第三話
瞼越しでも太陽の日差しが伝わる。
ぼーっとしていたその時、急に眩しさが無くなる。あれ、おかしいぞ、眩しくなくなっている。自分の目の感覚を疑いながら、目を開く。
そこには、大きな目を見開いてこちらを覗いてくる人がいた。
「うわああああああああああ。」
「うにゃあああああああああ。」
こちらが思わず大声を上げると、あちらも大声を出して驚いた。
その人物は驚くような跳躍で3メートルほどバックステップで距離を取り、身構える。俺は上半身を起こし、座ったままその子を観察する。スラリととした肢体に麻の服を纏っているが胸元の膨らみは隠せておらず、いかにも男の情欲を煽り立てている。口元は色素、形ともに薄いが、比較的大きな唇をしており、鼻はツンと尖っていた。瞳は大きく猫目っぽく、いかにも活発ですと主張しているようだ。
そして最大の特徴はショートカットの銀髪の上にある耳である。ええ、猫耳である。底辺二等辺三角形の耳が頭のてっぺんに2つ乗っているのである。
「猫耳いぇぇ」
思わずなんとも言えない言葉が漏れる。猫耳美少女は身構えたままビクビクしていた。
「な、何だお主は!」
お、おぬし!?いちいち突っ込みたくなるが、全てに突っ込んでいると話が進まないので話を進めよう。
「お、おれは怪しいものじゃないぞ!気づいたらここにいたんだ!むしろ教えてくれ!ここはどこなんだ!」
「ここは大森林フォレストォの最深部にゃ!お主は人間かにゃ!?人間なんて初めて見たにゃ!人間は危険にゃ!すぐ立ち去るにゃ!」
大森林フォレストォってどこだよ、てか日本語通じるのかよ。
冷静になれ、俺。今重要なのは生きる術を確保すること。今の話からするとここ周辺には人間が住んでいないと見る。大森林の名前から察するとこの森は非常に大きい。となれば、この猫耳美少女に逃げられると大ピンチである。まずは友好を築き、近くの人間が住む所の近くまで案内してもらうか、または、猫耳美少女が住む所まで案内して貰う事、それが最重要である。
「わ、わかった。すぐ立ち去るとしよう。ただ、ほんとに気づいたら此処に居たんだ。よかったら人間が住む所に案内してくれないか?」
「知るかだにゃ!人間は騙すことが得意と聞くにゃ!我は騙されないにゃ!」
「ほんとに怪しくないんだって!信じてくれよ!」と自分で言うも、これは怪しすぎる。どうしよう、どうすれば良い!!今俺にできることはなんだ!
すると先程のTubeshopが思い浮かんだ。画面を開き目当ての物を検索する。あった!!!540Pを使用し、すぐに注文確定をする。
目の前に浮かぶは、チューチュ、言わずとしれた猫ちゃんホイホイ最上級のおやつである。
頼む、効いてくれ!!!
急いで箱を開け、一本取り出し、封を切る。
「これをやるから協力してくれ!!!」
仁王立ちにのまま、猫耳美少女にチューチュを向ける。
猫耳美少女は身構えたまま、ツンと尖った鼻をひくひくとさせる。
「にゃ、ニャンだこの匂い……」
匂いに意識を向けるためか、大きな瞳を閉じ、こちらににじみよってくる。
目の前まで来たその時、俺の腕ごと抱え、チューチュにむしゃぶりついた。抱えられた腕から、ふくよかな胸に挟まれ包み込まれている感触が伝わる。すばらしい。チューチュに必死でむしゃぶりつくその姿はいかにも猫であり、とてもとても幸せそうな顔をしている。そして、チューチュが全てなくなった瞬間ーーーー
「うみゃすぎるにゃあああああ」
猫耳美少女の絶叫がこの森に轟いた。