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12話

「霧子。久しぶりだね」

「……連れてきたよ。パパの大切なお友達」

 霧子は、俺の後ろに隠れるようにして立って、話しに行けと背中を押す。

「君が、ガーディアン……君?」

「どうも」

 ミスティさん――こと茅森孝一は、初めて会う俺との対面に戸惑いながらも、俺の後ろにいる霧子を気にしているようで、視線を落として、寂しげな笑みを浮かべている。

 痛いほどにミスティさんの気持ちが伝わってくる。人と言うのは、些細な動作や表情の変化を通して、どうしてこんなに膨大な情報を伝えることができるのだろう。根本的に他人に興味がない俺は、大人になるまでそういうことが理解できていなかった。この辺りの機微を理解できるようになったのは、区役所仕事で同僚上司、区民の顔色を慎重に伺いながら業務を行っていたおかげだ。ミスティさんの秘めた感情を見過ごさないくらいには、空気が読める人間になっていて、本当に良かった。

「色々、話したいことがあるんですけど。その前に――」

 俺は霧子の腕をぐっと掴んで、茅森孝一の前に押し出す。

「ちょっ、なによ!」

「……ちゃんと話せよ。ずっと、会いたかったんだろ」

「だけど、お父さんは会いたくないって」

「そんなわけがないだろ。頭冷やして、ちゃんとお父さんの顔、見てみろよ」

 しかし霧子は、らしくない怯えようで父の顔を見ようとしない。すぐそこに、こんな寒空の下、霧子との再開を心待ちにしていた人がいるというのに。

「ミスティさん。ミスティって、霧子の霧に掛けてるんですよね? どうして自分のキャラクターに、娘の名前を付けたんですか?」

「……あのキャラクターは、娘の代わりだったんだ。大きくなって僕を必要としなくなった娘に渡せなかった愛情を……与えたくて」

「そういえば、ミスティさん課金アイテムとかバンバン投入してましたもんね」

「娘を……可愛く着飾りたいからね」

「パパ……」

「ごめんな。気持ち悪いパパで」

 霧子は、嬉しそうではあったがうまく気持ちを言葉にできないようで、黙り込んでしまう。それを見て、ミスティさんも視線を落とす。この二人は、こんなすれ違いをずっと繰り返してきたのだろうか。

「いやいや。娘さんの方がよっぽどですよ。これ見てください」

 俺は、「KIRIKOの部屋」というかつて霧子が父への愛情を書き連ねていたページを開いて、スマートフォンを渡す。

「ちょっと、なにやってんのよ!?」

「本人や、リアルな友達に知られないからこそ言えた正真正銘の気持ち。愛情の動かぬ証拠だ。今こそ見てもらうべき時だろ」

 スマートフォン上に並べられた、父への強烈な気持ち。並々ならぬ父親への愛情と、愛情に飢えた霧子の寂しさが、どの日付けの日記からも溢れ出ていた。スマートフォンをスライドして、それらを目にしていくミスティさんの瞳から、止め度なく涙が溢れ出す。

「パパ!?」

「ここに書いてあることは、本当かい?」

 霧子は、顔を赤らめながらも「うん」と頷く。

「ありがとう」

 言ってミスティさんは、その痩せ細った腕で霧子を抱きしめる。久しぶりに感じる父の温もりに最初は戸惑っているようだったけれど、直に霧子は穏やかな顔で父親の胸に顔を埋めた。

「パパ。あのミニクーパー、持ってきたんだよ。アメリカにいた頃みたいに、また一緒にドライブしたい……って」

 月明かりに照らされた摩周湖と父娘の影、それを祝福するかのように瞬く無数の星々。長く危険な旅になってしまったけれど、この景色を見られただけでも十分元は取れたように思えた。

「あっ……」

 俺は、改めて摩周湖の景色を見て、あることに気付く。

「ここって、星の海?」

「……うん。僕の実家は、ここから少し行ったところにあってね。小さい頃は、両親に連れられて何度もここに来て……思い出の場所だったんだ。そんな思い出の光景が、ゲームの中にもあって……驚いたよ」

「そっか。だからミスティさん、あんなに感激して……」

 何度も何度も強敵に阻まれながらも、諦めることなくミスティさんと手を取り合い、乗り越え進んでいった先に見たあの景色。その日が仕事だということも忘れて、朝日差し込む部屋の中で見とれていたっけ。思い返してみればふたりで『星の海』の景色を共有したあのときに、俺はミスティさんに恋をしたんだと思う。

「だから死ぬ前に、この景色を見たかった。君と会えるなら、君にも見てもらいたかった。ただそれだけを願ってここにきたのに……」

 ミスティさんは、改めて胸の中で泣いている霧子を抱きしめる。

「ありがとう。君のおかげだよ」

「――情緒溢れる素敵な場面、だったのかな? ムッシュ茅森。そろそろ本題に入らせてもらっていいかな?」

 いつの間にかミスティさんの背後に立っていた雨ガラスが、懐からサバイバルナイフを取り出しミスティさんの首元に当てる。

「なっ……! なにやってんだよ!」

「っ……!」

 咄嗟に、雨ガラスに飛び掛ろうとする霧子。

「動いたら殺すよ。霧子君、お父さんの身を心配するなら大人しく後ろに下がりなさい」

 霧子の動きを制するように、雨ガラスが無感情に言い放つ。ミスティさんも「大丈夫だよ」と離れるよう声をかけて、それを聞いた霧子はゆっくりと距離を取った。

「時塔透子……という名前は覚えてる?」

「……ああ。当時、世界中の優秀なエンジニアを集めてセキュリティソフトを開発していた我が社に対してハッキングを仕掛け、見事多くの情報を奪い取っていった大胆不敵なスーパーハッカー。しかしその正体は、十七歳の女子高生だった」

「しかし彼女は、茅森孝一という技術者によって尻尾を掴まれてしまう。後にも先にも……僕がしくじったのはあれだけだよ」

「まさか君が……?」

 雨ガラスは、静かに頷く。

「となるとこれは、復讐……かな?」

「まさか。そんな惨めなことはしない。しかも君は、僕の個人情報まで掴んでおきながら、警告するに留めて会社には知らせなかった。感謝はすれども、あの件で君を憎む理由なんてひとつもないよ」

「ならば……何故?」

「質問は、こちらがする。あなたが『ONYMOUS.NET』を使って、この世界の匿名性を徹底的に破壊したのか? YESかNOで答えてくれ」

「その質問は、難しい。YESともいえるしNOともいえる」

「誤魔化さないで。僕は、愛するネット社会を破壊した人間を心の底から憎んでいる。いまいち感情というものに鈍い僕だけど、この愛と憎しみだけは、確かに感じることができるかけがえのないものなんだ。その気持ちに任せて、君を殺してしまうかもしれない」

 月明かりを浴びて真っ白く浮かび上がった雨ガラスの顔が、怒りに歪む。俺は、飛び掛ってナイフを奪い取る隙を伺っていたが、その得も言われぬ迫力に圧倒されてか動けないでいた。

「例えば……そのネット社会の匿名性というものが、誰かを傷つける要因になっていたとしても?」

 ミスティさんが、特に糾弾する風でもなく疑問を口にした。

「どれほど暴力的だろうと、あの頃の自由は何よりも尊い」

 その迷いなき雨ガラスの言葉に、俺は心の中で思わず頷いてしまう。『ONYMOUS.NET』以前のネットは、誰もが被害者にも加害者にもなってしまう危うい場所ではあったが、力ある者や多数派が、正論や権力で一方的に人を切りつけるだけの現実よりよっぽどマシだ。

「そうか。君にとっても大切なものを、僕は踏みにじってしまったんだね。ならば先のない命だ。正直に、話させてもらうが――」

 ミスティさんは、俺と霧子をじっと見つめる。

「――この話を聞けば、後戻りができなくなる。君達二人は、耳を塞いでいたほうがいい」

 俺は、首を振る。

「雨ガラスほどじゃないかもしれないけど、俺だって……あの自由で、薄汚い世界を愛している人間のひとりだから。聞かせてください」

「私も。パパの言葉を……聞き逃したくないから」

 月明かりを照り返し、ぎらりと光るナイフを喉下に置かれながら、なにか考え込むように目を瞑る。

 その時――皆のスマホから一斉に、ウーウーと緊急速報を告げる音が発せられ、元は火口だったという摩周カルデラに、その音が不気味に響き渡った

「……そうか。彼らは、僕たちを探すためにアレを使ったか。なら急いで話した進めたほうがいいね」

「あれ……って? 緊急速報のことか」

「そうだ。君は、どこまで『ONYMOUS.NET』についての情報を掴んでいる?」

「膨大なデータが、無数の海外サーバーを幾つも経由して定期的に『ONYMOUS.NET』にアップロードされている。『ONYMOUS.NET』があるサーバー自体は、なにをやっても明らかにすることができなかったが、その送信元と思われる端末の一つに、茅森孝一――君から何かを受け取った旨のメールがあった」

「なるほど。AASの使用を怠った端末があったか。いくらシステム側のセキュリティを強化しようが、ヒューマンエラー一つで瓦解してしまうのが僕の仕事のやるせないところだね」

 彼らが話す専門的な話を整理して理解するため、自分の中で要点をまとめてみる。雨ガラスは、超凄いハッキング技術でミスティさんがあの事件に関わっているという証拠となるメールを見つけ出した。そしてそのメールが本物だったと今ミスティさんが認めたということか。

「しかし凄い。幾重にも隠蔽され、散らばったネットワークの中でそれを見つけるというのは、砂漠の砂の中から一粒の宝石を探し出すに等しい作業だ。さすがは、あの時塔透子だね」

「君は今、AASと言ったが……なんだそれは?」

「……君は、どうやってあの膨大な個人情報を『ONYMOUS.NET』が集めていると思う?」

「ハッキングを繰り返しているような形跡はなかった。あれだけの規模、定期的にハッキングを繰り返せば、どんなハッカーだろうと足はつくはずなのにね」

「ふむ、そうだ。だけど……日本にある全てのスマートフォンに、強制的にアクセスできるアプリケーションを介して、トロイの木馬を忍ばせたらどうだろう?」

「そんなアプリケーション、あるわけが……」

 そこまで言って雨ガラスは、はたと何かに気付く。

「いや。それが……緊急速報か!」

「地震や台風など天災が起きる度に、日本中のスマートフォンから情報を抜き出して『ONYMOUS.NET』に送る。すぐに情報が必要な時は、さっきみたいに誤動作を装って発生させてしまえばいい」

「なるほど。確かにそれなら……可能だ。ウィルスも、発生時にのみ送りつける形にして情報を収集後、自動的に削除すればその時を狙って調べでもしない限り見つかることはない。しかし何故、それだけの情報が一括送信されたトラフィックを辿れなかった?」

 興奮し、自問自答めいた調子で早口に呟く雨ガラス。雨ガラスとミスティさんの話が、とんでもない方向に転がっていくのを、俺と霧子はただ呆然と見守ることしかできなかった。

「それを、ミスティさんがやったって?」

「ああ。僕がそのシステムを作ったんだ。ごめんね。ガーディアン君。そのせいで君は仕事まで失いかけて……謝りたかったんだ。本当にごめん。ごめんなさい」

 ミスティさんは、その細い身体を折って、何度も何度も謝罪する。

「なんで……そんなことを?」

「昔のツテを介して……ある組織に依頼されてね。見せつけてやりたかったんだ。アメリカで、僕の全てを奪い取った連中に。僕の腕前を」

 言ってミスティさんは、大きく息を吐いてから言葉を続ける。

「死を前にした今……なんてくだらないことに固執して、とんでもないことをしてしまったんだと後悔しているよ」

 風が唸り声を上げて吹き荒れ、彼方に見える摩周湖に大きなさざなみを作った。

「組織ってのは一体、どういう連中なんだ? CIAか? それともマフィアのような連中か?」

 雨ガラスが問う。

「いいや。そういう既存の捉え方でくくれるような組織じゃない。あれは――」

 風の音に混じって、上空からブゥゥゥゥゥという耳障りな回転音が聞こえてくる。

 なんだろうと思い見上げると、小型のドローンがゆっくりと、俺達とミスティさんの間に降りてきた。虚を衝かれた俺達は、それを呆然と見つめてしまう。

「っ……! もう補足されたか!」

 ただ一人。小型ドローンがこれから行うそれを理解していたミスティさんが、雨ガラスを突き飛ばす。

「なっ!」

「おそらくこれを操作しているパソコンはAASに守られていて、君でもハッキングは困難だろう。だから、この偽装コードを使って、直接ドローンのコントロールを奪うんだ」

「だからAASとは一体――」

 渇いた発砲音が鳴り響く。ミスティさんは、地面に尻餅をついた雨ガラスに覆いかぶさるようにして倒れこむ。小型ドローンの機体から伸びた銃砲から、硝煙が伸びていた。

「雨ガラス君、ガーディアン君。霧子が知るもう一つの思い出の場所に、彼らと戦うためのとっておきの武器がある。それを君達に託そう。隠し場所は、ガーディアン君なら分かるはずだよ。だから――霧子を、守り抜いてくれないか」

 俺が、隠し場所を知っている?

 血の塊を吐き出しながら、そんな謎めいたことを懸命に話そうとするミスティさんに、小型ドローンは再び銃弾を撃ち込む。

「アアアアアアアアアアアッ!」

 小型ドローンに霧子が飛び掛るが、小型ドローンはふわりと浮かび上がりそれを避けて、銃口を俺達に向ける。

「逃げるぞ!」

「いやっ! だって、パパが!」

「行くんだ!

 ミスティさんが、苦痛に顔を歪めながらも懸命に声を張り上げる。

「霧子。本当に今まで……ごめんな。それにガーディアン君。本当に……今まで、ありが……」

 そう言って途切れたミスティさんの言葉に押されるようにして、俺は、霧子の手を無理矢理引っ張って、引きずるようにしてミニクーパーの方へと駆けていく。俺達の影を小型ドローンの弾丸が貫いた。

「クソッ、どうなってるんだよ!」

「珍黒斎、死ねやぁああああああああああっ!!」

 ただでさえ訳の分からない状況だというのに、ボロボロになったバイクに跨りハゲブタがこちらに突っ込んでくる。俺は咄嗟に、放心状態の霧子を抱きかかえて横っ飛びにそれを避けた。倒れこんだ先、凍りついた駐車場のコンクリートの冷えた感触に、身体が震える。

 小型ドローンがどこにいるかと周囲を見渡すと、何故かハゲブタの後を追跡して、その背に銃砲を向けている。

「ハゲブタ! 避けろ!!」

「えっ?」

 銃声が轟き、ハゲブタのバイクが横転し、火を噴いた。どうやらバイクに着弾したらしい。突然の出来事に、バイクから投げ出され横たわるハゲブタも呆然としている。

「どうやら彼らは、ハゲブタ君もここで始末しようといるようだね」

 雨ガラスが、俺と霧子に手を貸して、ぐっと引っ張って立ち上がらせる。

「行こう」

「俺は、お前を信用していいのか?」

「それは……どうだろうね。だけど、茅森孝一に託された任務は、君と共に完遂したいと思っているよ」

「……信じるよ。この状態じゃ、信じるしかない」

「ありがとう」

 「パパッ! パパッ!」と泣きじゃくる霧子を、雨ガラスと共に抱えて走っていく

 暗がりの中、いくつものプロペラの回転音が聞こえてくる。見ると、空から増援のドローンが、緩やかに降りてきていた。

 霧子のミニクーパーに乗り込んだ俺は、大慌てでドローンから逃げ回っているハゲブタに声をかける。

「ハゲブタ! お前もこっちにこい!」

「ひっ、ひいいいいいいいっ!」

 ドローンに追われていたハゲブタが、情けない叫び声をあげながら後部座席に飛び込んできた。

「助けるのかい? 僕達を殺そうとした彼を」

「どうせ……騙されてたんだろ。周りに煽られて調子に乗ってさ。掲示板でみんなの玩具になってたあのときと同じだよ」

 いや、匿名掲示板でハゲブタを煽り倒して挑発した挙句に、その顔写真がネットにアップされる事態を作り出したのは俺なんだけど。

「霧子、車を出してくれ」

「だけど、パパが……」

「ミスティさんは、行けって言っただろ」

 獲物を仕留めんと標的に群がる獰猛な肉食獣のように、小型ドローンがこちらに集まってくる。

「ハゲブタ君。猟銃を借りるよ」

「お、おい!」

 雨ガラスは、うろたえるハゲブタから猟銃をひったくると、向かってくるドローンに向けて発砲する。

「うっ……ああ。パパァ……!」

 霧子は、泣き止まない。

「そうやってめそめそ泣いて、ミスティさんの最後の言葉を裏切る気か? ミスティさんは、お前に生きろって言ったんだよ。ミスティさんを愛してるなら、お前にはその言葉を受け止めて進む義務があるんだよ。いつもの調子で前だけ向いてさ。戦うんだよ! 戦えよ!」

 自分でもなにを言ってるか意味がわからない。あれだけ愛していた父親が、あんなことになってしまったのだ。なにも手がつかなくなって当然だ。だけどこの場を切り抜けるには、どうしても霧子が必要なんだ。沈み込んだ霧子の心に火を灯せそうな言葉を、手当たり次第に並べていく。なにがバズるか分からないTWITTERで、世の人々の心をざわめかせるような刺激的な言葉を、それらしく並べていたときのことを思い出す。からっぽの俺は、そういうやり方でしか悲嘆に暮れる霧子と向かい合うことができない。

「まったく。あれだけ公明正大な強い人間だってアピールしといて、いざってなったら泣いておしまいか? ミスティさんの娘とは思えないな。これだから女は。ミスティさんは、どんな強敵だろうとなにがあろうと諦めずに、前だけ向いて敵に立ち向かってたのに。ミスティさんみたいな優しさも、やり遂げる意志の強さも持ってない奴が娘なんて名乗るなよ! なぁ、霧子!!」

 俯いていた霧子は、鋭い瞳を俺を睨みつけ、思い切り頬を叩く。

「うるさい……呼び捨てに、しないでよ」

 そしてイグニッションにキーを差込みくるりと回し、顔を上げる。低いエンジン音が鳴り響いたと同時に、霧子はアクセルを思い切り踏み込み、ミニクーパーはガクンと大きく車体を揺らして猛スピードで発信した。

「いってぇ……」

「本当、あんたって最低。逃げ切ったら、覚えておきなさいよ」

「はいはい。逃げ切れたらな」

 駐車場を飛び出て、そのまま摩周峠を下っていくミニクーパーを、無数のドローンが一層激しい回転音を轟かせながら追いかけてくる。ハゲブタに撃ち抜かれ、割れた後部座席のガラスがあった場所から、身体の芯まで凍えさせる風が入ってきては俺達の身体を冷やした。

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