オーナー
「引き受けたもののどうするかな……。」
宿屋に戻り、レインと共にベッドで横になりながら小さく本音が漏れた。
「どうかなさったんですか?」
寝ていると思っていたがそれをレインは聞き逃さず、俺に質問してくる。
別に隠すつもりも無かったが、俺はレインに全てを説明した。
「何だか人の恋路を邪魔しているようで気が進みませんね……。」
「どちらかと言うと相手がルビィの人生を邪魔してるんだがな。」
「でも、恋を諦めさせる方法って難しいですよね。有り体に言えば他の恋を見つけさせるとか、相手の良くない所を知らせるとかそう言う事ですかね?」
ちなみにルビィにぶん殴って諦めさせようと言ったら、穏便に済ませろと釘を刺されている。
「あとは……もしかしてそういう方ならお父さんには逆らえないのでは?」
「確かにそうかもしれないな。明日親に会ってみるか。ありがとうレイン。」
「いえいえ、お力になれたなら何よりです。」
そう言ってレインはすやすやと眠り始める。
俺も明日に向けて早めに休むことにした。
「んで、なんでアタシ達が呼び出されんのよ。」
「暇そうだったから。」
ソールはぶつくさと文句を言いながら店の中にある装備品を丁寧に拭いている。
相変わらず朝一でレインを遊びに誘ってきたので2人とも連行してきたというわけだ。
レインはと言うと、ソールの後ろをトコトコ着いて回りながら手を持て余しているようだった。
何だかんだ2人とも楽しそうである。
「俺はちょっと用があるから店のことは任せたぞ。」
「まぁ良いわ。行ってらっしゃい。」
「お気をつけて。」
俺は店を出てすぐにタバコに火をつけてから大通りへ向かう。
ルーファスの親の店は大通りのど真ん中に構えており、窓越しから見える中はきらびやかな装備品が並んでいた。
「す、すげぇな……。」
思わず襟を正し、髪を整える。
お偉いさんに会うって時、こういうのは元の世界から抜けない癖みたいなもんなんだろうな。
店のドアの前に立つと、俺が来ることが分かっていたかのようにドアを紳士的な男が開け、中へ案内される。
さすがの俺もちょっと緊張してきた。
「いらっしゃいませ。なにかお探しでしょうか?」
「いや、ここのオーナーに会いたいんだが。」
「失礼ですが、アポは取っていますか?」
「いや、実は……」
俺が返答に困っていると奥のドアが開き、中から人の良さそうな男と、それに深々と頭を下げる男が現れる。
人の良さそうな男は俺を見るなり、
「貴方は一成さんでは!?」
と言って俺の方に駆け寄ってきた。
「オーナー様。この方はオーナー様にお話があると。アポは無いそうなのですが。」
「良い。先の商談が早く終わったから少し時間がある。ご案内いたしますよ。」
そう言ってオーナーは俺を奥の部屋へと案内してくれた。
俺を知っているという人間は大抵あまり良い印象を持っていないと思っていたが、このオーナーはどうやらそういう訳では無いらしい。
誘われるがまま、オーナーの部屋へと足を踏み入れた。
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