さがしもの
昔、幼なじみと遊んでいたら家の鍵をなくしてしまったことがあった。
夕飯時ギリギリまで遊んで遊んで、疲れたね、帰ろうかと言ってポケットに手を突っ込んで気づいた。
ない。どこを探してもない。
あわあわと動きだした私の挙動に気づいたのか、幼なじみはどうしたの?と心配そうに声をかけた。
もう夕飯時。付き合わせるわけには行かない。
「なんでもないよ」と下手くそに笑う私を置いといて、幼なじみは「もしかして、鍵をなくした?」とピンポイントに当ててきた。
そのへん探せば見つかるからいいよ、1人で探す、と言っているのに気づいたら右手をひかれて2人の鍵探しが始まった。
右を探してはキョロキョロ、左を探してはキョロキョロ。
けどお揃いのストラップをつけた家の鍵は見つからない。まだ幼い私はとうとう涙をポロポロと流していた。
だいじょーぶ、だいじょーぶ。と問いかける幼なじみは笑顔だった。
その笑顔に救われながら、夕焼けで真っ赤だった空が黒くなった頃「あ!!」と大きな声が聞こえた。
指をさした方向を見れば見慣れたストラップ、街灯に照らされ光る鍵。私の家の鍵。
よかったよかった、と呟きながら鍵をぎゅうと握りしめる。幼なじみはよかったねぇと笑いかけてくれた。
「今度こそ帰ろう?」とまた私の右手をひいて、歩き出す。
幼なじみは今も私の隣を歩いてくれている。