転生斡旋所#8
「自宅警備員ですか?」
あまり聞いたことの無い職業に、聞き返してしまう。
「はい。自宅警備員です。ニートとも言われますね。通院中に事故死しました。外に出たばかりに……」
ニート。就職活動をせず、家に引きこもっている人の事だ。まだ何か恨みがましい事を言っているが、わからない言葉が多い為、聞き流される。
「で、転生希望は以下の通りで間違いありませんか?」
・元と同じ世界
・死亡後、すぐに生まれる
・株式取引等で成功し、普通の人の生涯年収を余裕で超える資産を所持する
・20歳前後
・成功後に前世の記憶を取り戻す
「問題無い。その条件だと、読んでいた本やアニメの続きを見る事が出来るはず」
転生後も今まで通りの生活を続ける。さらに裕福になって。それが希望のようだ。
生前より望み通りの生活をする事で、善行を積んでもらう為に転生斡旋所はある。前世と同じ生活をするのでは転生する意味がない。基本的には却下されるケースであるが、もし許可するとどのようになるか実験してみたく思った。
「上司に確認する必要がありますので、少々ここでお待ちいただけますか」
「うむ」
許可を得て別室へ移動し、上司に連絡を取り、実験したい旨を伝える。
「お前も悪趣味だな。失敗するのがほぼ確定しているのに。まぁ、少しなら失敗を経験するのも良いだろう。今回だけだからな」
上司から釘を刺されたものの、なんとか許可を得る事が出来た。
元居た部屋に戻り、結果を伝える。
「お待たせしました。許可を得る事が出来ました」
そう伝えると、満足したように何度か頷いている。
「では、良い来世を」
実験結果を早く知りたくて、仕事を手早く片付ける。
「さて、どうなったかな」
・裕福な家庭に生まれる
・10代前半、親より1000万の元手を与えられ、「どの様な方法でも良いので、増やして見ろ。成功した場合は独立、失敗しても系列会社で働けるようにしてやる」と言われる
・半分を株式取引やFXにあて、半分を店舗経営にあてる
・運か才能か不明だが、両方想定以上の結果を出し、独立する事になる
・住居を準備し、更に資産を増やそうとした矢先、前世の記憶を取り戻し、前世の自分の人格が主体となる
・資産を増やした方法は過去の知識として残っているが、増やす事に興味はなくあくまで自堕落に行きたい為、株式や店舗を手放し現金化する
・自堕落な生活を開始する
・数年後、貨幣価値が暴落する
・資産を現金でしか所持しておらず、若干保持していたプレミアグッズ等を処分したものの生活水準を維持する事は難しい為、親に泣き付く事に
・親に「なぜ宝石や金、国内外の株式等を保持するなどリスクを考慮して資産を保持しない」「現金など、国際的に国が信用されていないと価値が無い、当たり前の知識だぞ」「お前はもう少し見込みがあると思っていたが、残念だ」「職場は用意してやる、そこで地道に働け」と説教を受ける
・仕事につくが、一度経験した贅沢な生活を変える事は難しく、収入より支出が多い状況に
・ギャンブルに手をだし、借金もするようになり、職場に取り立ての電話がかかってくるようになる
・親にバレてしまい、現時点の借金は代わりに返済してくれるが、勘当される事に
・転落し始めると早く、犯罪に加担し刑務所を行ったり来たりする事に
実験結果を確認し、落胆する。
「前世より悪化していますね。テンプレートのような転落人生。下手にお金を持ったのが原因か、ここまで酷いとは。転生の機会を与えられたなら、それまでの生活では出来なかった新しい事にチャレンジする。そう誘導する必要がありますね」
そう評価し、次の仕事に役立てる事にした。