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13話

 道路沿いに立ち並ぶ杉の木の間を抜けて、霧子の運転するミニクーパーは、傷ついた車体を軋ませながら疾走していく。木々の合間から顔を出した彼方に、ぽつぽつと灯る町の明かりが見えるが、山の裾野にあるその場所はまだ遠い。

「あ、あいつらすぐ後ろに! きてるぞ!」

 狭い座席の下、その大きな身体を押し込むようにして屈めながら、後ろを見ているハゲブタが困惑し、今にも泣きだしそうな様子で声を上げる。

「喋ってると舌噛むわよ!」

 右に左にハンドルを回し、霧子は次々とドローンから放たれる銃弾をかわしていく。

「……なるほど。こいつを使えば……」

 雨ガラスはハゲブタの横で、自らの考えを整理するようにぶつぶつとなにか呟きながら、ノートパソコンのキーボードを猛烈な勢いで打っている。

「雨ガラス、なにやってるんだ!?」

「茅森孝一は最後、僕にUSBメモリを託したんだ。そいつを見てみたところ、あの小型ドローンに対して命令者権限を偽装するコードが入っていた。彼の言っていたように命令の発信元は厳重に隠蔽され、簡単には手が出せないようだが、送信先――つまりあの小型ドローンのアドレスを傍受できれば――」

 ミニクーパーが、がくんと大きく跳ね上がる。

「――いてて。霧子君。もうちょっと丁寧に運転できない?」

「できるわけないでしょ!」

 言って霧子は手早くギアチェンジし、ハンドルを回し、小型ドローンの追撃をかわす。

「なら、その調子でしばらく頑張ってよ。もう少しで、ドローンのアドレスに辿り付けるから」

 小型ドローンの小刻みな駆動音とは違う、風を切り裂き羽ばたく、大きな回転音が近付いてくる。

「なんだ……この音?」

 音は、上空から圧し掛かるように響いてくる。窓から顔をだし見上げると――そこには空に鎮座する黒き鉄塊。厚い装甲で守られた軍用ヘリコプターが浮遊していた。その非現実的な光景に息を呑み、言葉を失ってしまう。カッと言う音が響き渡り、ヘリ前方に取り付けられたサーチライトが、俺達を照らし出した。

「なっ、なんだよこれ……」

「いやー、本気で僕達をここで抹殺する気みたいだね」

 ガキンと、金属が弾けるような音がして、ミニクーパーの天井に穴が空く。

「なんなんだよっ、これ!!」

「ひぃいいいいいいいいいい!!」

 あわやその銃弾を受けて即死……といった位置にいたハゲブタが叫び声をあげる。

「ハゲブタ君! 応戦して! 死にたくないから共に来たんだろ? このまま手をこまねいたまま死にたいのか?」

 言って雨ガラスは、猟銃をハゲブタに投げて渡す。

「し、死にたくない!」

 と上擦りながらも声を絞り出し、ハゲブタは窓から顔を出して、ヘリコプターに向けて猟銃を撃つ。

 あれだけ自暴自棄になって殺人すら犯そうとした人間が、窮地に追い詰められるとこうも生きようともがき始める。このアクション映画染みた異常事態の中、ぎりぎり繋ぎとめている正気を捨てて、沸き起こる恐怖感のまま泣き叫びたくもなるのだが、どこかで人間って面白い生き物だな、などと冷静に状況を見てしまう自分もいる。仮面を付け替えながら、自分という人格と距離を置いて生きてきたおかげだろうか。

「必ず、生き残ろうな」

 俺は、ハンドルを握り締めて運転に集中する霧子に声をかける。

「うん。そして、パパに酷いことした奴らを全員殺す」

 充血した目をぎらつかせて霧子が言う。その眼にもう涙はない。

「そういえば……最後にミスティさんが、俺達に武器を託すって言ってたな。その場所は、霧子が知ってる……って」

「思い出の場所に、心当たりはある。けど、まずはここを切り抜けないと!」

 霧子は、右に左にハンドルを切り、細かく曲がりくねりながら上空からの狙撃と、小型ドローンの銃撃をかわしていくが、それだけで全てをかわしきれるものでない。時折、車体に穴が空き、肝を冷やした。

「っ痛……」

 その雨ガラスの声に振り返ると、右腕から鮮血が流れ出ている。

「雨ガラス! その腕……!」

「ま、パソコンに当たらないで良かったよ。腕くらいなら一本、動かなくなってどうってことはない――」

 雨ガラスは、顔色一つ変えずにキーボードを残された手で叩き続ける。俺は、カバンからタオルを取り出し、血を拭いてからきつく雨ガラスの腕にそれを撒いて流れる血を抑えようとする。弾は腕を掠っていったようで、致命傷にはなっていない。

「ありがとう――よし、傍受成功だ。反撃と行こうか」

 天井には穴が空き、そこらが血塗れになった凄惨な車内。しかしそんな状況などおかまいなしだと言わんばかりのいつもの調子で、雨ガラスが言う。

 俺達を追走していた小型ドローンが、ふわっと上昇を始める。そしてそれらは、勢いをつけて、俺達の上空にいるヘリコプターへと突撃していった。

「これで終わりだよ」

 雨ガラスが叩いたキーに呼応するように、上空で銃声が鳴り響く。ヘリコプターは、コントロールを失いくるくると回転しながら、峠に墜落して爆発、炎上する。

「人……殺したのか?」

「ネットの匿名性を踏みにじるような人間を殺す事に、良心の呵責はないよ。僕はね」

 そう言って優しく微笑む雨ガラス。やはり彼女は、俺よりずっと人間離れした場所にいる。

「とりあえずみんな、スマホを壊して捨てようか? また緊急速報でも鳴らされて、居場所を補足されたらおしまいだからね」

 俺達はそれぞれのスマートフォンを、ハゲブタが持っていたハンマーで一つ一つ丁寧に破壊して車道へと投げ捨てる。

 窓ガラスが割れ、運転手側のドアは大きくへこみ、何発も被弾した瀕死の体のミニクーパーは、息も絶え絶えといった様子でキュルキュルと甲高い異音を発しているが、なんとか足を止めることなくミスティさんの言っていた「思い出の場所」へと向かっていく。


 山の麓に広がる森に車を隠して、霧子の案内に従い雪を踏み締め山道を歩いていくと、夜が明けて四方を囲む山々の輪郭が、柔らかな、紫がかった光の中に浮かび上がっていった。

 立ち入り禁止の看板の横を通り抜け、進んだ先に見晴らしのいい丘があって、その中央に木造造りの古びたコテージが建っていた。

「ずっと昔、お祖父ちゃんが経営してたコテージなんだ。お祖父ちゃんが亡くなってからパパが引き継いで別荘にしていたの。北海道に移り住んできてからは、仕事に集中したい時……と私と喧嘩した時、よくここに篭ってた」

 そう言って霧子は、鍵を差込みコテージの戸を開ける。

 窓から差し込む朝のひかりに照らされた、木造作りのコテージ。しばらく使われていなかったからか埃をかぶってはいたが、整理されて置かれた家具や本棚は、几帳面なミスティさんの隠れ家らしい趣があった。

「ムッシュ茅森は、武器の隠し場所は、ガーディアン君が知っているって言ってたけど。心当たりはあるかな?」

「心当たりって……ここに来たのも初めてなのに……」

 コテージを見て回る。レンガ造りの暖炉に、中央に置かれた年代物のテーブル。その周囲には赤い絨毯が敷かれている。部屋の隅に置かれた本棚には、コンピューターの専門書が並べられていた。バランスを考えて配置されたそれらの物々を、初めて見たはずなのにどこか懐かしく感じてしまうのは何故だろう。

 二十畳程のコテージを一回りしたとき、俺は、はたとその懐かしさの理由に思い当たった。

「……そうだ。俺はここを知ってる。ここ……ドラゴンソードオンラインにあった、ミスティさんの家にそっくりなんだ」

 改めてそういった認識でコテージを見回すと、家具の材質や置かれた位置、なにより木造作りのこのコテージの雰囲気は、ゲーム内のミスティさんの家とほとんど一致している。おそらくミスティさんは、この家を模してゲームの中にある自宅を造ったのだろう。

「だとすると、この本棚の下に……ちょっとハゲブタ。本棚どかすの手伝って」

「あ、ああ」

 あの非現実な銃撃戦の余韻を引きずり未だ放心状態にあるハゲブタは、言われるがまま俺と共に本棚を動かす。すると本棚の下から引き戸が顔を出したので、戸を開けてハゲブタが持っていた懐中電灯で中を照らす。

 金庫が置かれていた。

「なにそれ……パパが隠してた金庫? なんであなたが、隠し場所を知ってるの?」

「ゲームの中でも、ここに大事なものを置いてたんだよ。後は、金庫を開けなくちゃならないけど……」

「やってみよう」

 雨ガラスは、引き戸に顔を突っ込んで、金庫のダイヤルをくるくると回し始める。

「まさかセキュリティのプロ中のプロだったムッシュ茅森が、こんな単純なパスワードを設定するとは思えないけど――」

 カチャリ、という音が金庫から鳴り響く。

「――空いた。まさか霧子君の誕生日を、暗証番号に設定するとはね」

「MMOのキャラクターも娘に似せて、大事なもののパスワードも娘の誕生日って。娘もファザコンなら、父親も完全に親バカだな」

 俺達の話を後ろで聞いている霧子の瞳から、ここに来るまで堪えてた涙が零れ落ちる。

「中を見てもいいかな?」

 涙を見せぬよう、顔をその手で覆い隠した霧子がこくんと頷く。

 金庫の中には、五本のUSBメモリが入っていた。

「茅森幸一に、匿名性を滅ぼすためのシステムを発注、運用し、僕らを抹殺するために軍用ヘリコプターすら持ち出す連中。そんな彼らと戦うためのとっておきの武器……か。一体なんなんだろうね」

 雨ガラスは、USBメモリの一つを手にとって、例の黒い傘を展開して閉じこもり、カチャカチャとパソコンを操作し始める。

「お前たち、どんな奴に命を狙われてるんだよ……」

 ソファに腰掛け頭をかかえたハゲブタが、今にも頼りなげな声をあげる。

「いや……お前あいつらに指示されて、俺達を襲ったんだろ?」

「突然、『ONYMOUSの使者』を名乗る奴からメールが来たんだ。メールの主が示した場所に行くと、猟銃と、有名な出版社の……編集者の名刺が置かれてた。それで、そこに電話しろってメールの指示の通り電話したら、俺がWEBにあげていた小説を書籍化するよう言われてるって……」

 小説に詳しいわけではないけれど、ハゲブタがかつてWEBにあげていた小説は、素人目にも稚拙で、一般流通するような代物ではないように見えた。

「あいつら。警察を動かしたように、大手出版社すらも動かしたのか?」

「それで出版したければ、お前たちを殺せってメール――グァッ!!」

 後悔を滲ませたハゲブタの背中を、霧子の後ろ回し蹴りが容赦のなく襲う。

「よくもパパの車を、傷つけて! 壊してっ……!」

 前のめりに倒れ込んだハゲブタに乗りかかりマウントを取った霧子は、右に左にハゲブタの頭を殴りつける。

「ごめんなさい。ごめんなさい……」

 身体を丸めて、なすがままに殴られているハゲブタ。

 人間関係をうまくこなすことができず、世界と触れ合う度に傷つき磨耗していくハゲブタにとって、外の世界は恐るべき敵でしかない。俺の人生に当てはめてみれば、虐められていたあの中学時代を、一生続けるようなものなのだ。ぞっとする。

 多分、ハゲブタがネット上で発表していたWEB小説は、ハゲブタの過酷な人生における唯一の希望の灯火だったのだろう。現実味がない幻のようなものであろうとも、自分の中にある夢にすがりついて生きていくしか道がなかったんだと思う。「君の夢を実現してあげよう」と、具体的な話と共に持ちかけられたら、正常な判断ができなくなってもおかしくない。

「顔を上げろ! パパをっ、パパを返せ!!」

「ごめんなさい……」

「霧子。それくらいにしとけよ」

 俺は、馬乗りになってハゲブタを殴り続ける霧子を引き離す。

 ハゲブタは、頭を抑えて大きな身体を亀のように縮こまらせて震えている。

 延々と付き纏われ、停職まで追い込まれた挙句、殺されそうになった。しかしそれでも俺は、ハゲブタを心から憎むことができない。俺だって、どちらかといえば世界の敵なのだ。匿名掲示板やSNSで毒を吐いて嘘をついて、誤魔化して生きてこられただけで。

「……小説なんて、完成させただけでも立派だよ。俺からしてみれば」

 ハゲブタの目が、涙に滲む。

 ハゲブタではなく、そんな弱い人間を利用して、殺人者に仕立て上げようとした『ONYMOUSの使者』を憎むべきだと俺は思う。

「凄い……! これは凄いぞ!!」

 黒いカーテンが下りた傘の中から、こちらの様子などおかまいなしの雨ガラスの声が聞こえてくる。

「確かにこれがあれば、僕達は『ONYMOUS』と戦うことができるよ!」

 カーテンを畳み傘を閉じ、現れた雨ガラスの瞳はぎらぎらと輝いていた。その映画女優のような白く美しい顔の口元に浮かんだ不敵な笑みからは、肉食動物めいた獰猛さが滲み出ている。

「……そんな……USBメモリ数本で?」

 日本中のスマートフォンにある情報を一手に掴み、目的を達成するためなら大掛かりな殺人行為すら厭わない彼らと戦う……という話に、まったく現実感がもてない。

「ああ。ここに入ってる、ABSOLUTE ANONYMOUS SYSTEM――AASを使えば、奴らがなにをしてこようが対等に渡り合うことができる」

「AAS?」

 摩周湖が一望できるあの場所で、ミスティさんがそんな名前を口に出していた。

「稀代の天才エンジニア、茅森孝一が作り出した『ONYMOUS』と対になるシステムさ。これを端末に差し込むと、その端末を完璧に近い形で匿名化することができるんだ。『ONYMOUS』だろうと、僕レベルのハッカーのハッキングだろうと完璧に跳ね除けることができる」

「匿名化……する? それがあれば、また自由に匿名で……暴れられる?」

「ああ。あの……誰に咎められることもない、無責任な混沌に身を委ねられる!」

「それがパパの言っていた……武器? なんでパパは、そんなものを作ったの?」

「これも例の組織の依頼かもしれないね。世界中のネットワークから匿名性を消し去り、実名化するのが彼らの野望だとして、当の組織の匿名性は守られていなければただの自爆行為でしかない。あいつらがこの大事件を犯した犯人だと糾弾されて終わりだ。それに世界中の実名化が完了したら……このASSはダイアモンド以上に貴重な宝石に変化する」

「そんなものが?」

 俺は、金庫の中にちょこんと置かれたUSBメモリを見る。

「うん。こいつは一本につき、差し込んだ一つの端末のみ匿名化する仕様になっていてね。おそらく『ONYMOUS』の連中はそれなりの数を保有してるんだろうけど、それ以外で存在するのはこの五本だけだ。例えば今の日本でも、これを売りに出したらどれだけの人が欲しがり、値をつけると思う?」

 俺は、これがネットオークションサイトに売りに出された場面を想像する。

「……貯金を全部叩いてでも買う。それがあればまた俺は、ネットで好き勝手できるんだろ? なんのリスクも背負わず、自由に」

「特に、君やハゲブタ君はそうだろう。僕だって全財産を叩いてでも手に入れる。世界中の資産家だってそうだ。全てが実名化されてしまった世界で、限られた匿名性を保有するということの価値は計り知れない。『ONYMOUS.NET』のように、一方的に実名化した人々を裁く力を手にいられるんだから」

「つまり……目には目を。歯には歯を。パパは、これを使って『ONYMOUS.NET』で戦えって……」

 霧子が、金庫の中から黒一色のUSBメモリを取り出して、眼前に掲げる。霧子の慈しむような眼差しの前、朝の曖昧な光に照らされた長方形のそれは、神秘的な宝物のようにも見えてくる。

「そうだね。奴らの銃弾が届かない匿名の安全地帯から、攻撃し続けるんだ。幸いなことに、緊急速報アプリに情報収集用のトロイの木馬が仕込まれていたという大スキャンダルのネタも僕達は握っている。そいつをうまく使えば……僕達の匿名性と、ムッシュ茅森を殺した奴らに、反撃することができる」

 雨ガラスは神妙な顔つきで、ソファーや床に座り込んだ俺達を見渡す。

「どうかな、みんな? こうやって共にいるのもなにかの縁だ。僕と一緒に、『ONYMOUS』の連中と戦わないか? 僕達の手で革命を起こして、匿名世界を取り戻すんだよ」

 革命という時代遅れで大げさな言葉が、雨ガラスの静かで、熱っぽい語り口を通して胸に響く。

「私は、やる。パパを手に掛けた連中を、必ず皆殺しにする」

 霧子は、即答した。

「守君と、ハゲブタ君は?」

「俺……も、一緒に?」

 先ほどまで霧子に一方的に殴られていたハゲブタが、顔を上げる。

「理由は十分あるだろう? 君もまた『ONYMOUS.NET』によって居場所を奪われ、そして利用された挙句に殺されそうになったんだ。同じ『ONYMOUS.NET』の被害者たる守君に八つ当たりするより、僕には生産的に思えるよ」

 なにか考え込むように目を瞑って、しばらくして雨ガラスの顔を見返す。

「敵ってさ……金持ちなのか?」

「そうだろうね。『ONYMOUS.NET』にしても僕達への追跡にしても、あれだけ大掛かりなことができるんだ。世界クラスの大富豪か、国家か、闇社会の大物か、とてつもない額をこの事業に投資している人間が裏にいるはずだよ。ムッシュ茅森は撃たれる直前、既存の捉え方でくくれるような組織じゃない、なんて言っていたけど」

「なら俺は……いつも上から見下して、てめぇの都合の言いように俺達貧乏人を利用しようとしてる勝ち組に、目に物みせてやりたい。後悔させてやりたい。血を、見せてやりたい。一緒に、戦わせてくれ」

 そう言ったハゲブタの顔は、高揚しているのか赤みがかっていて、その潤んだ眼はきらきらと輝いている。

「守君。君は、どうだ?」

 雨ガラスが、まっすぐ俺を見据える。

 霧子を守ってくれと言った、ミスティさんの死に際の不安げな表情が心に浮かぶ。自らの命が途絶えようとしているその時さえ、ただ娘を一途に想うミスティさん。それは長い間、共に冒険をしてきたミスティさんそのものだった。

「ミスティさんの最後の言葉に……答えなきゃいけないと思ってる」

「そうだね。僕と君は、彼に霧子君を守るナイトとして選ばれたんだ」

 霧子は、陽の光を照り返した燃えるような瞳でこちらを見ている。あんなことがあったというのに、もう前へ進もうとしているその強さ。俺は、そんな彼女に引っ張られるようにして北海道まで来て、ミスティさんに会うことができたのだ。

 しかしその時。俺の脳裏に、もうひとり。かけがえのない大切な人の顔が浮かんでしまったんだ。

「俺は――」

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