腕相撲大会
「で、マジでフケたのねアンタ。良い根性してるわ。」
「クレアには昨日帰りがけ連絡済み。あと2日は休める計算だ。このところ死に目に会いすぎてるから流石に少し休ませてくれ。」
「お金は返してもらいましたから何も文句はありませんが、流石に丸1日家に引きこもっているのはどうなんですか?」
「お前らも朝から他人の家に毎日突入してくるのはどうなの?」
家というか普通に宿なんだけどね。
半月後には旅に出る計算だし金はあるが家借りる程でも無いという判断で俺とレインはずっとこの宿に居ることにしたんだ。
「アンタは良いかもしれないけどレインが可哀想よ。」
「そうだそうだー!!」
「ルシウス、お前のたまに餓鬼になるのなんなの?」
「私は今までとそんなに変わりませんし、待っていたら美味しいご飯が出てきてくれるので……。」
言ってるそばからノックの音と共にルームサービスが運ばれてきて、およそ3人分の飯がレインの前に置かれる。
レインはそれを1人黙々と食べ始めた。
呼吸をするかのように自然に消えていく飯。
「この調子だとレインさんが店の食材食い尽くしますよ?」
「ああ、安心しろ。既に1日3回まで、1回3人前までの制限が付いてる。」
「この量がその小さな体の一体どこに入ってるのかしらねぇ……?」
ソールがレインのお腹をつまんでも無駄な肉が着いているようには見えない。
多分全部魔力として吸収されているんだろう。
「何にしてもこのまま家の中なのは健康的にあまり宜しくないのは確かですので、一成さんにはこれに出てもらいます。」
「なんだこれ?」
ルシウスは俺にさっき破ってきたかのようなポスターを渡してくる。
眼鏡をかけて開いてみるとそこには、
「……腕相撲大会。日付は明日の昼?なーんで俺がこんなことやらなきゃならねんだよ。」
「一成さん的には今の自分が何処まで通用するか、知りたいんじゃないですか?このイベント毎年恒例でして、帝国軍からも出場OKなんですよ。ちなみに昨年の優勝はソールに無理矢理出された私です。」
「べーつにいーよー。めんどくせぇし。」
「残念ですねぇ……。今年の優勝賞品は豪華食事付き帝国最高ホテル宿泊券何ですが……。」
「豪華食事……?」
あ、ヤバい。
レインが反応した。
「去年も同じ物で私も宿泊しましたが、あそこの食事は最高でしたねぇ……。至福というのはまさにこういう事かと思うくらい素晴らしい食事でしたよ。」
「一成さん!!やりましょう!!」
食い気味にレインが俺に迫る。
ルシウスの野郎、ニヤニヤしながらこっち見やがって。
レインに言われたら俺が断れないことを利用しやがったな?
「レイン、俺は勝てるかどうか分からんのだぞ?」
「大丈夫です!!一成さんなら勝てます!!」
「勢いが凄いぃ……。」
「参加ということでよろしいですかね?」
「はい!!よろしくお願いいたします!!」
レインのこんなに元気な声は久々に聞いたぞ。
俺は諦めながら出場申込用紙に名前を書き、レインはもう勝ったかのように大喜びで俺に抱き着いてきた。
「ああ、ちなみに前回の優勝者として私はシード枠で出場しますのでそのつもりで。大丈夫ですよ。私が勝っても宿泊券はお渡ししますから。」
「舐めやがって。無駄にやる気が湧いてきたわ。絶対勝ってやるからな。」
「では、決勝でお会いしましょう。」
俺とルシウスは拳を合わせ、ルシウスとソールはそそくさと部屋を出ていった。
絶対こんなことしてる状況じゃねぇんだけどな。
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