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裸の想い

オーク討伐は結構なお金になった。集落の殲滅と肉の買い取り(保存魔法つき)で金貨30枚ほど。食料を買い込むには十分だな。


「アイナ、今日はもう終わりだから皆の所に帰る?」


「あの小屋でお昼にしましょ。あそこに行くの久々でしょ?」


俺の原点とも言える森の小屋に行くと樹木が生い茂り、廃墟のようになっていた。


「あー、やっぱりねぇ」


ドワーフ達が亡くなった後は誰も管理しに来てくれてなかったのだろう。これは致し方がない。


ゲートで来たけど、道も無くなってるしな。ただ、俺が作った柵や看板は樹木に埋もれてはいるが残っている。小屋も窓や扉は朽ちて無くなっていたが、小屋そのものは昔のままだった。


「どうする?こんなところで食べるの?」


「あら、いいじゃない。秘密基地みたいで」


秘密基地と言われたらそうだな。


だーっと樹木を引っこ抜いてバーベキュースペースを確保する。


「本当に懐かしいわね。しょっちゅうどんちゃん騒ぎしてたものね」


「そうだね。楽しかったよあの頃」


早く大きくなって酒のみたいとか思ってたけど、今はあの頃に戻りたいとも思う。


「ねぇ、ゲイルはアーノルドと本当に本気で戦うの?」


「母さんが掛かってるからね。手を抜いたら本気で怒ると思うよ」


「また母さんと呼ぶのかしら?」


「こう呼ばないとね、俺ヤバいんだよ」


「どういう意味?」


「なんだろうね、全てを捨てて惚れちゃいそうなんだよ」


「ふふふっ、私がゲイルの一番になるの?」


「そうかもね。でも俺とシルフィードってね、ここに来る前から夫婦だったんだよ。シルフィードの魂は元々めぐみの星の魂で、たまたまゼウちゃんの星に持って来られて俺とめぐりあって結婚して、そしてまためぐみの星に戻ってきた。で、俺はゼウちゃんの星からたまたま魔法の才能があるからって連れて来られてまたシルフィードと出会ったんだよ。これって凄くない?」


「へぇ、そうだったの」


「1回目に死ぬときにそれが解ってね、あぁ、前世の嫁さんの魂だと解ってたらさっさと結婚したのになと思ってたらまた生まれ変わって結婚したんだよ。それから何回も記憶持ったまま生まれ変わらされて、その度にシルフィードと結婚したんだ。シルフィードが死ぬ時は俺も女だっんだけどね」


「凄く強く結びついてたのね」


「そう思うよ」


「それなのにどうしてラムザとめぐみとそういう仲になったの?」


「ラムザとは元々約束したんだ。シルフィードが元の嫁の魂だと知らない時に生まれ変わったら抱かせてって。ラムザはいい女でね、嫁さんとしても理想なんだよ。初めて見た時から魅かれたってのもあるし、俺が壊れそうな時もずっと支えてくれたんだ」


「めぐみは?」


「めぐみの事は良くわからない。初めはムカついてたけど、こっちの感覚とあいつの感覚がまるで違うというのが理解出来てから腹も立たなくなったし、あいつの嬉しそうな顔を見たら幸せなんだ」


「ミケは?」


「ミケはね、こう、なんて言うんだろ。俺に楽しいをくれるって奴かな?可愛いし、気も合うと思う。感受性が豊かで人の気持ちも良く判るし、言いにくいことでも言わないとダメな事はちゃんと言う。それにずいぶん救われたよ」


「マルグリッドは?」


「マリさんはしっかりしてて強いけど心の中に殻があってね、それは脆くて儚い物を覆ってるんだ。そういうのって守ってやりたくなるじゃない?」


「チルチルは?」


「義理の娘だったけど、多分俺の初恋の人の魂を持ってたと思う。前世で凄く好きな子が居てね、恋人同士みたいな関係になりかけてスレ違ったんだ。俺の下らない意地の為にね。本当は向こうも好きでいてくれたんじゃないかなと思う。今となってはその方が良かったんだろね。チルチルの匂いは好きだけど、ドキドキするような感じではないんだよ。初恋の時はそんなの知らなかったし。ただあったかい気持ちにはさせてくれる。ミケと同じだね」


「それは種族的なものじゃないの?」


「いや、チルチルとは人族の時も出会ってるんだよ。その時も同じ匂いだったから種族は関係ないよ」


「じゃ最後に私は?」


「うん、母さんと俺は確実に魅かれ合う何かがある。これは昔から思ってた。親子だからだろうなと思ってたけど、こうやって血の繋がりが無くなって初めてわかった」


「どういうこと?」


「俺と母さんはシンクロするように出来ている。だから親子だったという記憶がなかったら確実に惚れてる。今朝飛行するときに母さんに抱き付かれた時に意識が飛びそうになるぐらいヤバかった。このまま押し倒してしまおうかと思うぐらいに」


「ふふふっ、私もよ。ゲイルと同じ気持ち。今迫られたら断る自信ないわ」


「俺も引き返せなくなると思う。だから父さんの前以外は母さんと呼ぶよ」


「もし引き返せなかったらどうするの?」


「俺の魂が壊れるんじゃない?未練が無くなったら昇華するらしいけど、絶対に皆を捨てた事を後悔して壊れる。多分すぐに壊れる」


きっとキキララのように自分で魂を壊すだろう。


「そうかもしれないわね。私もこの姿を消してしまうと思うわ」


「だから俺達はずっと親子でいいと思うよ。父さんは必ず母さんを諦めないから」


「もし仮によ、仮に始めに私に会ってたらどうしてた?」


「全てを掛けて奪いに行ってたと思うよ。そして絶対に負けない」


「じゃあ今回はどうするの?」


「試合には勝つよ。勝負には負けるだろうけど」


「ふふふふっ。やっぱりゲイルはアーノルドの事を好きなのね」


「感謝もしてるし好きだけど、俺の憧れなんだよ。もし自分で人生を選べたなら父さんを選んでたと思うよ。ダンも同じ。あんな良い奴見たことない。本当に最後の最後まで俺を守ってくれたんだ。ダンとミケは俺の為に自力で記憶を消されるのを防いでまで俺を守ってくれたんだ。裏切れる訳ないよ」


「ジョンは?」


「尊敬だね。あんなに真っ直ぐ生きて行ける人いないよ」


「ゲイルは本当に良い子ね」


「母さんも素敵な母さんだよ」


結局何も食べずに話だけをして、エデンに戻った。


海水浴をしてる皆を迎えにいくと皆砂浜で寝ていた。寝なくても大丈夫なはずなのに・・・


皆を起こして屋敷に戻り、晩飯前に風呂に入ることに。


「いいかめぐみ、絶対に男湯に入って来んなよ」


「えー」


「お前の裸を皆に見られたくないんだっ」


「焼きもち?」


「そうだ」


「ふふふ、わかった♪」


特にアーノルドには見せたくない

・・・?


「あれ?父さんは?」



慌ててビーチに迎えにいくとアーノルドは置いてけぼりにされてぶち切れていた。



風呂に来てまでプンプン怒ってるアーノルド。


「お前わざと俺を置いてっただろっ」


「父さんも子供じゃないんだからいつまでも森で遊んでるのが悪いんだろっ」


「父さんと呼ぶなっ」


「そうやっていつまでも拗ねんな、エーノルドって呼ぶぞっ」


ダンがブーッと口に含んでたエールを吹き出すして笑う。


「なんだよ、エーノルドって?」


ダンが昔話をした。


「ったく、変な名前付けんなっての」


そう言ってゴッゴッゴッゴとエールをイッキ飲みするアーノルド。


「で、アーノルドと呼ぶんじゃなかったのか?」


「まぁ、父さんでもアーノルドでもいいけどね。母さんを奪うのには違いないし」


「はぁー?俺が負ける訳ねーだろうがっ」


「まぁ、母さんがどっちを選ぶかが問題だからね。今の父さんなら俺を選ぶと思うよ」


「そんな訳ねーだろっ」


「だってさ、父さんは母さんにドキドキする?母さんは父さんにドキドキしないってさ」


「そっ、そんな訳あるかっ」


「そりゃ、自分にドキドキしてくれない人にドキドキするわけないじゃん。父さんが悪いんだから人のせいにしないでよね」


「ぐぬぬぬぬぬっ」


「ダンも急げよ。ミケここに来る前に俺のほっぺたにチュッチュッしたろ?長い付き合いであんなことされたの初めてだからな。そろそろヤバイぞー」


「ぐぬぬぬぬぬっ」


「ゲイル、マリは?マリはどうなんだっ?」


「誘っていいの?そんなことしたらジョンはすぐに負けるぞ。俺はジョンの知らないマリさんを知ってるからな。元兄貴だから気を使って待ってやってるだけだ」


「なっなっなっな・・・」


「マリさんの事をちゃんと見て来なかったお前が悪い。上辺しか見て来なかった報いだ」


「ぐぬぬぬぬぬっ」


ったく、早く元に戻れよな皆。



会話に入ってこないドワンをぐぬぬしてたダンが見る。


「ん?おやっさん、なんでタオル巻いてんだ?」


「わ、ワシの勝手じゃろうがっ!」


一瞬で連携を取る3人。アーノルドがドワンを押さえ付け、ダンがタオルを剥ぎ、ジョンが確認する。


「あーーーーーっ」×3


「どうやったんだっ、おい、ドワンっ」


「知るかーーーーっ!始めっからじゃっ」



初めからそうだったのか・・・




「男湯は皆元気だね。私はもうクタクタ」


「そうやな、実体化してたら疲れも感じるような気がするわ。ウチも眠たなってきたわ」


ふぁーーあとアクビするミケ。


「ラムザは見事だけど、マルグリッドもやっぱりこっち側だったわね」


「肉体的には全盛期ってところかしら?ゲイルに見せたらどうなると思います?」


「さぁ、エイプになるかもよ?」


きゃーーーっ




女湯も男湯に負けず、十分騒がしかったのである。


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