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01.生徒会長ノクトに気に入られたんですが………

前作『モブライフを楽しむはずがどうしてこうなった!?』を元にした連載です。


(えっと。これはどういうこと?)


私の右隣にはさっきまで一緒に仕事をやっていた金髪碧眼のハーフイケメンが私の手を握った状態でしかも何故か私を護るかのように立っていて、私とそのイケメンの前には私に仕事を押し付けた張本人である花畑脳ヒロインが胸の前で手を組みながらうるうるとしていた。


「彼女に代わってもらったのは………そうっ、途中で具合が悪くなってしまったんですぅ」

ヒロインが何やら言い訳を始めた。

(具合が悪くなった?意気揚々に他の男子生徒と息抜きを称して出て行ったのに?)

「具合が悪いのならこの場所に戻る必要はない。さっさと帰宅すればいい」

イケメンの声音が更に低くなった。

(絶対零度のイケメンボイス、素敵だけどやっぱり近くで聞くと迫力半端ないなぁ)

相当怒っているのが伝わるから少し怖く感じた。

「代わりにやってもらっていたから悪いなと思って戻ってきたんですぅ」

(いやいやいや。思ってないよね?そんな風に思えるならそもそも人に代わってもらおうとか思わないよね!?)

私は無意識に握られていた手に力を込めて握り返していた。

(あ、マズイっ手に力が………って!?)

「ひゃああッ!!」

私にとっては衝撃的なことを目の当たりにしたため変な声を出してしまった。

(て、てて、手を握っていたんだったー!!)

思わず握り返してしまったけど!そういえば会長に手を握られてからそのままだったんだということに今更気付くとか遅すぎだよ。

(………いや。気付いたら気付いたで意識しまくってどうにかなりそうだったからできれば気付きたくなかったかな)


「どうかした?」

さっきの絶対零度のような声音とは違う柔らかい声が私に問いかけてきた。

「あ、あの、あの、手………」

(手を握る必要あったかな!?)

「手?………ああ。俺が握りたかったから握ってるんだけど問題ある?」

(問題ないと言わせたいのかな?この人は!)

「私の記憶が正しいなら今日初めてお会いしたはずですが」

「そうだね。あ、そういえばまだ自己紹介していなかったね。俺はノクト」

(今、自己紹介する!?)

「………莉桜、です」

なんだか疲れてしまって手を離して欲しいということを言えないでいたが、不意に手が離れた。


「会長、時間が迫っているのでお戯れはその辺にしてください」


私と会長の間には1人の男子が立っていた。黒髪に藍色の目をしているその人は冷静にそう言ってきた。

手が離れたことに私は安心したような、でも少し寂しいような複雑な気持ちになりながらもまだ仕事が残っている机に向かった。

「どちらに行くのですか?」

「まだ仕事が終わっていないので最後までやります」

それだけを言うと私は仕事を再開した。そう。再開しようとしたのだが、ある人が止めた。

「ここまででいいよ」

「いえ。そういう訳にはいきません」

私はさっきとは違い会長の目を見て言った。

「理由はどうであれ私はこの仕事をやると引き受けたんです。なら最後までやります。それにまだある仕事を残して帰るなんて気持ちが悪くてイヤです」

全部できないにしてもせめて区切りがいいところまでは終わらせたい。

「だから止めないでください。やらせてください」

私の真剣な顔を見た会長はふっと笑って大きな手を私の頭の上に乗せてそのまま撫でてきた。

「わかった。ただし。くれぐれも無理はしないように」

「はい。もちろんです」

早く帰りたいという気持ちはすでになくなっていてすぐに仕事に取りかかった。


どのくらい時間が流れたのかわからないほど没頭していて気がつけば日が暮れていた。

ようやく区切りのいいところまで終わらせることができた私は書類をまとめて机の上に置きその後に背伸びをした。

「はぁ、終わった〜!」

「お疲れ様」

「!?」

びっくりして思わず動きを止めて辺りを見渡した。私の目の前に会長がにっこり笑顔で座っていた。

「会長、残ってくれていたんですね。ありがとうございます」

「会長?俺の名前はノクトだって言ったよね?」

私が会長と言ったことで会長は不機嫌になった。

(名前で呼べと?)

「名前で呼ぶなんて恐れ多いです」

「なんで?俺は呼んでいいよって意味で言ってるのに」

「なんでと言われても………」

急には呼べませんと言うと会長はますます不機嫌になっていった。

けど、すぐに切り替えてこう言ってきた。

「なら、俺の名前を呼ぶ練習をしてみようか」

「………は、はい!?」

(な、何故にそうなる!?)


「女子寮まで送るからそれまでに呼べるようになってね」

「ひぇッ!?」

(女子寮まで送る!?なな、何言ってるんですか!?)

「いえ、会長にそこまでして………」

「ノクト」

『会長にそこまでしてもらう訳にはいきません』と言おうとしたらにっこり笑顔で会長は言い直した。

「えっと………」

言い直されても会長の名前を呼ぶのには戸惑いがあった。

そんな私に会長は小さく息を吐いて立ち上がり私の傍に来て手を握ってきた。

(なあっ!?!?)

「行こうか」

会長の優しい声に促され、私も立ち上がり教室を出て行った。


(わぁ。真っ暗。かなり時間が過ぎたんだ)

静まりかえっている校内に響く音は私と会長の歩く音だけだった。

「会長」

「じゃなくてノクトと呼んでと言ったよ?」

「そ、そうですけど。な、ならノクトさんと呼ばせていただくのは?」

「却下」

(何故!?)

「莉桜にはノクトと呼んでもらいたいから。では理由にならない?」

(ななっ!?)

突然の名前呼び捨てにドキッとしてしまった。

(けど呼び捨てで名前を呼ばれてもイヤでないから困る)

「理由になる?」

「なります、ね。多分」

「多分か」

会長は楽しそうに笑ってそう言った。

「なるべく早く呼べるようにがんばりますが、ついうっかり会長と呼んでしまうかもしれません!」

正直に。バカ正直にそう言ってしまった私の言葉を聞いたかいちょ………、ノクトは私の耳元に顔を近づけて………。


「もし、これから俺のことを会長と呼んだら覚悟してね?」


私は反射的にノクトから離れた。その後に見た彼の表情はキレイだけどどこか妖しい雰囲気を出していた。

(ぜぜ、絶対、会長とは呼ばないようにしよう)

身の危険を感じた私はそう決意するのであった。


結局、女子寮まで送ってもらったのだが、その女子寮が大騒ぎになったのは言うまでもなかった。



その後日。ノクトは突然生徒会役員の変更を発表する。

役員の1人として私がノクト直々に指名されるなんて知るよしもなかった。

最後まで読んでくれてありがとうございました。

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