隠しきれない苛立ちの表情を見せたのを俺は見逃せなかった。


「……分かった。余計なお世話かもしれんが死ぬなよ。」


「慢心はありません。全て殲滅してきます。」


 それが俺にとっては心配なんだがな。

 どう考えてもここに到着してからのルシウスの様子は今までの穏やかな雰囲気とはかけ離れている。

 俺がアーデルハイト邸の地下でなったものに近いか?

 俺の心配を他所に、ラックに連れられてルシウスは木々が生い茂る林の中へと姿を消した。


「アンタ達、常にこんな事に対処してきたの?」


 ソールが身体を震わせながら俺に聞いてくる。

 そこで俺は気付いた。

 ルシウスが怒っていたのはソールにこの光景を見せたことに対してだろう。

 お前も俺と対して変わらねぇな。


「俺達はいつもじゃ無い。ルシウスは分からんがな。」


「……そう。……アタシ、みんなの様子を見て来るわ!!」


 無理矢理絞り出した言葉だろう。

 こういう時こそ明るく振る舞わなければ精神が持たないんだ。

 俺もそれはよくわかる。

 レインもソールの後ろについて住民達の様子を見に行った。


「さて、俺はお前らの掃除か。」


 ルシウスの姿が見えなくなるまで息を潜めていたのか。

 冷静ではなかったが、ルシウスすら誤魔化した連中。

 コイツらのせいで被害が大きくなったと言っても過言では無いかもしれん。

 ゴブリンの中でも暗殺や隠密魔法に長けているであろう種。


「流石に足音と足跡までは隠しきれなかったみたいだな雑魚共。」


 光学迷彩のように姿を隠す魔法だ。

 目には見えていないが目の前に確実に存在している。

 レインと共有しなくても今の俺なら数メートル位なら俯瞰して相手の位置を探ることが出来るはずだ。


「……前方2メートル、3体。」


 呟くと同時に1体の頭が吹き飛ぶ。

 タバコの火が風で少し勢いを強めた。


「失礼、これで3体だな。」

もし宜しければブックマークや下の評価ボタン、ご意見ご感想等送っていただけると大変励みになります!

よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ