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敵を騙すには味方から

休みを終えてドワンの星へ。


「シルビアっ。会いたかった!」


「え?シルフィ、昨日も一緒にいたよね?」


「えっ、あ、うん。そうだったね。あははは」


シルフィードからすれば1ヶ月会ってなかったが、シルビアにはそうで無かった。



魔王城ではなんとなくキキララが寂しそうだ。


「シルフィ達と遊びたいか?」


「うん・・・」


「なら、こう言って遊びにいけ。で、これを持っていくんだ」


ゴニョゴニョと作戦を授けると喜んでシルフィード達の所に行った。


「ゲイルよ、大丈夫か?」


「まぁ、シルフィがなんとかするでしょ。同じ年頃の子達と遊ぶのも経験だ。これは俺達にはしてやれないことだからな」


「それはそうかもしれん」





「シルフィーっ!」


「うわっ。魔族の子供が来たぞーっ」


「なんだとっ?俺の武器を馬鹿にした恨みを晴らしてやるっ。皆でぶっ殺せぇっ!」


ドワーフ達は殺気立ってキキララに襲い掛かろうした。


「やめんかっ!」


ドワンがドワーフ達を一喝する。


「なんで止めるんだっ」


「貴様らは魔族とはいえ子供に手をかけるつもりかっ!恥をしれっ」


「しかしっ」


「やかましいっ!お前らこいつらに誰か殺されたのかっ?それとも何か奪われたのかっ?」


子供ゲイルとキキララは何も奪いもしてないし誰も傷付けていない。ただなまくら武器を嘲笑い破壊しただけだ。


「嬢ちゃん何しに来たんじゃ?」


「シルフィが逃げちゃったから遊びに来たんだよ」


「それだけか?」


「うん。あ、パパの所からこれ持って来たんだ。何か知ってる?」


それはブランデーの酒樽だった。


「勝手に持って来たのか?」


「ううん、友達にあげるからちょーだいっていったらくれたの。美味しいんだって」


「これは酒じゃ。子供が飲むもんじゃないっ」


「ふーん、じゃあ違うのにすれば良かった。それはおっちゃんにあげる」


「ワシに?」


「だって私達飲めないならいらなーい」


「シルフィ、また違うの持ってきてあげるから遊ぼっ」


「あ、あのシルビアもいるけど」


「じゃ皆で遊ぼっ。何してんの?」


「作物育ててるの」


「じゃー一緒にやるーっ」


キャーはっはっはぁっ


キキララは莫大な魔力でどんどん作物を育てた。シルフィード達と遊ぶかのように。



「ドワン、それは一体なんじゃ?」


「酒じゃ、恐ろしく旨い酒じゃ。魔王はこんな物を持っておるのか・・・。これはワシらの目標となる酒。作り方は知っとる。酒を作りたい奴はこれを目標にしろ」


「しかし、これは魔族の・・・」


「魔族の酒でも旨ければ問題なかろう。ほれ、一口飲んでみろ」


「うっ・・・なんじゃこれは・・」


「皆にも味見させるから一口だけじゃ。欲しかったら自分で作れっ」



キキララに持たした酒はゲイルが作った蒸留酒。ぎりぎりまで熟させた後に保存魔法をかけて保存しておいたもの。初代ゲイルが死ぬ直前まで作っていたものだ。遺産としてグリムナに渡してあったものが全て残っていた。


「あの子供らは魔族じゃが、壊すべきものでなければ壊さないんじゃないのではないか?試しにワシの剣を見せてみるわい」


「おい、魔族の嬢ちゃん、これは壊すか?」


「んー? まぁまぁだね。これなら魔物ぐらいは倒せるんじゃない」


「お前のパパは倒せぬか?」


「キャーハッハッハッハっ。勇者の剣でも通用しないのにそんなのないよーっ」


「勇者?」


「他の星でねー、魔王を倒す為に召喚されたものだって言ってたよ。ママは少し切られちゃったけど、パパには何も出来なかったんだー!パパは最強だからねー」


「ふっ、ワシの剣なら魔物程度ならか・・・。ってなんじゃとーーっ!」


ドワン激オコ。


「せめてパパの持ってる剣ぐらいの作ってねー」


キキララはドワンのプライドも刺激してからまた遊びにいった。


が、ゲイルが持ってる剣はドワン作のもの。ダンに預けた魔剣はちゃんとダンが最期ゲイルに返していたのだ。


ふんっ、坊主め、馬鹿にしおったのか褒めたのかわからんの。あれを越える酒と剣を作らせろという事か。まったくあいつは難儀なことを求めてきおるわい。


それから毎日キキララは遊びに来るようになり、様々な種、スパイス、砂糖とかお土産に持ってくるようになった。


「嬢ちゃん、これはどうじゃ?」


「えいっ、しょっぼ。キャーハッハッハッハ」


「ぐぬぬぬぬぬっ」


ドワーフ達はキキララが壊さないと一定のレベルになってるのを判断基準にするようになった。



ゲイルはその間にせっせと難易度の低いダンジョンを作り、金と銀や魔道具を隠していった。魔力スポットではないので、魔金をコアとし、ゴーレムにダンジョンを守らせる事に。



そして今作ってるのは自然の要塞のような山肌に作られたダンジョン。


「ジョンがギリギリクリア出来る難易度ってこれぐらいかなぁ?」


めぐみにまとわりつかれながら作業をするゲイル。最上階は捕らわれの間だ。


マルグリッドを守るゴーレムはめちゃくちゃ強くしておこう。ジョンがゴールデンスライムを倒した極限状態を再現出来たら倒せるぐらいにと。あの姿をマルグリッド見せてやりたいし、あの時の気持ちを思い出したらジョンは元に戻るだろう。


「ぶちょー、ここは何するの?オークのゴーレム?」


そう、ここは俺が作ったものかどうかわからないようにしてある。お宝もポーションもでない。ただ見たことがないオークが出るだけだ。恐らくここにはマルグリッドを奪いに返しに複数で来るだろう。場合によっては大怪我や死者がでるかもしれない。即死はさせないが、怪我したまま放置すれば死に至る。その時ジョンがどういう行動をとるかだ。俺はジョンが怪我した者を優先するんじゃないかと思ってる。目の前の怪我人を放置するような奴ではない。どうリーダーシップを取るだろうな。



「ここは大切な者を取り返しにきてもらうんだよ」


「ふーん」


「私が捕まったら?」


「もちろん取り返しにくるよ」


「じゃあ、ラムザとシルフィードの私が3人同時に捕まったら誰から助けるの?」


なんて嫌な質問をしてくるのだ・・


「うん、なんとかする。大丈夫だ。必ずなんとかする」


「そっか、なんとかしてくれるんだ♪」


うん、ありがとう。めぐみでいてくれて。



しかし、本当にそんな状況になったら俺は誰を一番に助けるのだろうか?


分裂して同時にというのを選ぶだろうけど、分裂出来ないとしたら・・・


その場でうんうんと考え込んでしまった。



マルグリッド捕らわれ基地が完成したので、闇に乗じて拐いに行く。気配も消して認識阻害も掛けて作戦も皆には内緒だ。


必死で探すがよい。



現在のマルグリッドは一人暮らし。風呂入ってる時以外に気を使う事はない。そーっと扉を開けて忍び込みマルグリッドを抱き上げる。


「キャーーっ」


びっくりして悲鳴をあげるマルグリッド。姿も気配もなくいきなり抱き上げられたらそりゃこうなるわな。


そのまま何も言わずに連れ去る。


キャーキャーいう声は当然皆にも聞こえ、皆は慌てて外に出るとマルグリッドが闇に消えて行った姿だけを見た。


「マリっ!」


くそっ、ゲイルのやつ。待つとか言いやがった癖に不意打ちを食らわせやがって!


ジョンはすぐにゲイルの仕業と考え、追うことはせずに翌日にキキララに詰め寄る。


「魔王がマルグリッドをいきなり拐うとか酷いじゃないかっ」


「え?パパはおうちにいるし、誰も来てないよ」


「えっ?」


「パパはずっと何かを作ってるよ」


(もしかしてゲイルじゃないのか・・・?)


ジョンの顔が青ざめた。てっきりゲイルの仕業だと思って深追いしなかったことを激しく後悔した。



ゲイルはアーノルド達がマルグリッドの救出に向かわないように各地から魔物を街の近くに集めていく。魔物にもトントンは効くのだ。


で、マルグリッド捕らわれ基地の反対側に魔物達を配置してと。この仕組みはかなり魔物出るけど大丈夫かな?まぁアイナもいるしなんとかするだろ。オーク達はマルグリッドが拐われた方に配置する。これでマルグリッドがオークに拐われたと誤認識するだろう。



「ダン。マルグリッドが拐われたっ」


「ったく、ぼっちゃんのやつ待ってやるとか言ってたくせによ」


「ゲイルじゃないかもしれない・・・」


「なんだと?」


「ゲイルの所にもいないらしい。キキララも何も知らないようだ」


「ダンさんっ!大量の魔物がこっちにむかってるっ。いまアーノルドさん達が討伐にむかった」


「住民を避難させろっ」


「うわぁっ オークが街の中にっ」


「ちっ!」


ダンはミケに住民の避難を任せて飛び出した。


「あんたらはよこっちや!この屋敷に逃げ込むんやっ!」


「ミケさん、私も討伐に出るっ!」


「シルフィード、あんたは皆を治癒するんや。戦いは他の奴等も出来る。治せんのはあんたとアイナしかおらんやろっ」


「わかったっ」


「シルフィ、私達も手伝うよ。治癒魔法使えるからっ」


ゲイルがやってることを知らないキキララは治癒担当を名乗り出た。


アーノルド達はマルグリッドが拐われた反対側の魔物討伐に行き、ダンとジョンはマルグリッドが拐われたほうのオーク討伐に追われる。ドワーフ達も参戦だ。


日暮れまで掛かってオークを全滅。アーノルド達のほうは無限に涌き出てくる魔物を延々と討伐し続けだ。


ゲイルは他の大陸の魔力スポットから生まれてくる魔物を転送ゲートで送り続けているのだ。魔物がポップアップするゲートを複数作り、認識阻害もかけられているのでアーノルド達も気付かない。スタンピートが発生したと思っていた。



「もしかしたマルグリッドはオークに拐われたんじゃ・・・」


「その可能性はある。しかしまだ魔物が街に来ているから俺は離れられん。ジョン一人で行けるか?」


「当たり前だ。今から行って来る」


「ワシも行こう」


「ダメだっ!ドワンはダンと街の防衛を頼む。ドワーフ達をまとめる役が必要だ。マリは一人で・・・」


「おいおいっ、一人だけいい格好させられるかよっ。俺達も行くぜ」


マルグリッド親衛隊となっている男達が救出部隊に名乗り出た。30名ほどいるだろうか。


「死んでも知らんぞ」


「はんっ、惚れた女の為に死ねるなんて本望だね。ま、助け出せるまでは死なんけどな」


(惚れた女の為に死ねる・・・)


ジョンの心の奥底にあった想いをその言葉が刺激した。


「マルグリッドの為に死ねる奴は付いてこいっ」


「うぉーーーっ!」



こうしてジョン達はオークが沸いてくる方向へとむかうのであった。









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